インスリン分泌の『なぜ?』を考える5

インスリン総量は同じなのに

前回記事では,納先生のホームページから,No,13とNo,14の二人の男性の5時間糖負荷試験のデータを用いて,横軸=血糖値,縦軸=インスリンでプロットしたところ,No.14の理想的な結果を示す30代の男性は ほぼ直線上のグラフになり,高血糖と低血糖が起こってしまう No.13の40歳代の男性は グラフがループを描くことがわかりました.

注目すべきことは,このお二人のインスリンの分泌ピーク値,そして 分泌総量は ほとんど同じだったということです. つまり この対照的な結果の差を生んだのは,単に インスリン分泌のタイミングだけだったのです.

それでは 他の人は?

納先生のホームページには,合計26人のボランティアのデータが掲載されています. では,他の人はどうだったのでしょうか.
同様にして全員をグラフにしてみました.
ただし,No.1の人だけは,おそらくもっとも重要な30分でのインスリン値が不明なので除外します.
また 人によって,ピーク血糖値.ピークインスリン値には 大きな個人差があるのですが,比較しやすいように,縦軸・横軸の目盛りはすべて下図のように固定しています. したがって 人によってはこのグラフからはみ出ています. 全員をカバーできる目盛りにすると,ほとんどの人でループが小さくなりすぎてわかりにくくなるからです.

いかがでしょうか?

通常の 横軸=時間のグラフよりも,もっと個人差のバラエティが激しいのがおわかりいただけると思います.

次回は このグラフを見て考えさせられたことを まとめてみます.皆様も晩酌でもヤリながら,じっくりとご堪能ください.

[6]に続く

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    >晩酌でもヤリながら,じっくりとご堪能ください.

    はい。いろいろと思いを巡らせてみました。アルコールの所為で妄想かもしれませんがw

    このグラフで直線的かつ右肩上がりになる場合は、インスリン量と血糖値が正の相関を示していることになります。
    ただ、普通に考えて血糖値を下げる作用のインスリンが血糖値と正の相関を示していると解釈するはおかしいです。
    そこには、インスリンが分泌されてから効き始めるまでのタイムラグが考慮されていないためだと考えられます。

    このタイムラグには2種類あると思います。
    1つは、血糖値の上昇に反応してインスリンが分泌されるまでのタイムラグ。
    もう一つが、上記のインスリンが分泌されて実際に血糖値が下がり始めるまでのタイムラグ。
    1つ目はNo13とNo14のデータのように血糖値とインスリン量を並べてみれば即座に分かりますが、問題は2つ目です。
    どうすれば、わかるのでしょう。計算値で求められるのでしょうか。それとも測定方法から考えなければいけないのでしょうか。

    耐糖能はこの2つのタイムラグとインスリン抵抗性がミックスされた結果だと思いますが、私の頭ではここまでです(汗)

    耐糖能=グルコース感受性(分泌タイムラグ影響?)+インスリン感受性(血糖降下タイムラグに影響?)+インスリン抵抗性

    • しらねのぞるば より:

      >インスリンが血糖値と正の相関を示していると解釈するはおかしいです

      血糖値が上がる→ 膵臓β細胞に伝わる→インスリンが分泌という Sequenceなので,血糖値が上がればそれに刺激されてインスリン分泌量が増大する,という正の相関は 特に不思議とは思いません.むしろ負の相関だったらとんでもないことになりますから.

      > 分泌されるまでのタイムラグ
      タイムラグと,もう一つ 分泌速度定数とが 実際の分泌量を支配します. そしてそう考えると GLUTによる 各組織でのグルコース取り込み(=これは血管系から見ればグルコースの『消失』),肝臓のでグリコーゲン分解(=同『グルコースの出現』)のそれぞれのタイムラグとそれぞれの速度定数を考えねばならず.別館記事の
      https://ameblo.jp/shiranenozorba/entry-12624083790.html
      に書いたように 動力学的考察となりますから,直観的に1つのパラメータだけで説明するのは不可能だと思います.