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逃げる力を身につける

2020年11月24日 | 読書
 背表紙を見て、「逃げる」ことと「百田尚樹」は一瞬結びつかなかった。でも目次をぱらぱらと見て、最終章の項目の一つに「『永遠の0』宮部久蔵の生き方」があったので、ああそうかと想像できた。あの物語で宮部が臆病者呼ばわりされていたことには明確な訳があった。特攻拒否は、まさに「逃げる力」そのものだ。


『逃げる力』(百田尚樹  PHP新書)


 だいたいの結論は予想できたが、買い求めてみた。出だしの第一章は「積極的逃走のすすめ」。そして人気になったドラマのタイトルである「逃げるは恥だが役に立つ」から始める。これは実はハンガリーのことわざらしく、その原文の直訳が紹介される。「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切」だ。



 学校や職場でいじめに遭い自死したり、過労死に追いこまれたりする例が繰り返されている。メディアでも取り上げられるが、その何倍も似た事例があることだろう。おそらく今そんな状態に陥っている人には、この新書は目に入らない。だから、それ以外の人がまず「逃げる」を理解し、意味づけておく必要がある。


 その芯として、著者が記している「逃げる」局面を把握する必要がある。当然だが、何もかも逃げてしまって生活が成立するわけがない。方法としての逃げる場合の選択に留意すること。つまり、繰り返し書かれている「『戦う』か『逃げる』かを判断することの重要性」の認識。これはある面で「損得勘定」なのだ。


 むろん経済的側面を含みつつ、「守るもの」は何かを明確にした強固な勘定である。例えば実際の場面に合わせて、判断のための選択基準を三つに絞れば「戦う必要があるのか」「我慢の仕方に問題はないか」「もし逃げたら何を失うか」となる。このレベルの思考を習慣づければ、「逃げる力」に結びつくのではないか。


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