ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

長治郎谷右俣「ルートファインディング」②

2019年12月07日 02時02分56秒 | Weblog
微かな記憶と事前の下調べ情報を元に進む。
確実に分かっているのは進むべき方向のみであり、ルートではない。

例の岩棚が見えてきた。
二年前の縦走においてかなり危険だと判断したポイントだ。


一般的には赤い線に沿ってトラバースするのだが、青い線づたいに乗り越えることも出来るという情報を得ていた。
「本当か?」とかなり懐疑的ではあったが、トライしてみる価値はあるかも知れない・・・、だが「もし・・・」となると取り返しのつかないことにもなる。
実際にYouTubeでgoプロを装着してここを越えた動画も見たのだが、池ノ谷側の崖に身を乗り出すようにしてギリギリのところを越えていた。
どの方法が最も確実で、最も安全で、最もまともな方法であるのかが分からない。
だったらやはり過去のやり方で通過すべきだろう。

AM君にはこのポイントの通過については十分に説明をしてある。
「もしフィックスロープが無かったら自分がスリングを掛けるから、それを利用してトラバースする。とにかく慎重に通過しよう。」
と言ってある。

岩棚の目の前まで来た。
あの緊張感が蘇る。
左へとほぼ直角に曲がるポイントで立ち止まり、大きく深呼吸をした。
「よし、行くか。」
小声でつぶやき一歩を踏み出す。
少しずつあのピンポイントへと近づく。


5mm程の真新しいフィックスロープがあった。
支点のハーケンはしっかりとしているようにも見えた。
ところがだった。
「ん? こんな程度だったかな・・・」と思える程スムーズに通過することが出来た。
もちろん危険で難しいポイントであることには違いないのだが、二年前に感じた怖さがなかった。
「あの時の緊張感と怖さは何だったんだ」と感じる程スムーズな通過だった。

AM君にはスタンス・ホールドポイントを説明し、通過してもらった。

慎重に一歩ずつ。
そしてクリア。
「ちょっと大袈裟に言いすぎたかも知れないけど、あの時の緊張感は無かったよ(笑)」
まぁ二人とも無事通過したということで結果オーライとしよう。


源治郎尾根と真下の雪渓が見えてきた。
かなりズタズタ状態の雪渓だ。
それを見下ろしながら「あのシュルンド一つ越えるにしても時間がかかるし危険度も大きいし・・・。なんだかんだ言ってもまだ右俣にシュルンドができてなくて良かったよ。」
「本当ですね。去年の平蔵谷の下りで生のシュルンドを初めて体験しましたけど、一つ越えるのでも大変でしたしね。」

緊張感はまだまだ続く。
そして維持しなければならない。
(「早くモアイのポイントまで辿り着きたい。そこで昼食を摂りたい。」)
そうは思っていても、この先は岩稜だけではなく、どこにどれだけの残雪があるのか分からない。
状況によっては僅かな距離のために再びアイゼンを装着する必要に迫られるだろう。


コルの様なポイントの手前で立ち止まる。
残雪がコルのすぐ直下まであったが、なんとかアイゼンは不要と判断した。

こうして一箇所ずつルートファインディングをしながらクリアを続けたが、標高3000m近い岩稜地帯、そして尾根のルートファインディングのミスは命取りとなる。

進むべき方向だけが分かっており、それ以外は地図は役に立たない。
本音を言おう。
「怖い。怖かった」
だから「怖さを乗り越えなければここから剱を目指すことなど出来ない」
なんてカッコイイことは言わない。
怖さと同居しながら時が過ぎているだけだ。

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