日本人観光客にも人気の高いウィーン国立歌劇場の新シーズンプログラムが、公式発表されました。

音楽監督やバレエ監督が交代になって最初のシーズンになるので、どんなことになるか興味津々でしたが、恐れていたほどの大幅な変更はない印象です。

 

詳細は公式サイトから確認できます。

https://www.wiener-staatsoper.at/en/season-202021/

 

オペラの新演出版プレミアがかなり多いですね。対象は以下の作品です。カッコ内はプレミア予定日。

 

  • プッチーニ「蝶々夫人」(2020年9月7日)
  • モーツァルト「後宮からの誘拐」(2020年10月12日)
  • チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」(2020年10月25日)
  • ヘンツェ「午後の曳航」(2020年12月13日)
  • ビゼー「カルメン」(2021年2月6日)
  • ヴェルディ「椿姫」(2021年3月4日)
  • ワーグナー「パルシファル」(2021年4月1日)
  • グノー「ファウスト」(2021年4月23日)
  • モンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」(2021年5月22日)
  • ヴェルディ「マクベス」(2021年6月10日)
これだけの数の作品を一気に新演出にするのはかなりお金がかかると思うのですが、これで不評だったらどうするのでしょうか。新監督のBogdan Roscic氏は、他劇場で既に上演されているプロダクションまたは共同制作によって、できるだけ多くの作品の演出を一新する考えを示していたようです。
 
例えば「蝶々夫人」は、現在メトロポリタンオペラで上演されているアンソニー・ミンゲラ氏によるプロダクション。
 

 

これはこれでスタイリッシュなのですが、これが和を表現しているかと言われると微妙…。

 

現在はゼッフィレリの古典的バージョンがレパートリー入りしている「カルメン」は以下の演出に変更されます。

 

革新的な演出が好きな方にはいいのかもしれませんが、センスが良いとは言えなさそう…。「カルメン」は間違いなくオペラに馴染がない客層も集客できるドル箱作品の1つですから、現代版にしてしまったら観客はついていけないでしょう。

 

ただ新演出版にする代わりに頑張って客寄せしようと考えたのか、来シーズンのキャスティングはかなり豪華です。オペラ界を代表するスター歌手たちが予定されており、チケット争奪戦になりそうなものもちらほら。中でも個人的な注目は以下のラインナップ。

 

「シモン・ボッカネグラ」(2020年9月9日・12日・15日・18日)

 プラシド・ドミンゴ主演

 

「ドン・カルロス」(2020年9月22日・10月1日・4日・7日・11日)

 ヨナス・カウフマン主演

 

「カヴァレリア・ルスティカーナ/パリアッチョ」(2020年10月30日・11月2日・5日・9日・12日)

 ロベルト・アラーニャ主演

 

「ウェルテル」(2020年11月28日・12月3日・6日・10日)

 ピョートル・ベチャワ主演

 

「トスカ」(2020年12月11日・13日・17日)

 アンナ・ネトレプコ&ユシフ・エイヴァゾフ主演

 

「ルサルカ」(2021年1月6日・9日・12日・15日)

 ピョートル・ベチャワ&クリスティーナ・オポライス主演

 

「ナブッコ」(2021年1月9日)

 プラシド・ドミンゴ主演

 

「トスカ」(2021年1月31日・2月4日・7日・14日)

 ソニア・ヨンチェヴァ&ロベルト・アラーニャ主演

 

「カルメン」(2021年2月6日・17日・20日・23日・26日・3月1日)

 アニタ・ラチヴェリシュヴィリ主演

 

「蝶々夫人」(2021年3月28日・31日・4月5日・9日)

 ロベルト・アラーニャ主演

 

「パルシファル」(2021年4月1日・4日・8日・11日)

 ヨナス・カウフマン主演

 

「マクベス」(2021年6月10日・14日・17日・21日)

 アンナ・ネトレプコ主演

 

ネトレプコ主演の「トスカ」なんて一瞬で売り切れて、立ち見もすごいことになりそう…。僕も観たいです。(笑) 

あとはオポライス&ベチャワの「ルサルカ」も豪華ですし、ラチヴェリシュヴィリの「カルメン」は安定でしょうね。アラーニャとカウフマンの出演予定もあります。

去年セクハラ疑惑で大変だったドミンゴはウィーンには出演できるようです。あちこちのオペラハウスから干されたためか、2演目も客演してくれます。(笑) ただこの辺りの大御所達はキャンセル魔としても知られていますから、そこはご理解いただいた上でチケット購入をお願いします。

 

一方ルグリ監督退任後のバレエですが、大きなレパートリーの変更はない模様。少なくともヌレエフ版「白鳥の湖」やバランシンの「ジュエルズ」、「ジゼル」と言った古典作品は来シーズンも上演されます。ヌレエフ作品を消去することは個人的には罪深いと思っていますので一安心。(笑) ただ新監督がコンテンポラリーメインのカンパニーから移籍してくるということで、カンパニーのカラーが変わることを予想したと思われるダンサーたちの移籍が早くも始まっているようです。人員移動であまりにもダンサーのスタイルがモダンに寄りすぎると、クラシックを上演することは難しくなると思うのでどうなることやら。せっかくルグリ監督が頑張ってレベルを底上げしたのですから、台無しにはしてほしくないですねえ。

来シーズン上演されるバレエ公演はこちら。

  • 「ジュエルズ」(バランシン振付)
  • 「マーラーライブ」(プレミア)
  • 「ジゼル」(Tschernischova振付)
  • 「白鳥の湖」(ヌレエフ振付)
  • 「ロビンス・バランシン」

 

チケットは原則公演日2ヶ月前から一般発売されますが、先行予約(座席指定不可)は来シーズンの全公演を対象に4月29日(水)から受付開始されます。この先行予約では、希望座席のおおまかなエリアや希望価格帯のみ指定可能で、チケットが割り当てられると自動的に支払いが行われます。今年はコロナの影響で新シーズンが予定通り開幕するかも不透明ですが、演目や出演予定者によっては早めに押さえておく方が良いと思います。特にスター歌手出演予定日(ネトレプコ、アラーニャ、カウフマン等)は、一般発売前にほぼ完売してしまうことも珍しくないので、どうしても観たい公演がある場合は予約を出した方が無難です。

 

事前予約の方法については下記をご確認ください。

https://www.wiener-staatsoper.at/en/season-202021/tickets-service/advance-booking/

 

コロナがいつ収束するかは先が見えませんが、いつかまたウィーンで素晴らしい舞台芸術に触れられる日が来ることを願っています。

ウィーン国立歌劇場では、現在過去の公演を無料配信中ですので、是非チェックしてみてください。

https://www.wiener-staatsoper.at/en/staatsoper/news/detail/news/the-wiener-staatsoper-is-closed-but-continues-to-play-daily-online/

 

 

ウィーン国立歌劇場の公演は多数映像化もされていますので、ご自宅でも楽しめます。オペラは昔の名演のものが多いですが、バレエは最近のものも出ています。

 

ルグリ監督自ら振付けた話題作の「海賊」

 

超絶技巧が楽しめるヌレエフ版「ドン・キホーテ」

ウィーン国立歌劇場のトッププリマが舞うヌレエフ版「白鳥の湖」

 

ではでは今日はこの辺で!

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