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夫婦間DV

 
A子が就職して半年と少したった時、夕方近所のコンビニで偶然A子と会った時の事でした。
 
ふと見かけたA子は1人でおにぎりやコンビニ惣菜をたくさん買っていたのですが、A子の家はこの近所では無くて「何でここに?」と疑問に感じつつ声をかけました。
 
「A子?珍しいねここで会うの」
 
「お、のん!久しぶりやんー!」
 
「仕事帰り?」と聞くと そうそう〜と言いながら会計を済ませ、私も会計し終わるのを横で待っていたA子。
 
 
髪色は仕事もあってか落ち着いた色になっていましたが、全体的に見た目がより一層若くなったというか流行りなんだなぁという感じになったというか。
持っているものもブランド物には疎い私でも分かるようなブランドのものを身につけていて、それこそ言われなきゃ2児の母とは見えない感じで純粋にすごいなと感心しました。
私自身、子育てと仕事・家事で手一杯で自分の事にかける時間も元気もお金も無かったので羨ましい気持ちもあったなと…
 
 
「めっちゃ惣菜買ってるやん。今日は家事手抜きday?」
しんどい時は私も使う手なので笑いながら聞くと、A子もあははと笑いながら「まぁそんな感じ」と頷きました。
「手抜きと言うか何というか、そもそも調理する場所が無いというか」
サラッと言われた言葉がよく分からず「え?」と聞き返すと
 
 
 
「私な、家出してんねん」
 
 
 
「ええええええええ!?!?どゆこと!?」
たしかにA子の職場でもなく家のある場所でもないこの場所で会った事は疑問だったけど、まさかの回答に思わず大きな声が出てしまいました。が、
「家出。してんねん。今日で3日目かな?」
A子は至ってふつうの顔をしていて、なんなら笑いながら言っていて私の頭はプチパニックに。
 
「え?何、え???ならどこに居るの今」
「ビジネスホテル。そこの」
「子どもは???」
「連れてきてるに決まってるやん!今は部屋で留守番させてるわ」
「はぁぁぁ!?」
 
聞けば、子どもたちは昼は職場に近い場所にある託児所に預けて働き、終わったらビジネスホテルに戻ってを繰り返しているとの事でした。
たしかに私の住んでいるところはA子の職場から電車で何駅かの場所だし、駅に近いビジネスホテルもそこまで高くない場所ではあるものの…
 
「子どもを置いて出てきたらあかんて!」
 
とりあえず子どもたちだけでホテルにいると聞いたので急いで戻りやとせかして走りながら
「そもそもなんで家出」
と聞くと
 
「旦那と喧嘩した」
 
と、ある程度は予想していた答えが返ってきました。

ちゃんと話しをしたいけど私もお迎えの時間が迫っていたのもあり、とりあえずは信号でバイバイと別れ、夜にまた電話するねと声だけかけました。
 
A子と別れてから保育園へと急いで自転車を漕ぎながら、わたしの頭のなかでふと湧いた小さな疑問。
『ホテル、託児、惣菜…家の事は旦那さんの給料でまかなえていたから、確かにA子の給料はそのまま浮くにしても出費凄まじくない…?大丈夫なのか…?何で、実家に家出しなかった…?』
 
「…まぁ、いっか。夜に聞こう」
 
気になることは多々あるけど、私がここでいろいろ考えたって意味がない!
そう割り切ってそこで考えるのをやめました。
 
 
そして夜
 
[今いける?]
とメールを送ると、すぐに
[いけるで〜!]
と返事が来たので電話をかけました。
 
「夕方バタバタでごめんな」
『ううん!私も早よ戻らなとは思ってたからバタついてたし』
「ほんで?何で旦那と喧嘩したんよ」
『それがな、、、』
 
 
A子の話しでは、案の定 好きにやり始めたA子に旦那が文句を言う日が続いていたらしく、何度も浮気を疑われいい加減否定し続けるのにもひとつひとつの行動や服装に文句を言われる事にも嫌気がさしていたそう。
 
そうやって話にならない平行線の喧嘩を日常的に繰り返すうちに旦那への愛情がどんどん薄れていったA子。
一緒に出かけるのも、同じ空間に旦那がいる事すらストレスになっていた中で、5日前の夜、旦那がいきなりA子と子どもが寝る寝室に入ってきて
「夫婦でいる気があるなら、今すぐヤるで」
と掴みかかってきたと…。
 
