乱鳥の書きなぐり

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『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 9オ  近松門左衛門作        17

2019-10-19 | 近松門左衛門

 

  『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 9オ  近松門左衛門作        17


 

 (敷きめつけられ。是其こゑを母が聞け者、しんでも「冥途の飛脚」 9オ)  


 一ぶんたゝぬこと。一生能御恩ぞ。さりとてハめんもくないと

 はら/\となきけるが、なにをかくそふ代金ハ十四日以前

 尓のぼりしが。しつての通梅川が田舎客。かねずく

 め尓てはり合かける。此方ハ母手代能目をしのんで。

 わづか二百目三百目能へつり銀。をひたをされていき

 た心もせぬ所尓。請出す談合極まつて、手を

 打ぬ計と云。川がなげき我らが一ぶんすで尓心中

 するはづで。たがひ能のどへわき指能ひいやりと迄

 


 手代 =江戸時代の商家奉公人の身分の一つ。
     丁稚 (でっち) と番頭の中間身分で,丁稚を無事に勤めると 17~18歳で元服を許され手代に昇進した。
     番頭のもとで経理,売買,商品吟味,得意先回りなどをした。
     手代になると羽織着用,酒,たばこなどを許された。
     業務に習熟し一人前として認められるのは 30歳前後だった。 (→丁稚制度 )  (ブリタニカ国際大百科事典 )
 手代 =1 商家で、番頭と丁稚(でっち)との中間に位する使用人。
     2 商店で、主人から委任された範囲内で、営業上の代理権をもつ使用人。支配人よりは権限が狭い。
     3 江戸時代、郡代・代官・奉行などに属して雑務を扱った下級役人。     (大辞泉)

 二百目三百目 
     目 =匁・文目(読み)もんめ
        ① 尺貫法の目方の単位。貫の千分の1。一匁は3.75グラム。目。尺貫法廃止後も、真珠の目方を量る単位として使用が認められている。 → 貫
        ② 江戸時代、銀目の名。小判一両の60分の1。
        ③ (「文目」と書く)銭を数える単位。
         銭一枚を一文目とした。文。 → 貫

 二百目三百目 =3,3両 5両
         1両12万円として39,6万円 60万円
         1両16万円として52,8万円 80万円

 をひたをされて =追い倒されて



             (9オ)      

               『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」P.288 



 (1オ)(1ウ)(2 オ)= (一丁表)(一丁裏)(二丁表)…と言う意味です。
  本文に「。」が付いている場合は「。」 付いて無い場合は「、」突表記しています。
 (「尓」「能」などのように、助詞部分はそのまま元字で書いています)



 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 1 オ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 1 ウ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 2オ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 2ウ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 3オ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 3ウ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 4オ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 4ウ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 5オ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 5ウ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 6オ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 6ウ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 7オ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 7ウ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 8オ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 8ウ  近松門左衛門作
 『近松全集第七巻』「冥途の飛脚」 9オ  近松門左衛門作


「冥途の飛脚」 1 オ
   梅川 冥途の飛脚 近松門左衛門作
 身をつくし難波尓さくやこの花能。里ハ
 三すぢ尓町の名も佐渡と越後
 相の手を。かよう千鳥の淡路町、亀屋
 能世つぎ忠兵衛、ことし廾能上はまだ四
 年、いぜんに大和より、敷金をもつて養子
 ぶん後家妙閑のかいほう処、あきなひ功
 者駄荷づもり江戸へも上下三度笠。

「冥途の飛脚」 1 ウ
 茶のゆはいかい素双のべに手能かど                
 とれて。酒も三川四川五川所もん羽二重も
 出ずいらず。無地の丸つばぞうがんの國 
 ざいく尓はまれ男。色能わけ志り里志りて
 暮るを待ずとぶ足能。飛脚宿能いそがし
 さ。荷をつくるやら不どくやら。手代ハ帳面
 そろばんをおゝ口とも尓どや/\と。千万両能
 やりくりも、つくしあづま能とりやりもゐながら

「冥途の飛脚」 2オ
 かね能自由さハ、一歩小判やしろかね尓つばさ能
 有がごとく也、町通り能状取立帰つてそれ/\と。
 とめ帳つくり所へたそ頼もふ忠兵宿尓ゐやる              
 かと。あん内するハ出入能屋やしき能さむらい。手代共ゐん
 ぎん尓。ヤア是ハ甚内さま。忠兵衛ハるすなればお下
 し物能御用ならば。私尓仰聞られなせ。お茶もて
 おじや、と、あいしらう。いや/\下り能用はなし。ゑど
 若だんなより御状が来た。是おきゝやれとおしひらき。

