保育士求人によくある疑問と質問について解説

保育士求人サイトと人材紹介の闇と呼ばれるこの2つを保育業界の専門家が暴露という形で解説していきます

保育士の給料って本当に安い?(その1)

保育士は給料が安いからすぐに辞めてしまう。給料が安いから保育士が不足しているなんてよく言われていますが、果たして実際の所はどうなんでしょう。

 

※公立保育士は公務員扱いですので私立保育園の解説です

 

 

 

◆結論・・・20代の女性で考えれば十分な金額です

(※ただしこれは保育士不足の地域&認可保育園)

 

今回はいきなり結論から言いましたが、以下のようなデータがあります。

 

社会人としてスタートする20~24歳の平均給与

男性:299万円 女性:254万円。 

25~29歳の平均年収

男性:402万円 女性:306万円。

【※平成28年度 国税庁のデータより】

 

この金額をベースに考えると保育士はそれぞれこの数字を上回ることになります。また次の項目の条件を満たせば男性も平均年収を上回ることが可能です。

 

 

 

◆東京都の認可保育園をベースに考える

 

ここで前提となるキーワードは2つ。「保育士不足の地域」と「認可保育園」です。

 

保育士不足の地域・・・

売り手市場であれば当然保育士の待遇は上がります。しかしあまりに保育士不足が深刻化しすぎた為それは保育園同士の求人比較ではもうどうにでもならないため、潜在保育士の発掘や他地域からの流入を目的に国からの補助金も他地域と比べて高くなります。また地域独自の保育士の給料加算が加わり、その中でも東京都は日本で最も独自の地域加算が多いのが特徴です。これは分配方式により保育園によって多少異なりますが、正職員として勤務をしていれば年収で35~60万円程度上乗せをされています。

 

より具体的で明確な例を挙げると千葉県松戸市においては「松戸手当」の独自地域加算が加わります。松戸手当は1~11年目までの保育士には月額45,000円が支給されますので、年収で54万円以上の上乗せになります。

 

また保育士が余っている買い手市場の場合は、少子化の影響や自治体の予算の都合もありこれらの独自地域加算はなく、むしろ正社員ではなく契約社員扱いの求人がメインになってしまうのも特徴です。

 

 

認可保育園・・・

保育園にも様々な種類がありますが、大きくわけて5つ。

 

1、認可保育園(こども園を含む)

2、小規模認可園

3、地域認定保育室(認証保育所、○○市認定保育室など)

4、企業主導型保育園

5、完全な無認可保育園

 

それぞれの種類については、待機児童が多く保活を行った経験のある保護者の方ならご理解されている方も多いと思いますが、この解説の中で何が違うかと、、、それは単純に国や自治体からうける保育園における運営費です。その為、今回は厚生労働省の管轄であり最も日本で多い認可保育園をベースに考えていきます。

 

 

なぜ認可保育園をベースに考えるのかというと、認可保育園が最も手厚い補助金を受けており、”一般保育士”の相場として最も給料が高いからです。

 

別の記事でも解説をしますが、2~5の施設については給料ではなく保育士が給料条件よりも、それ以外の部分に魅力を感じてその施設を選んだのですから、保育士の給料が安いという社会問題の意味合いからは少々変わってきます。

 

 

 

◆株式会社と社会福祉法人の比較

 

これも”一般保育士”をベースに考えた場合、傾向として社会福祉法人(学校法人)が運営する認可保育園の方が高いです。これは単純に税制優遇が関係しています。また株式会社は毎月の賃貸料が発生していることも多いため、当然運営費が高くなります。ただ今回はあくまでも「保育士の給料」ですのでどちらが優れているとか働きやすいとかではなく、あくまでも給料において社会福祉法人の方が高い傾向があるということです。

 

月給についてはそれほど大きな差はなくなりましたが、賞与の部分で差が目立ちます。以下は東京や神奈川を基準にした数字です。

 

株式会社は1.5~2.8ヶ月程度が多いですが社会福祉法人や学校法人は3~4.5ヶ月程度という場所が多いでしょうか。

(※国や自治体からの給与改善分は除いています)

 

 

 

◆国と自治体からの補助金が加算すると・・・

 

東京23区ではほぼ全域で「借り上げ社宅制度」が導入されています。条件は自治体によって多少異なりますが、この結果、保育士が一人暮らしを希望した場合、月額で82,000円程度の補助が出ますので単純に考えて年収100万円アップという考え方が出来ます。

 

国からは処遇改善費加算Ⅰ、Ⅱというものが出ており、この分配は保育園によって異なりますが、、、ここでも年収で15~40万円程度の上澄みがされます。またⅡにおいては120名規模の施設であれば各施設5名程度に月額40,000円の加算もされます。これも施設によって色々な分配方式があるので一概に40,000円という表現も難しいですが、勤続4年目の場合平均して月額15,000円~25,000円程度上乗せされます。

 

その結果、新卒で保育士になった20歳の子でも、借り上げ社宅を利用して勤続4年目を迎える時には年収が420万円~500万円程度になっている保育士が東京には少なくないというのが今の保育業界の現状です。

 

 

 

◆でも全ては補助金なので法人持ち出しではない。またいつかは補助金が打ち切りになる可能性も

 

正直20代前半で年収400万円。20代後半で年収500万円なんて本当に恵まれているなぁと保育士の私自身もそう思います。実際に私が保育士として社会人1年目を迎えた15年前はこのような制度は一切ありませんでした。

 

しかし、ここでポイントになるのが「補助金」であること。法人からの持ち出しではないのでこの待機児問題が解消され、保育士不足も落ち着いた場合、今まで受けていた最大180万円程度の年収がすべてなくなるという可能性があります。そうなると保育士の年収はまた280万円~320万円程度で主任職に上がらなければ、30代後半でも年収350万円に届かないなんて現実が待っています。

 

この辺りが実際に保育士の年収相場が上がったとは言いきれない理由です。また借り上げ社宅は条件を満たせば結婚後も利用できますが、あくまでも一人暮らしが前提条件。実家から通いたいという若手保育士や自分たちで住宅を購入した保育士は一切この社宅補助は受けられません。

 

また繰り返しいいますがこれは東京都を中心とした認可保育園でのお話です。しかし単純に今の時代に保育士で働くということで考えれば有効な制度をフルに使えば保育士の年収は意外と高いと言えるのです。

 

(家の購入後の生活。昇給額を考えた生涯年収を含む30代後半以降の保育士にとってはまだまだ十分な待遇とは言い切れない部分もありますけどね。)