天皇陛下の即位の礼も、厳かに行われたようですね。チェコからもバビシュ首相夫妻が出席。この首相は、チェコ№2の資産家で、自分のビジネスの利益のために、親EUの立場をとっているらしいです。どこの国も、政治とカネの問題はなくなりませんね。

また、ネットでは、ニュースでインタビューを受けていたチェコと日本のハーフ(?)の記者マリエさんが話題になっているようで。ペラペラの日本語も然ることながら、「紫式部」や「平安」というワードがパッと出てくるあたりに驚きました。チェコも伝統を重んじる国ですから、そういう点で日本の伝統的儀式は興味深かったのかも?

そんな古式ゆかしい宮中行事の場において、てるてる坊主だか、釣鐘だか、ラッパだか分からないような服装が物議を醸した某夫人ですが、まあ話題を提供したってことで…皆様が両陛下に最高の敬意と祝意を表し、素敵なセンスのお召し物で列席されている中で、なかなか個性的な兵でしたが、常識のレベルは個人差が大きいのね、と思いました。ドレスコードに引っかかるか云々の前に、常識とセンスがあるかの問題だと思うのですが、誰も事前に助言できなかったのでしょうか?

 

前置きが長くなりましたが、先週末のバレエ公演の感想を。

Ludwig Minkus "La Bayadere" (October 18, 19, 20, 2019) @Janacek Theatre 

Nikiya, a temple dancer: Eriko Wakizono (October 18) Klaudia Radačovská (October 19, 20)

Solor, a noble warrier: Michal Krčmář (October 18) Maxim Čaščegorov (October 19, 20)

Gamzatti, the rajah's daughter: Ivona Jeličová (October 18) Andrea Popov Smejkalová (October 19, 20)

 

ブルノ国立バレエ団の今シーズンプレミア作品である「バヤデール」に3夜連続で行ってきました。生では観たことがない作品だったので、期待値大だったのですが、まあ、これが色々ありまして…(笑)

 

演出は基本オーソドックスで、ラストはガムザッティとソロルの結婚式で寺院が崩壊し、ソロルの魂をニキヤが迎えに来て幕、となります。これは、マカロワ版等でも見られる流れだったのですが、独特だったのはガムザッティの登場比率が高めであること。まず第1幕の寺院のシーンでいきなり登場してしまいました。そこで、儀式に参列していたソロルにガムザッティが一目ぼれしてしまい…って「バヤデール」はこんな話でしたっけ⁉ ソロルとの結婚も、ラジャの命令ではなく、ガムザッティが花婿候補の中から選びますし、とにかくガムザッティが恋する乙女になっています。なんだか通常の「バヤデール」に加え、ガムザッティ主演の初恋物語が同時進行している気がして、少し違和感が…(笑) 個人的には、ガムザッティは完全な悪役でいてくれた方がドラマとしては面白いかなと思っているので。

 

お次はダンサーの感想ですが、先に断っておきますと、相変わらずの言いたい放題です。(笑)

まずはヒロインのニキヤ。初日のEriko Wakizonoさんは、「白鳥の湖」(こちら)の時にはボロカスに言ってしまいましたが、ニキヤ役は似合っていたと思います。神に仕える舞姫という雰囲気がよく出ていて、どちらかというと感情を隠したニキヤでした。踊りも優雅で、ヴェールのパ・ド・ドゥ等決める所はしっかりと決めてきました。ただ、ニキヤ役としてはやや弱かったというか、ただでさえガムザッティがキャラ立ちしてしまっているので、ニキヤが一方的にやられっぱなしで、物語的には面白みに欠けたかも。おとなしいニキヤが、いきなりガムザッティにナイフを振りかざすのも唐突すぎましたし。

対するKlaudia Radačovskáはより女性らしいニキヤ。舞姫として舞っている時も、崇高さの裏に、女性らしい色気や情熱を感じさせました。ガムザッティとの対決シーンも、婚約相手を知った時の驚き、ガムザッティに嘲笑われてプライドを踏みにじられた辛さ、ソロルは自分のもの、という意地がはっきりと見えて盛り上がりました。特筆すべきは、婚約式でのヴァリエーション。ラインやポーズの魅せ方は、マリインスキーやボリショイレベルには及びませんが、全身から迸る感情がすごい! 観ているこちらが呪われそうなくらいの哀しみが伝わってきました。影の王国でもテクニックは高かったものの、オーケストラがアップテンポで演奏するので、ついていくのに苦労していた様子でした。ヴェールのパ・ド・ドゥをアップテンポで演奏した指揮者は許さん!(笑)

 

戦士のくせに優柔不断なソロルは、どちらもゲスト。初日のMichal Krčmářはフィンランド国立バレエのプリンシパルらしいですが、大したことはなかったような…。ルックスはかなり良くて、勇ましい戦士の役には合っているのですが、肝心の踊りは、ジャンプは低空飛行、フィニッシュの際に5番ポジションに入らない、ピルエットの軸がゆがむ、というようにかなり力技で押し切った感じでした。ワガノワのツィスカリーゼ校長があるテレビ番組の中で「フィンランドは、バレエの裏街道だ」とバッサリ切り捨てていたのを思い出して、少し笑ってしまいました。はい、所詮裏街道のプリンシパルは、こんなものですわ。(笑) あと、おそらく彼自身がナルシストっぽいのでその影響か、ソロルがただの女たらしに見えてしまったのも残念。ガムザッティを嫁にと言われた時も、「あれ、こっちもなかなかいい女だな、ニヤッ」という感じで、ソロルのキャラクターが完全に変わってしまっていました。所詮、僕の主観ですが。