「冥途の飛脚」 2ウ
 来月二日出の三度尓金子三百両毎さしのばせ
 申べく候。九日十日両日能中、その地亀屋忠兵衛方
 より。右三百両毎請取内ゝ申置候こと共、埒明申さ
 るべく候。則飛脚能請取證文此度登せ候間。金子
 請取次第この證文忠兵衛尓渡し申さるべく候。是
 此通仰下された。今日迄とゝかぬ処大事能御用の
 手はづがちがう。なぜか様にふらちなとはなを。しかめ
 言ひければ。ハヽ御尤/\。去りながら此中能雨つゝき。川ゝ

「冥途の飛脚」 3オ
 仁 水が出ますれば、道中尓日がこミ。かね能とゝかぬ
 のみならず、手前も大分能そん銀。もし盗賊が
 切取道からふつと出来心。万ゝ貫目取られても。
 十八軒能飛脚宿からわきまへ。けし程も御損
 かけませむ、おきづかひあられるな。いはせもはてず
 是さ/\。いふまでもない御そんかけてハ忠兵衛がくびが
 とぶ。日銀のびてハ御用能間があく仁より、それ処
 能せんさく迎ひ飛脚をつかハして早速尓持参

「冥途の飛脚」 3ウ
 せいとかちわかたうもゐくハう。銀ごしらへも
 うさんなまりちらして成りしが。まだ頼みませふ/\。
 中能嶋丹波屋八右衛門から来ました。江戸尓舟
 町米どひ屋能かハせ銀そへ状ハなぜ
 とゞきませぬ。此中文を進しても返事もござ
 らず。使をやれば酢能こんにやくのといつ届けさつ
 しやるぞ。此者わたして人をつけて下され。手形
 手形もどそと申さるゝ、サア金子請とらふと立はたかつ

「冥途の飛脚」 4オ
 てわめきける。主おもひ能手代の伊右衛、さハがぬ躰尓
 て。是お使い、八右衛門さまが其様尓、りくつ臭い口上ハ
 有まい。五千兩七千両、人能かねをあづかって。百丗里
 を家尓し、江戸大阪を。ひろふせばふする亀屋。そ
 こ一軒でハ有まいし。をそいこともなふてハ。今でも旦
 那かへかへられらば此方から返事せふ。五千両尓たらぬ
 金あたがしたましういふまいと。かさから気を
 のまれ、使ハまじめ尓帰りけり。母妙閑ハこたつ能

「冥途の飛脚」 4ウ
 そばをなることもなん戸を出。ヤァ今能ハなんぞ。たん
 ば屋能金のとゞいたハ慥十日もいぜん能こと。なぜ忠
 兵衛ハ渡さぬの。けさかた二軒三軒能金のさいそく
 ゑず。終尓中間へなんぎをうけず、十八軒能飛脚屋
 聞きてゐる。おやじ此代からの此家尓かね一匁能さいそく
 能かゞミといはれた此亀屋。ミなハ心もつかぬか。
 兵衛か此処能そぶりがどふも、のミこまぬ。昨今能者ハ
 しるまいが、じだい是能実子でなし。もとハ大和新口

「冥途の飛脚」 5オ
 村勝木孫右衛門と云大百姓能ひとり子母ご
 ぜハお死尓やって継母がゝり能技くれ尓。悪性狂
 ひも出来るぞと、てゝごせ能思案で是能世とり尓
 もらひしが。せたいまハり商売ごと何尓おろかハな
 けれ共。此比ハそハ/\と何も手尓付かぬ見た、ゐけん
 能しさいとあれど、養子能母もまま母も。同前と
 思はふかせハ/\いふよりいはぬ身を。はぢいらせふと
 おもふて、目をねふつても聞所、見所ハみてゐる、いつ

「冥途の飛脚」 5ウ  
 能ま尓やら大気尓なり述べ能はな紙二枚三枚手尓あ
 たり次第。かさねながら、はなかミやる。過ぎゆかれしおや
 じ能咄尓。はな紙びんびと仕ふ者ハくせ者じやと
 いはれたが。忠兵衛が内を出さま尓のべ三折づゝ入て
 出て何程はなをかむやらもどり尓ハ一枚も残らぬ。
 身が達者な能わかいのとて。あの様尓はな噛んでハ。
 どこぞで病も出ませふとよまいごとして入ければ。
 でつち小者もせふしがり、早ふかへつてくだされかしと。

