妖怪探偵百目 2廃墟を満たす禍/3百鬼の楽師(上田早夕里/光文社文庫)

1の『朱塗の街』が面白かったので、早速続きに突入。

2&3は1でその力の片鱗を見せ、ラスボスになることを予感させた「濁」と人間・妖怪との闘いを描いた長編になっている。と言っても一致団結して共同戦線を張って、というわけではない。濁と強い因縁がある拝み屋播磨遼太郎は、濁の食糧である妖怪をすべて滅することによって濁のパワーを減じた上で濁を滅ぼそうとしており、濁だけでなく妖怪も排除したいと考える国や警察もそれを後押ししている。一方、百目や部下の邦雄、心ならずも「課長」に昇進し、新設された妖怪対策チームの責任者にされてしまった忌島らは、妖怪と人間が手を結んで濁に立ち向かう道を模索する…その中で播磨や忌島の過去と現在の苦悩が描かれ、百目の過去も明かされる(百目が絶世の美女である、という当たり前のように受け止めていた事柄にも理由があって、これには泣いた…個人的には一番胸が熱くなった部分)。朱塗の街を自身の身体で包囲し、思うまま人間も妖怪も貪り始めた濁。ついに最後の戦いが始まった…

 

正直かなり駆け足な感じで、話がとんとん進み過ぎではと言う感じがしてしまうし、濁はどうしても『うしおととら』の「白面の者」が頭に浮かんできてしまう。1のような短編シリーズをもう少し続けて、主要キャラの信頼関係醸成とか長編で重要な役割を果たす妖怪の紹介とかをやっておいてから、最後の戦いに突入していたら、どうだったろうか。ちょっと惜しい感じがしてしまった。

一応完結したとはいっても、ラスト近くでは予言されたカタストロフの内容がどんなものかが明らかになり、今回の戦いによってそれが回避されたわけではないことも語られるし、百目と邦雄を始めとする主要キャラの関係もまだ一波乱二波乱おきても不思議はない終わり方です。後日談が(もちろん過去を描いた前日談でも)読んでみたいな…やっぱり妖怪描写がちょっと禍々しくもあるけど可愛いんですよ。

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