バイエルンからのゲストのMaxim Čaščegorovの方が、僕にとっては好印象でした。派手なことはしないのですが、きちんとアカデミックに踊っていて美しかったです。どこか頼りない雰囲気も、役柄に合っていました。

 

ニキヤに対抗するガムザッティを初日に踊ったIvona Jeličováは、プライドが高い姫になりきっていました。ソロルへの愛情も一方的な押し付けで、ニキヤを殺すことを誓うシーンも迫力満点。このようになりきり度は、素晴らしいのですが、それが裏目に出て、正統派クラシック技術を見せる場であるグラン・パ・ド・ドゥでも、感情表現が濃すぎて、ドラマチックバレエのようになっていました。(笑) 「バヤデール」は、あくまでもクラシック作品なので、まずは正確にきちんと踊ってほしかったかなあ。存在感は抜群だっただけに残念です。

ダブルキャストのAndrea Popov Smejkalováは、より恋する乙女の側面が強い役作りでした。ニキヤとの対決シーンも、上から目線というよりは「お願いだから身を引いて!」という態度だったのが、ナイフで切りかかられてから、ようやく怒りに変わる感じ。テクニックも基本的には、しっかりしていたのですが、3日目は一番の見せ場のグランフェッテで、6回くらいで踵が落ち、まさかのそのままフィニッシュ⁈そこはきちんと決めてほしかったです。

 

「バヤデール」のもう1つの見せ場ともいえるのが、影の王国のコール・ド・バレエ。ところが!まず、アラベスク・パンシェでスロープを降りてくるところは、6人目あたりから、タイミングを合わせずに勝手に脚を下ろしてしまう人がチラホラ。そして、5番ポジション~パッセ~アラベスク・アラセゴンドは、グラグラ。初日は、最後列がものすごくぐらついていて、「まあ、後ろの方は若手だろうし、仕方ないね」と思っていたら、2日目、3日目は、前から2、3列目でも、上げている脚や軸足がガッタガタの人がいて「…。」でした。(笑) 全員あと50回くらい練習してから舞台に上がりましょう。(笑) ただ、やはり人間とは進歩するもので、3日目にはアラベスク・パンシェがほぼぴったり揃っていて、よくできました~って、果たしてそこは褒めるべきポイントなのか⁉ もう1つ気になったのは、コール・ド・バレエの足音がすごかったこと。全員がパ・ド・ブレやパッセを繰り返すところでは、もううるさくてうるさくて。(笑) 床材の影響もあるのかもしれませんが、もう少し音が出ないように意識してほしいものです。

 

しかし、個人的に群舞よりも問題だったのは、3人のソリスト。まず、第1ヴァリエーション、あなたは出直してこ~い!もう基礎がなっていない!ペケ!バツ!落第!途中まではまだ許容範囲だったのですが、最後のアラベスクでディアゴナルに進むところ、1歩も動いていませんでしたけど⁉ 様々な映像を確認しましたが、あれってやはりポワントで進むのが正解ですよね⁉ その場で片脚スクワットする振付ではないはず。しかも、その片脚スクワット状態ですらままならず、最後の1小節分は勝手にアラベスク止めてましたし。これならローザンヌに出ている学生の方が上手いですよ⁉ そんな彼女も、3日目にはとりあえずアラベスクで最後まで立っておくことはできていましたので、進歩ですね~。それでもアラベスクのパートをあと100回繰り返してから舞台に上がりましょう。(笑) 第2、第3ヴァリエーションは可もなく不可もなく。第3ヴァリエーションは、もう少しポーズをキープしてほしかったかな。この3人ももれなく足音がうるさくて、コールドバレエに匹敵する騒音をたった3人で作り出していました。(笑) アラベスクやパッセから着地するだけでどうしてあんなに音がするのやら…

 

そんなこんなで、かなりヤバイ仕上がりの中、唯一目を惹いたダンサー!パ・ド・カトルのうちの1人なのですが、踊りがクリアで、顔の向け方や残し方が抜群に綺麗でした。華と品もあって、思わずオペラグラスで彼女ばかりを追ってしまいました。明らかに他の人たちと踊りの質が違っていて、プロフィールを調べてみたら、どうもミラノスカラ座バレエ学校出身のようで納得。どう見てもブルノのカラーじゃないもん。(笑) どうせなら、彼女に影のヴァリエーション等を踊ってほしかった~。

 

おそらく予習と称して一流のマリインスキーやボリショイの映像を観てしまったことが、期待値を無謀に上げてしまい、却って逆効果だったようです。「バヤデール」って、「白鳥の湖」等よりも、バレエ団全体のレベルがはっきりと出てしまう演目のような気がします。コール・ド・バレエもただ動きを揃えるだけでなく個人のテクニックが試されますし。まあ、なんだかんだ言いながらも、計2000円以下で3回バレエを観られて、それなりに満足していますけれど。(笑)

 

カーテンコール写真たち。

1日目

2日目

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