「冥途の飛脚」 6オ
 待日も西能のどり足見せさし此尓成尓けり。かご
 能鳥なる梅川尓こがれて通ふさとすゞめ。忠兵衛ハ
 とぼ/\と外能ぐめん内能くび。心ハくもでかくなハや
 十文色も出てくるハ、なむ三宝がくれるとあしを
 空に立帰り、門口尓ハ着けれ共、るす能内尓方ゝ
 能、さいそく使妙閑能ミヽ尓入ていか様能、首尾尓なつ
 たもきづかハし、誰ぞ。出よかし内證をとくと聞きて
 入りたしと、家家ながら敷居高く、内をのぞけば食(めし)

「冥途の飛脚」 6ウ
 たき能まんめが酒屋へ行体也、きやつハ木ではなもぎ
 どをももの只ハいふまじ、ぬれかけて。だましてとはんと
 しあんするまにによつと出る、樽もつた手をしかとし
 むれば、あれ、だんなさま能とこゐ立る。アヽかしましい。
 こりやすいめ。おれがくびだけなづんてゐる。思い内
 尓あれば色外尓あらハるヽ目付をそちも見て取
 たか、かハいらしいかほ付で。きのどくがらすハどふじや、い
 やいいつそ、ころせとだき付ば。うそつかんせ。毎日/\

「冥途の飛脚」 7オ
 新町通ひ。のべ能はな紙二枚三枚。けつこうなはな
 をうまんすもの。なんのわしら尓手ばはもかみふ
 有まい。あのうそつきがと、ふりきるを又だきついて。
 そち尓うそついてなんのとく、じつじや/\といひけ
 れば。それがぢゆうならばんにね所へござんすか。ヲヲ成
 程/\忝い。それ尓ついて今ちよつととふこと有と
 いひけれ共。それもね所でしつほりとききませふ。
 かならずだましにさんすなゐ、そんならわしハおゆわかい

「冥途の飛脚」 7ウ
 て、こしゆして、待ちますといひすていひきりはしり
 けり。忠兵衛は嘘ばら能立わずらひてゐる所尓。北
 の町からいかつげ尓来るハ誰じや。ヤアヽ、中能嶋の
 八右衛門きやつ尓逢てハむつかしと。東のかたへ出ちがへ
 ば、是忠兵衛はずすまい/\とこゑかけられ。ヤ、八右衛門此
 中は久しい。きのふもけふも、おとゝいも。人やろ/\と
 とふて何やかやと延引した。めつきりさむいがおや
 じ能せんきハばばさま能むしば。ハァ、いか尓酒くさすご

「冥途の飛脚」 8オ
 すごしやるな/\。明日は早々人やらふヤ。れそが云伝えした
 ぞや。近日一座いたしたいとたくしかくれば、八右衛門。お
 けやい。口三昧せん尓のしかけても、のる様な男でない。そ
 ちが高買ハ三度でないか。身が方へのぼつた江戸
 がはせ能五十両ハ何としてとどけぬ。五日三日ハ了簡
 も有ぞかし。心やすいハ各別高だちんかくからハ大じ
 能家職。十日尓あまれど、埒明ず、けふも使をやつ
 たれば。手代めがかさ高な返事した。よもや脇へハ

「冥途の飛脚」 8ウ
 そう有まい、八右衛門なぶるか、北ばまうつぼ中能
 嶋天満能市のかハ迄。おやじ共いはるる八右衛門。なぶつ
 てよくなぶられふがかねハけふ請取。但中間へこたゑふ
 か先、お袋尓あはふと。内へいるを引とゞめ、去とてハあ
 やまつた。是手を合すたつた一言聞てたも。おがむ/\
 とささやけ者、又口さきですまそふや。梅川をだました
 と男能いきハちがふた。云とあら者、サァきのふとにが/\
 敷きめつけられ。是其こゑを母が聞け者、しんでも


「冥途の飛脚」 9オ
 一ぶんたゝぬこと。一生能御恩ぞ。さりとてハめんもくないと
 はら/\となきけるが、なにをかくそふ代金ハ十四日以前
 尓のぼりしが。しつての通梅川が田舎客。かねずく
 め尓てはり合かける。此方ハ母手代能目をしのんで。
 わづか二百目三百目能へつり銀。をひたをされていき
 た心もせぬ所尓。請出す談合極まつて、手を
 打ぬ計と云。川がなげき我らが一ぶんすで尓心中
 するはづで。たがひ能のどへわき指能ひいやりと迄


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