増子と共に池乃家食堂でアルバイト 北上市 | トドワラのブログ

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過去の思い出を振り返り投稿しよう

昨晩一緒に泊った白河の男と共に駅へ向かう

増子と名乗るこの男は、私に輪を掛けた不景

気なやつで、何と後千円しか持ってないと言う

千円では白河まで帰れないのに、まだ金華山へ

寄って行くのだと言う。私も あまり金はない

が三千円貸してやって白河へ帰るように勧めた

それで増子は白河まで切符を買い、私は大月迄

の切符を買って花巻行の気動車に乗った。

兎に角私は、自分より金を持ってないやつが居

たと言う事実に驚いた。気動車の中では腹が空

いて実に参った。二人共一日二食組だが、今日

は朝飯が早過ぎた為、3時頃になると流石に苦し

かった。それで花巻に着くと、好きでもない

アンパンを食べた。どうもアンパンと言うのは

気品がなくてかっこ悪い。さて今日はどこで寝

ようかと言う事になったのだが、増子が明日平

泉に寄りたいと言うので、それでは北上駅辺り

で寝るのが良かろうと言う結論に達し、一ノ関

行の汽車に乗って北上に来た。まだ六時頃で在

る暫く駅のテレビで高校野球を見ていたが、ま

だ寝るのにはだいぶ早いし、待合室は混んでい

るので町へ出た。駅前の広い道なのにどうも殺

風景な所だ。こう言うのが田舎の町都市の特徴

である。いい加減行ってから右に曲がると、どう

やら町らしくなって来た。そして突き当った通り

が北上の中心街らしく、少しばかり都市的雰囲気

が漂っている。再び腹がすいて来たので半分百円

で売って居るスイカを買った。半分で買うと、

良く出来ているかどうか解るから都合が良い。

みるからに甘そうなそのスイカを二つに割って貰

い、2人で食べる所を探し歩いた。其の結果神社

の境内を見つけ、そこで食べる事にした。すでに

夏の日も落ちて、静かな境内を夕闇が漂って来た。

それは構わないのだが、夕闇と一緒に蚊の大群迄

漂って来たのには大いに迷惑した さてスイカの

食べかすを捨てようとした所、境内に適当な場所

がない。私はあくまで場所を借りた上にごみを捨

てて行く気は無かったのだが、増子が捨てたので

一つ捨てるも二つ捨てるもたいして変わらんだろ

うと思い後に続いた。境内を出ると、来た時とは

別の道を駅に向かう。間も無く其のメイン通り

に食堂が有り、「アルバイト募集。高校男子二名

。」と書いた紙が貼ってあるのを見つけたのであ

る。増子はだいぶ真剣な目つきでそれを見ていた

が、私は気がすすまないので増子を促し駅へ向か

った。駅に着いてからも増子は諦めきれない様子

なので、私が「アルバイトやるなら、私も一緒に

やるから行ってみようか。」と聞いた所、増子は

「そうすんぺ」と言うので、荷物を駅に置いた侭

先程の池乃家食堂へ行った。このアルバイトに

関して私の気持は実に消極的であったが、住所不

定で保証人無しの上、人相良からぬ私達では 断

ってくれる事まちがい無しと楽観して池乃家食堂

に入ったのである。出て来たのが日本語のうまい

外人で私達の話をきくと 一度奥へ入って行った

が再び出てくると、予想に反して「働いてもらい

ますから荷物を取って来て下さい。」と言うので

ある。仕方なく駅に戻り、切符の払い戻しをすま

せると 荷物を背負って再度池乃家に向かった。

「逃げるなら今だ。」と思ったが、そう思ってい

る内に着いてしまった。万事休すである。此処迄

来たら仕方ない。私もやる気の続く限りやってみ

ようと決心せざるをえなかった。期日は一応18日

迄である。仕事は明日からでいいから、今日は家の

メニューでも覚えて いてくれと言う事になった。

その内私は空腹を覚えて来た。丁度その時店の人が

来て「夕食はすませましたか。」と聞いてくれた。私

は「しめた」と思ったのだが、増子が先に「はい」

と言ってしまったのである。なんて馬鹿だ。

私達は夕食どころか昼飯だって済ませてないで

はないか。私はとても不満だった。しかし、店

の人も気をきかせて、八時半頃カレーライスを

持ってきてくれた。さて私は困った。私はカレ

ーライスが大嫌いで、生まれてから一度も食べ

た事がない。しかし、今日は何となく食べられ

る様な予感がした。それで思い切って食べてみ

た所、残らず食べる事ができた。これは正に私

にとって、革命的出来事であり記念すべき瞬間

であった。