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第3回「アフリカ納豆サミット」アフリカ納豆VSラオス納豆

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アフリカ納豆サミット、第3回目を開催します。おバカな企画で、最初はどれくらいの方が集まってくれるのかが不安でしたが、取り仕切ってくれる奥祐斉さんのお陰で、過去2回は満員御礼。述べ70名の口に「アフリカ納豆」を突っ込むことができました(笑)。 私の風貌を見て恐れをなしたためとは考えていませんが、「意外においしい」という感想をいただいています。 第3回目は、アフリカ納豆とラオス納豆の対決。彩り豊かなラオス料理は強敵ですが、アフリカ料理の力を見せたいと思います。 詳細とお申込みは こちら から。  

チルメンガを思う

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「緑のサヘル」から送っていただいた近影  3月のある日、長年かかわっている「 緑のサヘル 」から会報を受け取った。緑のサヘルの会報のトップページには、コラムが載っているのだが、そこには見慣れた名前が。 「ジュリアン・サワドゴ」。僕は彼を本名で呼んだことはない。懇意にしていた故Roch Nazaire SAWADOGOさん(ローカルNGO、AJPEE代表) に、 この地域の農業に精通している方 として、紹介を受けた。二人は小学校の同級生で、R.Sawadogoさんは、ニヤニヤしながらジュリアン・サワドゴさんを「チルメンガ(薬草師)」と呼び、あいつに聞け、と言い、会いに行く前に僕が尋ねていくことを話してくれていた。 彼の元を訪れると、10年の知己のようなに親しみを持って迎えられ、農業のことを話し出すと、畑を見せてくれて、あれこれと説明してくれる。苦手なフランス語も僕のために覚えてくれて、僕のモレよりもずいぶん早く上達した。生来の酒好きで、チルメンガのところを訪れるようになると、初日は予定を控えめにして、 朝からチャパロの歓待を受けた 。 ブルキナファソ中北部 彼等はこのブログでも何度か書いた「バム県」に住んでいる。残念ながら、R.サワドゴ氏は数年前に若くして亡くなられてしまったが、コングシでの調査の際には、二人のサワドゴさんを中心に動いていたように思う。拙著(2019)にも、このことは若干の紙幅を割いて記述している。毎回、ほんの少しでもコングシを訪れ、彼らの顔を見て一時を過ごすのがブルキナファソで最も好きな時間だった。しかし、北部のテロが益々激化した2021年を最後に、この地域には足を踏み入れられていない。最後の訪問はR.サワドゴさんの弔問で、チルメンガには一目会った程度。時折、思い出しては「元気かな…」と思いをはせていたが、緑のサヘルの記事に彼の名前を見つけ、彼の健在を喜ぶとともに、難民キャンプで暮らしていることに大きなショックを受けている。 何度か書いているように、この地域の情勢は情報が少なく、どのような状況なのか、どんな見通しが立っているのかを把握することが極めて難しい。特に、バム県やその北のジボDjoboのあたりはテロの多いところで、政府による統治が出来ていないと言われていた地域。「便りがないのは無事の証拠」であればよいのだが、そんなに楽観的な状況でもない。チル

【業績】「ムーリッドを中心とする在日セネガル人の 民族誌的研究序説」

去る5月21日に都市共生研究センター(MICCS)の研究会で発表したものが、同研究会の紀要『インターセクション』で活字になりました。 こちら からご覧になれます(無料)。 論考自体は、在日セネガル人の現在の動きについて書きました。5月までに調査できていたところからさらに進めた調査で分かってきたことなどを文字化しました。さすがに生活史までは書ききれませんが、年代ごとの傾向や新たな結節点の形成過程を示しましたが、まだ分析途上の試論ですが、一つ書けたのはよかったです。ご批判、ありがたく頂戴したいと思います。 編者の森先生、鈴木先生によるPreface「周縁から権力構造をとらえ返す ―MICCS『インターセクション』第 2 号の目指すところ― 」で、以下のように紹介していただきました。 「2023 年 5 月の公開研究会での講演にもとづく論考「ムーリッドを中心とする在日セネガル人の民族誌的研究序説」(清水)である。ここでは人類学者の和崎春日を中心とする在日アフリカ人研究に関わってきた著者が、その後の研究史を端的にまとめつつ、自身の在日セネガル人調査の現時点での成果を報告する。とりわけ、現地調査で発見した移民の世代論というアイディアを検討する筆致からは、自分のみてきたフィールドから現実描写と学術的議論を立ちあげていこうとする著者の信念が伝わってくる。在日外国人のなかでは比較的知られていない在日アフリカ人の生活についても、堅実な民族誌的研究が積み重ねられていることがわかる貴重な一本である。」(p1) ご笑覧いただけますと幸いです。

