最近テレビや新聞などで「フレイル」という言葉を目にすることがあります。
その意味は、英語のFralityという言葉の訳でで言えば「虚弱」とか「脆弱(ぜいじゃく)」、「老衰」などで表現される状態です。海外では老年医学分野で使われている言葉のようです。
日本の学会(日本老年医学会)では、高齢者に起こりやすいFralityの状態は、早期に医療や介護などの介入を行えば元に戻る可能性があることを強調するため、「フレイル」という統一した表現を提唱して啓発をしています。
〇フレイルの定義
厚生労働省の研究班の報告書によれば、
「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により生活機能の維持向上が可能な状態像」と定義されています。
なんだか、難しそうですが、
平たく言えば、
「歳をとって心身ともに衰え、持病もいくつかあるため日常生活にも支障をきたしているけれど、周りの人の支えでしっかり取り組んでいけば元に戻ることもできるので、あきらめてはいけませんよ」ということではないでしょうか。
〇どのような場合にフレイルと判断されるのか?
米国のジョンズホプキンス大学のFried先生が、以下の基準を提唱しており、日本の学会もこの基準を採用しているようです。
1. 体重減少: 意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
2. 疲れやすい: 何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
3. 歩行速度の低下
4. 握力の低下
5. 身体活動量の低下
以上の項目のうち3項目以上該当するとフレイル、1~2項目の場合はフレイルの前段階(プレフレイル)と判断されています。
〇フレイルになるとどんなことが起きる
身体能力の低下に伴い病気にかかりやすくなったり、入院することが多くなり、死亡率の上昇なども見られるとのことです。
例えば健常な人であれば風邪をひいても、のどの痛みや、咳、発熱が出るものの何日もたてば治りますが、フレイルの状態になっている人は風邪をこじらせて肺炎になったりします。この他筋力の低下による転倒で骨折したりすることもあります。
〇1日に1時間以上歩く高齢者は、肺炎やインフルエンザで死亡するリスクが低い
北海道大学の鵜川重和先生たちは、65歳~79歳の日本人2万2280人のデータを分析した結果、1日の歩行時間が0.5時間のグループと比較して、1時間以上歩行していたグループの肺炎またはインフルエンザによる死亡リスクは10%低くなっていたことを報告しています。
この研究は歩行時間を身体活動機能の指標の一つとして用い、風邪やインフルエンザの重症化との関係を分析したという意味で、フレイル対策の重要性を考える上での参考になるのではないかと思われます。