人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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宇宙を入れた器 美の競演 静嘉堂の名宝 9/15

和工芸は全然詳しくなくてだめなんですけどね。これは行くしかないでしょの展示があるので静嘉堂文庫までえっちらおっちら行ってきた。

seikado.or.jp

だって、曜変天目と油滴天目が同時に見れるんですよ?!!
もともとこの時期は静嘉堂文庫で油滴天目が、三菱一号館曜変天目が展示されるはずでした。だから両方行くつもりではあったんです。
でもコロナの影響で三菱のほうの展示が取りやめになり、急遽静嘉堂で同時展示に変更になったという、がぜん見逃せない展示なわけです。
だから行ってきたよ静嘉堂。どの駅からも徒歩25分周りに何にもないところにめちゃくちゃ蚊に刺されながら行ってきたよ。

ところでなんで三菱一号館が中止になったから静嘉堂に来たかっていうと、この2つの美術館はともに岩崎家、三菱財閥創業家のコレクションが元になっているからなのです。両方同じ一族の持ち物なのね。
こないだ行った上野の旧岩崎邸もそうだし、清澄庭園もそうだし、東洋文庫もそうだし、六義園もそうだし、みなさんがおいしく食べてるヨーグルトの小岩井農業も元は岩崎家の持ち物。
そう考えると戦前の財閥ってマジぱねぇ。解体もされるわけだわと何となく納得してしまう。

あ、ついでに京都人に『文庫って何?』って言われて気づいたんだけどあまり一般的言い方ではない?博物館の事ですよ。美術館というよりニュアンス的に博物館。
もともと『文(ふみ)を入れておく庫(くら)』の意味で、文庫本はそういう集めた全書的なものを広く公開する敵な意味で名づけられたんでしょう。

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こちらが静嘉堂文庫なのだけれど、この建物には入れない。横に作られた美術館に行きます。

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「藍釉粉彩桃樹文瓶(らんゆうふんさいとうじゅもんへい」


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入口の3作品だけ撮影できました。
なかなかこった作品で、瓶の口の部分など好み。


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国宝「曜変天目

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撮影不可だったのでパンフから。やっぱりすごいねえ。宇宙だよねこれは。

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横から見るとシンプルでうっすら青みが買った黒一色。それが覗き込むとこんななのだから、驚きしかない。

上の気泡が大きく不均一に並んでいる。暗い土台の上に輝く青い光の軌跡に導かれるままに底のほうへと視線を移すと、環状の光に捉えられる。そのちゅおうは、また闇。
宇宙をワープしているような、ブラックホールを見ているような気持ちになる。
これは美。

でもさ、これ抹茶の緑合わないよね。何を入れることを想定していたんだろう。何を入れても器に負けてしまいそう。

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重要文化財「油滴天目」

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曜変天目、油滴天目はともに構造食の青い輝きが魅力なのだけれど、それは焼成中に釉薬がはじけた後なのだといいます。そしてこの二つの違いは、曜変は穴の周りが、油滴は穴そのものが光っていることなのだそう。

油滴とはよく言ったもので、弾けて器の中央へと滴り落ちるその輝きは確かに油のように見える。アスファルトに流れたガソリンのような不思議な色をしている。
けれどその輝きは曜変を見た後には弱く、きらきら光って見えていたのは撮影の下限によるものなのかなぁと思ってしまう。

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でも油滴天目はサイドですね、この横顔が美しい。
光をまとって滴り落ちるこの釉薬の、底のほうにねっとりと溜まったこのしずくがとてもいい。そこまでしっかり輝きがあるのが、這い寄る闇のようでとても素晴らしい。

この茶碗を支える漆の入れ物もあったけれど、ここを隠してしまうなんてもったいないなぁと思った。隠れている部分を取り出して眺める驚きも捨てがたいけれどね。

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入場料千円だったけど、曜変天目に500円、油滴天目に500円で全然元が取れるなぁって思った。最高。
あとは酒井抱一がたくさん展示されていて、とくに牧童の絵が良かったのだけれどグッツがなかったのでパス。

 「美の競演」というタイトル通り、同じ画題をもとに子弟や時代の違う人が描いたものを並べて鑑賞するというコーナーがあり、コンセプトはとても良いのだけれど、その作者の関係性が開設されていないのがとてももったいないなと思った。

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岩崎家の霊廟というのもあった。割と大きいけどずんぐりしている。扉には中国の故事と思しき物語が彫られている。

この中には骨壺が収められているのか、それとも棺が収められているのか。それがどうしても気になる。