『福田村事件』森達也監督(ピカンテサーカス/137分)/ちょいネタバレ

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昨年来、少しずつ在日韓国人のことを勉強し始めているのは、何度かこのブログでも書いてきました。最近も ウトロ平和祈念館 に行ってきて、その前にも 東京の高麗博物館、ニュースパーク に行ってきたのですが、そこでしばしば見たのが、『福田村事件』のチラシ。タイミングとしても、これは見ておかねば、と思っていたのですが、残念ながら公開中には間に合わず、DVDを購入することにしました。 「福田村事件」は、関東大震災が発災した数日後に、薬売りの行商人たちが朝鮮人と間違われて自警団により虐殺された、という事件。「朝鮮人が井戸に毒を盛る」など、あらぬ噂を流されて暴力を加えられた多くの事件、「デマ」や「フェイクニュース」の問題など、様々な問題群をはらんでいる。ちなみに、ニュースパークの展示でも新聞が流言を報じた報道やそれを打ち消す記事などが展示されており、メディアの問題としても考えることができる。 一昨日DVDが届き、早速視聴した。 森達也 さんが監督、井浦新、田中麗奈、東出昌大、柄本明やら、出演陣も豪華でなかなか期待させる配役だ。戦前の軍国主義と張りぼてのような「大正デモクラシー」の相克の中、日本の「村社会」の閉鎖性がよく描かれ、ほんの少しずつ当時の女性蔑視的な雰囲気が引き金として、群集心理に働きかけ、さらに、災害の中で自衛への心情が絡みついていく。しかし、この辺の描写は後半70分程度で描いたものだけで十分。最初の45分程度は、どこかロマンポルノを思わせるようなちょいと艶っぽいシーンが続く。この描写がどこで回収されるのだろう…とみていると、襲撃された村のドロドロした雰囲気を描いたこと、また、不倫により信用を失った人たちが実は一番冷静だった、という、アンビバレントな人間心理を描く、というこの「福田村事件」という、在日韓国人への風評の二次被害という側面を若干弱めている。私個人としては、『A』などを描いた硬派なドキュメンタリー作家のイメージで見ていたので、若干残念な作品だと感じた。  

町内会について② 町内会の存在意義について

現在の住処に住み始めて3年半が経ちました。小さな住処ですが、交通の便も悪くなく、買い物も便利で、下賀茂神社も近くて、とても気に入っています。 子どもの学校が若干遠くはありますが、それも子どもの足で15分程度。まあ悪くはないでしょう。 近所には、お年寄りが多く、朝はしっかり挨拶してくれるし、同じ通りに面しているお宅は対外顔と名前が一致するようになりました。子どもが道路で遊んでいると、時々覗いてくれて、時々声をかけてくれるし、少し前のコミュニティがあるような感じもします。 民俗学とか文化人類学では、人と人の繋がりを「縁」という言葉で言い表すことがあります。もう少し細かく分けると、「血縁」「地縁」「社縁」という3つが中心ですが、それ以外にも「学縁」と「趣縁」という「縁」もあるとされるといわれています(社縁に入っていると考えておくのがよいでしょう)。「血縁」は「血縁関係」など親戚・姻戚関係を示す人の繋がりですし、「地縁」は空間的に近い人たちとのつながり、そして、職場や学校、飲み屋や喫茶店、スポーツ・クラブなどの趣味の世界での人の繋がりというのが「社縁」です。 こうした「縁」を全く持たない人が増えてきた、というのが「無縁社会」で、単純に考えれば、地方から出てきた人たちが働きづめで地域の人たちとも関係を持たず、引退して最も太かった社縁を失ったとき、この人たちには「縁」は残されない、どことも「縁」のない「無縁」の人が出てくるという構図ではないかと思います。高度成長期に20代前半の人たちが引退する2000年代になると、こうした人たちが増えてくるのは当然で、これが社会問題としてクローズアップされたのが、2009年に放映された「 NHKスペシャル 無縁社会~”無縁死”3万2千人の衝撃~ 」なのだそうですが、90年代後半に学生生活を送った私の周りにもこうした人が多かったことを考えると、おそらく、現在でも同じような構造が残っているのではないかと思います。野中氏の記事でインタビューに答えた石田光規さんによれば、「血縁、地縁、会社縁といった伝統的紐帯からの解放は、戦後日本の目標の1つだった。しがらみから逃れるために、一人になれる社会を志向した時代もあった」と述べます(野中2022)。つまり、こうした無縁社会が望むべくしてなった、ということだということでしょう。 実は、私のいるところの町内会、と

