塩を売って緑を買う男・バンベンの日記

塩や重曹を売りながら内モンゴル・オルドスの砂漠緑化を進めるバンベンの奮闘記。商品についてはHP(バンベンで検索)まで!

【原点回帰・オルドスの風】第18回:落ち込んだ時

2019-05-23 | Weblog
オルドスに来て最初の半年は言葉もわからず、生活するのも大変、その上学校からはボクの活動は軽視されていた。

なぜこんなところに来てしまったのだろう。どうしてこんなに日本語を必要としていないところに日本語教師として来てしまったのだろう。大連や北京など、もっと日本語が必要とされているところはいくらでもあるはず。

こんなつらい時期にボクを支えてくれたのは生徒たちだったといっても過言ではない。とにかくどんなに落ち込んでいても、授業をすることによって立ち直ることができた。あのバカでかい声でボクを励ましてくれるのだった。

ただ、生徒たちがすべてを救ってくれるわけではない。

ある日のこと。授業の段取りが悪く、生徒のノリもイマイチ。おまけに1日中誰も僕の部屋を訪れなかった。

その前の日までは生徒がひっきりなしにボクの部屋に来ていたので、日本の歌を聞かせたり、いろいろ写真を見せたり、楽しく過ごすことができた。

しかし今日は一人ぼっち。シ~ンとした部屋で一人ボ~っと窓からグラウンドで遊んでいる生徒たちの姿を見ているしかない。こういう日はすぐに落ち込んでしまう。

他にも、学校の宴会で訳のわからないモンゴル語の中に一人ぽつんと取り残されたとき、部屋に先生が来ていろいろ話をするのはいいのだが、なかなか帰らないので、最後は露骨にいやな顔をして追い払ってしまったときなど、ちょっとしたきっかけで落ち込んでしまう。そして夜、一人でいろいろ考える。

最初は「なんでボクのことをわかってくれないのだろう」とほかの人のせいにするが、よく考えると宴会のときでもボクがもっと積極的に話しかけるべきだし、どうせ暇なんだからボクの部屋に居たければいたいだけいればいい、というくらい心が広くなければいけないと思う。もっと、授業に工夫を凝らせば、もっと準備に時間をかければ変化に富んだ授業はできるはず。と、結局自分に帰ってくる。

なぜ、もっと積極的にできないのか、なぜもっと大らかになれないのか、こういう考えに至った時、ボクは1本の映画を「聴く」ことにしていた。

それは宮崎駿アニメの傑作「魔女の宅急便」。僕の部屋にはテレビがないので見ることができない。だから聴くのだ。中国に来る前にたまたまテレビでこの映画を見た。13歳になった魔女が修行のため、知らない街で一人で生活を始める。周りの人との関係がうまく行かず、落ち込むこともしばしばあるが、紆余曲折を経て、やがてその子はその街やその街の人が大好きになるというストーリー。

ちょうど、中国の「知らない街」で生活をすることになっていたボクの境遇と重なっていてとても感動した。本当はビデオを持っていきたかったが、現地では見れないだろうから、せめて音だけでもと、レコード店を探した。すると、サントラ盤とかではなく2時間の映画の音声ををそのまま収めたカセットテープを発見したので、それを買ってオルドスまで持ってきたのだ。

落ち込んだとき、自信をなくしたときの夜、寝床で目を閉じてイヤホンを使って静かに聴く。音だけといっても聴き応えがある。嵐のときの雷の音や列車が動くときの汽笛、車両の連結部分が軋む音、自転車のサドルを漕ぐ音など細部にわたって驚くほど凝っていて、臨場感がある。声優の声もいい。音楽も場面によく合っている。すっかり映画の世界に入り込む。

自然と主人公を自分の姿に重ね合わせる。エンディングの感動的な場面では必ず瞑っている目元から涙だ出てきたものだ。「もっと大らかに」「もっと素直に」・・・。最後はそう自分に言い聞かせて、静かに眠りにつく。

そして次の日は生まれ変わったような新鮮な朝を迎えることができたのであった。

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