頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

中国現地調査における教訓(その3と4)

2020-05-16 00:00:19 | 旅行

その昔、職場のニューズレター(1997年)で没にされた原稿(その3と4)。

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「最初のころ(2回目と4回目の訪中)」

 1995年6月6日、第18回太平洋科学会議(Pacific Science Congress)出席のため来ていた北京国際会議中心(BICC)でのこと。1992年以来3年ぶり2回目の訪中である。会議では、当時書き上げたばかりの博士論文のドラフトの内容をポスターセッションで発表することになっていたほか、主催者(中国科学院)がアレンジしてくれたいくつかのエクスカーションに参加する予定であった。小生がぜひ参加しようと思っていたのは、一般的な北京市民の家庭を訪問するという企画である。博士論文の一部に、家庭部門におけるエネルギー消費構造の日中比較という項目が含まれていたが、今回は実際の家庭でどのようにエネルギーを消費しているのかを見せていただく絶好の機会であったわけだ。

 集合時刻の15分前に集合場所(Annex)とおぼしき所にいってみたが、誰も来ていない。事務局の何人かの小姐に英語で聞いてみると、Lobbyとか、Annexとか、Entranceとか、Hallとか、どれも似たような意味ではあるが、違うことをあれこれいう。BICCは五州大酒店と棟続きになっていて、どちらにもAnnexらしき場所があり、非常に紛らわしい。しかも運の悪いことに、両者は200m以上離れていて、なおかつ屋内経由で行き来するには迷宮のようなところを通過しなければならない。地図を描いてもらうのが一番だったが、なぜか小生としたことが焦ってしまい、それらしき所をバスツアーの一行らしき人々を探してうろうろしているうちに、出発時間は過ぎてしまった。慌てて事務局に戻ってみると別のおじさんがいて、「It has gone away.」と一言。替わりに「天安門広場見学と友誼商店買い物ツアー」なるチケットをくれたが、1992年に両方とも行っているし、何よりも中国人民のエネルギー消費形態を観察する絶好の機会を潰してしまった悔しさといったら。

 同じ様な運命にさらされたアメリカ人研究者が1人。閉会後、彼は通訳を雇って同行させ、1ヶ月ほど中国国内を放浪するといっていたが、無事アラスカに帰れたのだろうか?

 1997年のある時期、某国際機関主催の会議に日本代表として参加した。北京にある某政府機関が事務局を務めたが、会計担当者のやり方がずさんであり、各国参加者の顰蹙を買っていた。最も問題だったのは、参加費の支払いに関してである。請求は米ドル(500$程度)で行われたが、人民幣しか持っていないし、換金手数料を取られるのが馬鹿馬鹿しいというと、人民幣でもいいという。その際、日本国内にいる時のように相手を信用してしまうのは危険である。換算をお任せしてしまうと端数を適当に切り上げられたり、ひどい場合は「○○元ポッキリでいいよ。」と調子のいいことをいうが、20%位多めにいわれるケースもある。

 翌日異常に気付いて抗議すると、「それは人民幣の売値のことだろう。我々は売値と買値の平均で計算している。」などと悪びれずにいう。結局はそれも嘘っぱちであり、再三粘って買値(売値のほぼ5%増)で決着した。払戻す時も272元といいながら100元札が平気で1枚足らなかったり、それをとがめるとぶつぶついいながらもう1枚出してきたりと、もうさんざんだった。

 彼らがボソボソ交すやりとりを多少聞き取ることができたが、我々に英語で話しかける内容と一致しているようにはとても思えなかった。欧米からの参加者はこの手口で誤魔化されたのではないかと思うと無性に腹が立った。会議中に1人1人事務室に呼びつけて払わせる方法にも問題ありだ。

 閉会後、彼等の談笑に加わっていた時、「おまえはどのくらいわかるのか。」との問に対し、「大概、十分之四(およそ4割くらいでしょうか)。」と答えると、「それは誤解の素だ。おまえは英語を使うべきだ。」と渋い顔。彼の英語もたどたどしくて、何をいいたいのかわからないことがあった。あれは彼の精一杯の皮肉だったのだろう。

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2 コメント

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Unknown (本人)
2020-05-16 00:03:48
その5
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Unknown (本人)
2020-05-16 00:04:37
その6
https://blog.goo.ne.jp/jimmyljm615/e/722a2863b053c47b0ff92effb10c7004

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