【業績】神代ちひろ(編著)大石高典、武内進一、小松謙一郎、椎野若菜(著)『学部生の安全なアフリカ留学に向けて』

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年度末にいくつか業績がでました。 一つ目です。神代ちひろ(編著)大石高典、武内進一、小松謙一郎、椎野若菜(著)『 学部生の安全なアフリカ留学に向けて 』 現職に就いてすぐに日本とアフリカの大学を結ぶネットワークの会議に参加させていただいています。京都精華大学はオブザーバー参加ではありますが、「大学の世界展開力強化事業(アフリカ)」の成果物として『学部生の安全なアフリカ留学に向けて』という冊子が公刊されました(無料です)。ハンドブック的なものですが、執筆陣の豊富な経験を踏まえた安全対策が記されています。私も上智大学の山﨑さんと編者の神代さんとの対談に参加していています。 アフリカと日本をつなぐ一つの懸け橋となりますように。

セネガル新大統領(2024年大統領選挙)と西アフリカ情勢

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  バシル・ジョマイ・フェイ新大統領(Mali jet 20260326 より) 2024年3月26日、セネガルに新大統領が誕生した。バシル・ジョマイ・フェイ氏だ。日本の報道各社も小さく、論調も似たようなものではあるが速報を流している。選挙が行われた当日は気が抜けるほどあっさりと勝利宣言が出たが、ここにいたるまで、かなりの混乱を経ていた。昨年学生がセネガルに滞在していた5月ー6月ころから、マッキ・サル大統領が憲法で禁じられている三選を目指す、という話が出始め、ダカール市内で市民蜂起があったりした。2月3日には、2月25日に予定されていた選挙を延期すると発表されると、市民はデモを組織し、治安部隊との小競り合いが各地で起こった(武内20240206)。こうした動きの背景には、マッキ・サル大統領による野党候補の(乱暴とも思える)抑え込みがあり、さらには、100歳になろうとしているアブドゥライ・ワッド元大統領、その息子のカリム・ワッドなどの動きが複雑に絡まりあっている。対立候補が絞り込まれていく過程で、最大の対立候補のウスマン・ソンコ氏はジョマイ氏の指示に回り、3月6日の憲法評議会で投獄されていたソンコ、今回当選したジョマイ氏ともに恩赦法により14日に釈放、24日に選挙実施案が承認された(武内20240316)。結果は報道されている通りである。 アフリカ・アジア現代文化研究センター主催の 緊急シンポジウム「西アフリカ諸国で何が起きているのか―セネガル、ギニア、マリ、ブルキナファソとニジェールの政治危機を考える」 (2024年2月21日)の開催趣旨で、次のように書いた。 「2024年2月3日、月末に予定されていたセネガルの大統領選挙が無期限に延期となったニュースは耳新しい。多くのアフリカの国々で大統領選挙が近づくと、任期延長や「三選問題」が浮上するが、セネガルでは現サル大統領の一期目の選挙以降、「民主的」な選挙が行われていたこともあり、このニュースは一抹の不安と驚きをもって受け入れられた。アフリカの多くの国々が大統領権力の長期化による腐敗を防ぐため、憲法で三選禁止規定が明記されているが、これまでも、ブルキナファソ(2014年)、南スーダン(2018年)、コートジボアール(2020年)、ソマリア(2021年)、ブルンジ(2023年)、中央アフリカ(2023年)など、三選禁止規定