2020.8.13(木) 同行者:みー猫さん
黒川橋 -黒川入渓 -県境沿いの黒川上流部遡行 -源頭 -登山道 -1745mから県境の藪入り -急斜面のネマガリ登り -灌木オールスターズ現る -ハイマツの海を泳ぐ -岩場 -一瞬の登山道
-藪入り -藪御三家と親交を深める -スダレ山 -登山道 -三本槍岳 -県境の笹薮 -県境のMIX藪 -登山道
-前岳 -赤面山 -旧白河高原スキー場跡地

表那須の藪も結構きつい。

盆休み後半はみー猫さんと泊りで出かけるはずであった。
しかし行き先がなかなか決まらない。天気のせいで東北や新潟、南アルプスは候補から外した。
北アルプスは天気が持ちそうな空気もあるがコロナのせいでテン場が予約制。
コロナのことを考えると予約制なのは仕方がないし理解はする。でも僕は予約してテン場に行くのは嫌いだ。僕は行き先をいくつか用意しておき直前の天気を見てどこへ行くのか確定する。予約してしまったらキャンセル料がかからないにしても、多少天気が悪くてもいかなきゃという気持ちになる。そうして行き先が束縛されてしまうのが酷く不自由に思えるのだ。今日は足の調子がいいから少し先に進もうとか、今日は調子が悪いから少し手前のテン場で泊ろうといった自分の体調を考慮した臨機応変な対応もできないというのも気がかりで。ただでさえルートが制限されているというのにアルプスというのは息苦しい場所だ。ようやくこれなら面白そうだという穴場的な場所を見つけたのだが、昨年から登山届が義務化されていた。北アルプスで登山届を出してこそこそと登山道を外れるというのはどうも後ろめたく没案に。みー猫さんもいくつか候補を出してくれたのだがどこも8月の炎天下で出かけるには少し標高が低い。9月以降ならいくらでも泊りで出かけるネタがあるというのに暑い8月はなんと不自由なのか。僕は一旦匙を投げた。

翌日、このままなら出かけないまま盆休みが終わるなと思ったので改めて天気を見ると、明日は那須周辺の天気がいいらしい。そういえば那須の県境で歩いていない箇所があった。三本槍から東の部分だ。登山道があるくせして県境を微妙に外れており、その後は黒川へと下っている部分。昨年チェルシーさんときりんこさんが黒川上流からスダレ山手前までを歩いており、さらに最近チェルシーさんはスダレ山ちょい先から三本槍の区間も歩かれた。チェルシーさんが藪られたというのに僕は残雪期に楽して歩きましたでは筋が通らないのでいずれと考えていた。紅葉の時期は(隣の登山道が)混むだろうし歩くなら今のうちか。13日日帰りで歩けば土日にまたどこか出かけるチャンスもあるだろうしとみー猫さんに打診し、当初の予定とは大幅に違うが日帰りで那須に出かけることになった。

前夜、いまいち寝付けなかった僕は8/13になるかならないかのうちに家を出た。さっさと集合場所にいってしまいそこで仮眠しよう。
2時過ぎに旧白河高原スキー場跡地横の路肩に到着。暑くもなく寒くもなくちょうどいい気温。集合時間の四時までうつらうつらした。
4時前に車を出るとみー猫さんも来ていた。しかしまだ外は暗い。12時間越えの長丁場を考慮して集合時間を早めたのだが夜明けは5時前であった。
まあそのうち明るくなるだろうとのんびり準備をして僕のレガシィで少し先の黒川橋の手前へ移動。4時40分を回りヘッデンいらない程度には明るくなった。

