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桜と絵本と豆乳と

もう人間関係しかない

2020年09月22日 | 読書
 連休中はこの400ページの文庫本を読み続けた。著者の書くノンフィクションは数冊読んでいるが、いつも読みごたえがある。この本もまた様々なことを考えさせてくれた。教育に携わる者にはぜひ薦めたい一冊だ。しかし文庫版あとがきに記された単行本から文庫化までの経過は重く苦しい。国の現状を憂うしかない。


 『再生の島』(奥野修司  文春文庫)


 沖縄にある自然体験、集団生活等を核とする山村留学施設「久高島留学センター」を舞台として、指導者とそこに入った少年少女、そして親が描かれた。2000年代の記録だが、その実践情報に接した記憶は自分にはなかった。不登校の子たちの「再生」と言えば戸塚ヨットスクールを連想する。戸塚の著書も思い出した



 「教育は強制である」という一面の真実に強く圧倒される。それは封建時代的な考えとは違う、今の世の中だからこそ、人間が真っ当に育つことを阻害するような環境に締め付けられているからこそ、必要だと思わざるを得ない。強制のために隔離し、徹底して管理するのは「食」「運動」である事実は見逃せない。


 しかしそれには大前提がある。言うまでもなく「人」との関わり。久高島にくる子の多くは、一番の人つまり親、家族との関わりがうまく築けない。それは親が抱えている問題の根が深く、通常の暮らしの中で改善するに難しい条件の中で育ってきているからだ。だから載っている成功例?の多くは親の変貌が顕著だ。


 不登校やひきこもりを、社会や学校に対するアンチテーゼとする分析や解説はあるが、当事者たちの前で無力に等しい。目標が見えにくい世の中では、人間関係こそが生きる力を育む術を機能させるはずだ。今、保育や教育の現場に欲しいのは、発達段階に即した環境との接し方をコントロールする具体策に違いない。


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