しろくろわんこ

ある日の朝

私がゆずさんの散歩に行こうとしたら⁉︎

「ねぇ〜、オレのクツ無いんだけどぉ⁉︎」

すると、台所で朝ごはんを作っていた奥さんが

「え〜、知らないよ、そんなの！」

「いや、いつもココに置いてあったやつだよ」

「誰も触らないって！」

しばらくして、祖母ちゃんが

「私のサンダル見なかった〜？」

またしばらくして、祖父ちゃんが

「オレの庭クツ無いゾ！」

娘'sが起きてきて

「どうしたの？」

「うん、オレのランニングシューズ無いの、見なかった？」

「知るわけがない！」

「だよね、祖母ちゃんのサンダルも祖父ちゃんの庭クツもなくなったの」

「ヤバくない⁉︎ ドロボー？」

「いや、それはないんじゃない？
だって被害、クツ３足だけだよ⁉︎
そんなドロボーいるのか？」

「他に無くなってそうな物はないの？」

「たぶん … ない」

「え〜、じゃあ、持っていかれちゃったんじゃない？」

「誰にだよ⁉︎」

ん⁉︎
何か変だぞ？

慌てて、ゆずさんを連れてきて
リードにつなげて、庭に出すと
ものスゴい勢いでクンクンと
庭中を嗅ぎ回る
で、そこに置いてあった一枚のタオルを咥えてブルンブルン振り始めた

そのタオルを取り上げてよく見てみると⁉︎
黄色いシミが！

やっぱり…

少し前に、娘'sが

「なんかさぁ、最近、そこの田んぼに犬がいるよ」

と言っていた

どこからか野良犬がやってきて
家の近所の雑木林に住み着いたらしい

私も数度見かけたが
基本、怯えていて、尻尾を巻いていて逃げて、近づいてはこない

ただ、ゆずさんを連れている時は別で
散歩している後ろを一定距離でずっと付いてくる

「あれか、あの白い犬でしょ？」

「そう！ でも見かけると、いつも逃げちゃうんだよ」

「そりゃ、野良犬だもん、怯えてるでしょ」

すると姉が

「餌あげてみよっか⁉︎」

と言い出した！
すると、妹が

「アンタさぁ、山のフクロウにせっせと餌あげてるけど、一向に懐かないじゃん⁉︎」

そう、我が家の裏の山にフクロウが住み着いたみたいで
毎晩、ホー、ホー、と鳴き声が聞こえる
姉は、フクロウに餌付けをして、捕獲しようと企んでいるらしく、たまに生肉を物置の軒に吊るしているんだけど⁉︎
朝になると、肉だけが無くなっていて
フクロウの姿は見かけた事がない

まぁ、餌付けをやったとしても、野犬だもんなぁ⁉︎
フクロウと同じ結果になるのがわかりきっている

「じゃあ、あの白いの捕まえて、我が家の番犬にでもするか」

「何で番犬？ っていうか外飼いかよ」

「だって我が家にはすでにゆずさんがいるじゃん⁉︎」

「そうだよ、これ以上家族が増えると、祖母ちゃんがキレるゾ⁉︎」

「大丈夫だよ、モモちゃん、こないだ逃げちゃったばっかだから」

なんて会話をしていた

ちなみに、このモモちゃん
たまたまペットボトルで作った魚とりの仕掛けの中に入っていた、ハツカネズミ
小さくて可愛いからと
姉がどうしても飼いたいと言って
物置で飼っていたヤツ
ネズミ小屋の掃除をしようと蓋を開けた瞬間
ジャンプして飛び出して脱走しちゃった子

ちょっと前にはそんなのも居たなぁ

ネズミ → フクロウ ときて
今度は野良犬かぁ⁉︎

ゆずさんが発見した、オシッコの付いた
ゆずさんの足拭き用のタオルは
まさにその野良犬が付けた物だった
見つけた私が

「アイツめ〜、庭にまで入りこんできたかぁ」

と言うと
姉が

「私、まだ餌付けしてないよ！」

なんて言っていた

いや、誰もアンタの事、疑ってないんだけど⁉︎

「あ！ でもね、シロっち って名前付けたんだぁ‼︎」

すると会話を聞いていた
妹が

「アホか、野良犬に名前付けんな」

なんて言い出した

「いいじゃんかぁ、呼び名くらい付けてあげたって」

「そうそう、名前付けるのなんてタダなんだから」

「いや、それはちょっとよくわかんないんですけど⁉︎」

「え〜、シロっち？ シロたんの方が可愛いじゃん」

オマエ、何、話に乗ってんだよ

「じゃあさぁ、オーソドックスに シロちゃん でいいんじゃない？」

「いや、それはフツーすぎる」

なんだかんだ言って、ガッツリ会話に入ってんなぁ、妹よ

「だからいいの！ 私が最初に付けたんだから シロっち なの‼︎」

まぁね、別に我が家で飼うわけじょないんだから、呼び方なんて何でもいいんだけど

で、話は戻って
結局、私のランニングシューズを持ち去ったのは
おそらく、このシロっち

で、とりあえず、試しにゆずさんに私のクツの臭いを嗅がせて、捜索に出てみるが⁉︎

この子、全く役に立たないの！

ま、そりゃそっか⁉︎
ゆずさん、ボーダーコリーだもんね
生粋の牧羊犬だもんね
レトリバーとかテリアとかと違って
捜索が得意なタイプじゃないもんね
それに、そんなトレーニングなんて今までやった事無かったし

で、私がゆずさんを連れて只ウロウロしてるうちに
妹が

「田んぼで片っぽ見つけた〜」

と言って帰ってきた

娘'sに自転車での捜索を頼み
私はゆずさんと自宅周辺の捜索
ゆずさんがオシッコでマーキングしているすぐ近くで
祖母ちゃんのサンダル片っぽ発見！

ゆずさんや〜…

結局、姉が、田んぼのあぜで
祖父ちゃんのもう片っぽを見つけてきて
祖父ちゃんの庭クツは両方発見
祖母ちゃんのサンダルは片っぽだけ
私のランニングシューズも片っぽだけ

ゆずさん、成果０…
ゆずさんよ〜…

う〜ん、犬に臭い嗅がせたら
ササッと探してくれるもんだと思ってたけど
そんな甘いもんじゃないのね⁉︎

それからは、ココ数日
夜中にシロっちが庭に現れるらしく
ゆずさん、真夜中にワンワン吠える

近所迷惑だって…

一度、夜中に起きたらしく
娘'sが

「ロミオとジュリエットみたい⁉︎」

なんて事を言っていた

奥さんは、それを聞いて

「そんなロマンチックな事、イメージできるんだ⁉︎」

なんて感心してた

… … …ん⁉︎
いやいやいや、ないわ〜！
ロミジュリとか、ないわ〜‼︎
家の大事な三女
恋の相手がノラとか、無理、むり、ムリ

そして、なんだかんだと
フクロウに続いて、餌付けを始める娘's

いや、そりゃさぁ、フクロウよりチャンスありそうだけど⁉︎

これ以上、住人増やさんでよ…

ってか、シロっち！
私のランニングシューズ返せよッ！







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