車を降りてさて、どこから黒川へ降りるかと橋の周りを散策。
しばらくうろうろしたが結局車を止めた北西側の橋のたもとから沢へ降りるのが一番楽だろうと判断。
4:49、橋から降りていくと踏み跡が続いておりやはりこれが正解のようで。
4:52、黒川上流部1060mくらいに入渓。まだ沢は薄暗い。水温はぬるくもないが冷たくもなかった。
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ゴーロの沢を5分少々すすむといきなり堰堤が現れた。
左は登れないなと右の笹薮へ進むと踏み跡あり。釣り師が入るのか。
踏み跡のおかげで簡単に超えられた。
堰堤を超えると渓相が一変し穏やかな河原が広がる。
そして5:11、おまちかねのナメゾーンに突入した。
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続いていくナメはあまり滑らず楽しくひたひたと歩いて行ける。
たまにへつる場面がでてくるのもいいアクセント。
しかし何故かみー猫さんの動きがいつもより鈍い。僕もウメコバ沢の筋肉痛が完治していないのだが、中央アルプスを歩いたみー猫さんはその後谷倉山に筋肉ほぐしに行ったら追い筋肉痛になったと言っていた。そのせいなのかそれともまだ朝飯を食べていないからなのか。
まあみー猫さんが本調子ならそのうち僕が後を必死でついていくことになるからな。藪入り前の沢はのんびり行きたかったのでしめしめと思った。
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釜が深い箇所は横から巻く。
水の色が深い青。温泉成分が溶けているのか。そういえば最初だけイワナをみたがそれ以降は見かけていない。
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次々出てくるナメを楽しんでいく。
ナメは足を大して上げ下げしなくていいから楽でいい。
駐車地から即入渓できるし序盤からこんなにナメがでてくるのにあんまり遡行記録がないのはなんでだろうと不思議に思う。何か落とし穴でもあるのだろうか。きりんこさん達の記録を見る限りやばい場所はなさそうだったけどなあ。みー猫さんは顕著な滝がなく沢屋さんの興味対象外なのではと推理していた。
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釜を適当に右から巻いたら最後にヌメったトラバースがあり固まった男。なんとかポチャンせずにできた。一方みー猫さんは左からなんなく巻いていった。5:40。
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30分ほど楽しませてくれたナメゾーンであったが、その釜の上までで終了。
ゴーロゾーンになってしまった。
火山っぽいなぁという壁面があったりして雨降沢よりは渓相はいいのだがナメ好きの僕にとってはゴーロ続きは好みではない滝らしい滝もなく退屈。
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ナメ終了から30分ほど歩いた6:10、1250mくらいで休憩。みー猫さん朝食タイム。
僕は朝飯を軽く食べていたのだがおにぎりを一つかじった。
整地したら白馬のテン場よりは快適そうだ。
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6:24、歩きを再開。
4分ほど進むと1270mくらいからナメ床復古の大号令。
待ってましたと言う感じだが倒木がいて邪魔。
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でもその先のナメは倒木がなかったのでほっとする。
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今度のナメゾーンは短く7分ほどで終わってしまった。
僕らは再度現実(ゴーロゾーン)へと帰っていく。
でも温泉成分のせいかクリーム色になった岩が散見されるようになったりして意外と飽きは来なかった。
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7:17、1420m辺りにやってくると見慣れたイキモノが川辺に佇んでいた。
藪の番人、シャクナゲさんである。ちなみにアズナゲ。
ナゲ達はイワナの住めない温泉成分の溶け込んだ水でも特に気にしないらしい。
黒川ではナゲを見たのはここだけだったが、数時間後ナゲ達とは嫌というほど触れ合うことになる。
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7:27、1455mくらいで久々に滝っぽいナメ。傾斜がゆるいので適当に上る。
倒木のせいで落ち口が塞がれていた。
横から上に出て跨いで超える。
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滝上にもナメが少し続いていたが倒木のせいであまり楽しめなかったのが残念。
その先で心なしか沢が狭まってきた。
沢横から笹がはみ出て少しぼさってきたのでまだ先は長いのに・・・と思ったらボサはすぐなくなり小滝の前についた。7:44。
そんなに高さはないしこれくらい登れるだろとストックも畳まず舐めプでとりついた。一段登ったらその次で左にいいホールドとスタンスがなく詰まりかける男の姿があった。
ぐっと左手を伸ばしてガバを掴んだら登れた。
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傍目にはそう苦労していたようには見えなかったらしく、みー猫さんも続いて登ってくる。僕と同じところで詰まったのでにっこり。そうそうそこで左手に困るんですよね、手助けいりますか?と物理的にも上から目線で声をかけたが、みー猫さんはしばし試行した後自力で登った。