旦那に対して嫌悪感しかなくなっていたA子は当然嫌だと抵抗したら頬を平手打ちされ、それに腹が立って旦那の腕を思い切り噛んだら突然旦那が馬乗りになってA子の首を両手で掴み
 
「ふざけんなよテメェ!!!!他の男に行くならお前殺す!!!俺も死んでやるからな!!!」
 
と怒鳴ってきたのですが、その声で上の子が起きてしまい「ままぁ」と泣きながら起き上がってきたそうです。
 
A子はこんなところ子どもに見せるべきではないと旦那に言ったものの激昂している旦那は聞く耳をもたず、横で泣いている上の子に向かって
「黙れ!!!」
と怒鳴ったと。それ見てA子の中で何かがプチンと切れ、片手に握りしめていたケータイで警察に電話をかけたら旦那が「どこに電話する気や!!」とケータイを掴み放り投げたので
 
「浮気はしてない!!でももうアンタと夫婦でいるのは嫌や!!!どけ!!アンタの事なんか好きでもなんでもない!!!!」
と叫び馬乗りになっていた旦那がケータイを投げて上半身をあげていた隙をついて股間を思い切り殴り、泣いている上の子と寝ていた下の子を車に乗せてケータイと財布だけひっ掴み自分の実家にそのまま避難したと、それが喧嘩の流れだと言う事でした。
 
『喧嘩と言うよりもはやDV』
 
声からは読み取りきれない感情がいろいろと渦巻いているんだろうA子の失笑したような声に、私は「いや…それは間違いなくDV…」としか言えませんでした。
 
旦那から逃げて実家に行ったA子でしたが、実家も昼間は両親が仕事でいないし、保育園も子どもを連れて行くのが怖い。でも仕事も休むわけにいかない。という理由から、仕事のある平日は職場付近のホテルに滞在して託児を利用しつつ、両親のいる土日は実家に帰るという選択をした結果、とりあえずは今ホテルにいると聞き なるほどなと納得しました。
 
ホテル代は両親が持ってくれてるんだと聞いて少し安心しましたが、ご飯くらいなら食べにおいでよと声をかけると「ありがとう。来週もこんな感じならお願いするかも。ごめんね」とA子は申し訳なさそうな声で言ってきました。
 
警察に言った方がいいよと声をかけたのですが、旦那の両親に電話して伝えたら『自分達も同伴で一度話しをしてほしい。全面的に息子に非があるのは分かっている。でも警察沙汰にする前に自分達が入る事で解決出来そうならそうしてほしい』と懇願されたから、警察にはまだ言わないんだとの事でした。
保育園にも理由は伝えてあると。

旦那からは数十件の着信と謝りのメールが何通も来ていたけど、両親込みの話し合いをするまで連絡してくるなとだけメールを入れたと言っていました。
 
『とりあえずは今週末実家に帰って、両親と義両親とアイツと話をするから、そこからどうなるかやな』
 
ため息まじりにそう言うA子に、どうかA子と子どもたちにとっていい方向に話し合いが進みますようにと祈るしかできませんでした。
 
 
 
「ほんと…いつでも連絡して。私も出来ることあればするから。子どもたち預かる事も出来るし」
 
私がそう言うと「ありがとう」とA子が笑いました。
 
 
「B子もきっと私と同じように言うと思うで」
とかけた言葉に、今度はA子がうーんと少し間をおいてから内緒話をするようなトーンで
『B子、今何だかんだ大変そうやから…もうちょっと落ち着いてから言う』
と…。
 
「え?B子なんかあったのん?」
 
含みのある言葉に聞き返すと


『旦那さん、病院変わるかもしらんねんて』


A子はサラッと答えました。

 
「え!?」
 
『私もよく分からんのやけど…この前、家のローン関係の事聞きたくてB子と連絡取った時にチラッと言ってて、、変わって欲しくないB子と変わる気マンマンの旦那とで揉めてるって』
 
「まじか…」
 
 
 
 
この時期うちの旦那はひたすらパチンコに行くか飲みに行くかで私は私で頭を痛めていたので、同じような時期に結婚した3人が3人とも今夫婦間で何だかんだ問題を抱えている事になんともいえない気持ちになりました。
 
 
 
夫婦って、やっぱり1番身近な他人。
 
他人だからこそ 恋愛対象として好きになったけど、他人だからこそ 理解出来ない。
 
思い返せば、このあたりから私たち 3人の関係性が少しずつ変化していたのですが それに気がついたのは全てが終わってからでした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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