人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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予約の良し悪し ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 7/7

コロナの影響ですっかり足が遠のいていた上野へ。駅に着いたらまず改札の位置が変わっててびっくりしたよ。気持ち鶯谷方面にずれていて、横断歩道がなく直接上野公園に入れるようになってた。便利。まだ工事中っぽかった。公園案内板も併せて移動してくれると助かるな。

と言うわけでしばらくぶりの国立西洋美術館。現在は当日券は販売しておらず、事前にネットやコンビニで日時指定券を買わなければなりません。
空き具合としては、平日ならこんなもんじゃね?という感じ。土日でもこのくらいになるなら嬉しいかも。しかし、時間が空いたからふらっと行く、というわけには行かなくなったねぇ。せっかく上野まで来たんだから、もう一個くらい見れないかな?と思っても休みだったり事前予約が必要だったり。
早く落ち着かないかなぁ……
artexhibition.jp

www.nmwa.go.jp

今回はロンドン・ナショナルギャラリー展。ナショナルギャラリーは英国国立なのにもともと銀行家個人コレクションを起点として市民の寄贈をメインに成り立っているという変わった美術館です。
テート美術館とか、寄贈しようとしたら「置く場所がない」って断られたから建物ごと寄贈したとか言うちょっと信じがたいスケールの話があったりする。なんていうか、イギリスの金持ちはガチ金持ちだなって思う。

他の国の、王族のコレクションが中心の美術館と作品傾向として何が違うのかなぁって思ったけど、広大であろうコレクションのうち61点からは何とも言えないなぁって思った。
ただ、たまたま今回の展示がそうなのか本当に全体がそういう傾向なのかはわからないけれど、王族の肖像画みたいなのはなかったです。
王族のコレクションは別の美術館があったりするんでしょうな、たぶんだけど。

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パオロ・ウッチェロ「聖ゲオルギウスと竜」

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会場の最初に飾られている中世絵画。静謐な感じが美しいです。なんか芝生?地面が不思議な感じだけど。

物語を知らないと、女の人のペット竜を騎士が殺しているように見えるけれど、実際には龍にいけにえとしてささげられた姫を助けようと騎士が駆け付けたシーンです。
竜の造形が今とはすごい違うというか、この羽の目玉模様とか、絶対思いつかないよなぁってゾワゾワする。すごい上質な絵本の絵みたいで好き。

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エル・グレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」

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アウトサイダー感が、より正確に言うと教信者感がすごい。
この題材もだし、この題材なのにこの人口密度もだし、いろんな人のポーズ、特に左下で天を仰ぐ少年の異様さが実際に見るとめっちゃ気になる。キリストの体型より気になる。
神殿の壁のレリーフ、左がアダムとイブの楽園追放のシーンで、それはまあこのシーンにあってるかな、追放つながりでって思う。
でも右が多分アブラハムが息子イサクを神にささげるため殺そうとしているシーンぽくて、どゆこと?商人たち殺されるの?緊迫感なの?って気になりまくる。

この絵を見ていて、小学校の美術の授業のことを思い出した。
美術の先生は絵を描くときに「黒を使うな」とやたらいう人だった。「自然界に黒という色はない」と言われても当時の私は「でもパンダの耳は黒い」くらいにしか思わなかったけれど、今なら言いたいことは大体わかる。
先生は「黒いところを黒く塗るな」というよりも「暗いところを黒く塗るな」と言いたかったのだろう。たとえば白いシャツの皺は水色や薄いベージュ色であって、ただ白に黒を混ぜた灰色ではないということが言いたかったんだろうと思う。(そう言ってくれればわかったのにな)
要するに、この絵めっちゃ黒使ってるなって。それがまたアウトサイダー感出てるのかなって。
気迫を感じる。

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ポール・ゴーガン「花瓶の花」

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すごく美しい絵。1896年の絵なので、二度目のタヒチ滞在中に描かれたものでしょうか。南国の花なのかな。その割にすごくおとなしくきれいにまとまっているというか、一種日本的なものも感じます。あまりゴーガンらしくないといってもいい。
背景の中にふわりと浮かぶ花。蝶のように羽ばたく白い小さな花。しっとりとしたアイリスのような花。夢のような世界。
机の上にこぼれ落ちる花は時間の経過を表しているようだけれど、静かに咲き誇る花瓶から時折ポトリと花が落ちる時間が永遠に続いていくように感じる。

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ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス

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かっこいいね!ターナーはこういうプレ印象派的な、幻想絵画が好きです。
朝開きのなか誇らしげに出港する船、その帆の奥で身悶える巨人、水面で船を導くような水の精。勝利の絵です。太陽にはアポロンの馬車が描かれていると解説にあったけれどしかとはわからない。よく見ると、右の船のすぐ上に馬の首があるような?

色合いとかがちょっとルドンっぽいなぁと思います。ルドンより細かく、力強いけど。
こういう広がりを感じる絵がとても好き。あと最近単純に水面の絵が好き。
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ジョン・コンスタブル「コルオートン・ホールのレノルズ記念碑」

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展示の後半にある絵。見た瞬間、単純に好きだなって思った(どうでもいいけど、結構黒いですねこの絵も)
王立芸術院初代会長のジョシュア・レノルズの記念碑の左側にミケランジェロ、右側にラファエロというルネッサンスの巨匠胸像が描かれています。
ルネサンスから、この絵を描いている画家自身のいる現代までの美術の系譜を、それを受け継いで発展させていくという気概を表しているとのことです。だとしたらこの鹿はムーサからの霊感なのでしょうか。
凛とした、力強い絵です。そしてこの絵を展示するナショナルギャラリーの「この志を受け継いでいく」という気概を感じます。

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作品数は61とそれほど多くはないのだけれど、しっかりと見ごたえのある絵画が多いです。
モネ、ゴーガン、ゴッホとそれだけで目玉になる画家がたくさん来ているのも豪華で、本当ならもっと混みそうなもんだと思います。個人的にはほかにもアングルやアンリ・ファンタン=ラトゥールが来ているのが良かったよ。
面白かったです。