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その先は沢幅は狭いが小滝がちょくちょくでてきてちょっと楽しい。
以外にナメ床も出てきたり。
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いよいよもって沢幅が狭まりネマガリ潜りも出てくる。
それでいて少し進むとネマガリが後退したりして進むのがつらいというわけでもない。
8:15、1570m辺りで沢の岩を白くしていた成分の源泉と思われるものが左岸から。
その先は岩が白くない代わりにナメ床が赤かったりした。まあ鉄分だとしたら飲んでも死なないだろう。
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1610mくらいの大岩の場所で10分休憩。
ネマガリや枝が出張ってきて邪魔なのだが雰囲気は悪くなくあまり不快感がない。
ネマガリトンネルの下にこんな空間が、といった清流の雰囲気もあり面白い。
意外と水流はちょろちょろにならず続いていく。
さっきの休憩以降調子が良くなったのかみー猫さんが先行し僕がついていくパターンに。
1690mくらいから県境を離れて少し北側へと進んでいたのだがここは仕方ない。水量的に本流がこちらへきているのだ。きりんこさん・チェルシーさんもこちらへ進んでこちらが正規の県境だ(と主張したい)と書いてあったので僕もこれで妥協しようと思う。沢を詰めて湧水が飲みたかったからね。仕方ないね。
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8:59、1710mくらいで最後の二俣についた。
右俣の先にプラスチックの破片がありどうやらそちらが登ると登山道からの水場につながるルートらしい。
しかしすぐ先で藪に消える左俣の方がどう見ても水量が多い。みー猫さんが言うにはすぐそこで湧いているという。水場で組むつもりだったがそうとなればここで汲むしかあるまい。
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左俣を30秒登ると笹の落ち葉の下からこんこんと水が流れ出ている箇所があった。
笹の葉をどけてみると冷たい清水がガンガン湧き出ていた。これ絶対美味いやつだ。
2Lペットボトルが一瞬で一杯になる豊富な湧水量。一気飲みしたがキンキンに冷えていて実に良い。
持参した2Lの水がちょうどなくなっていたのでこの先のゲロ藪を考えて4L汲んだ。
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水を汲んで20分少々休憩して一息ついたので先へ進む。
登山道へつながる右俣はちょろちょろとしか水が流れておらずこれ本当に水場があるのかと思う。
すると登山道直下にパイプから水が出ている水場があった。
飲まなかったけどたぶん冷たくてうまいとは思う。でもちょろちょろとしか流れておらず、沢を遡行してくるのであればさっきの左俣の水の方が絶対にいいと思った。
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最後に急斜面を這い上がると9:30、1740mくらいで登山道に出た。
ここで登山靴に履き替えて藪入りモードとなる。県境から少しずれているので南へと少し登山道を歩いていく。
北東に赤面山が見える。帰りは向こうに下っていく予定だ。
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9:51、1750mから藪入り。ここから三本槍までは県境をほぼ忠実に辿っていきたいと思う。
ここが県境であってるよなとGPSを確認しているうちにみー猫さんが先陣を切る。
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ネマガリの背は高いがかき分けると素直に横にどいてくれる。これは安達太良のネマガリと違って楽だなあなんて舐めた台詞を吐いていたのだがすぐに異変に気付いた。
この斜面地形図で思っていた以上に急なのでは?
みー猫さんが軽く滑ってきたのでそこで僕が前に出た。
腕力勝負の登りが始まる。
露岩に近づいたら楽かと思ったら表面がつるっと滑りそうで横の段差を乗り越えねばならず別に楽ではなかった。灌木も交じりだして逃げ場もない感じだ。
見上げる空は青く夏の日差しは暑い。朝の時点で天気予報は晴れだったが今すぐ曇れと思った。藪の中は保温効果が高すぎる。
まっすぐ立てる場所が稀であり、大体は急斜面なので腕がすごく疲れる。狭いスタンスにたどり着いては腕を休めて。
隙間を探るなんてトラバースしていくのにも腕がつかれるため掴めるものは笹でも灌木でも構わずわしわしとよじ登った。
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10:08、1780mを過ぎてハイマツ達と接触を果たしてしまう。
こんな急傾斜では空中戦もままならない。
お前らと遊んでる場合じゃないからとまだ密度も低かったので隣の灌木と笹のMIXルートで潜り抜ける。これはこれで腕がつかれる。
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10:21、ハイマツの横をすり抜けて1805mくらいまでやってきた。
皮肉にもハイマツや灌木のおかげで滑落する心配のない場所だ。後続のみー猫さんと少し距離が開いたので藪の中に倒れこむようにして少し休憩し体力回復を図る。あと少しで傾斜が緩むから多少は楽になるだろう。
そんな淡い希望を打ち砕くかのように、目の前にはハイマツの海が迫っているのであった。
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続く