【水草QA100】当ブログが書籍になりました!!

【IAPLC2019】世界水草レイアウトコンテスト 出品水槽の作り方

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

本記事ではIAPLC2019に出品した水槽の作り方を解説します。

水草レイアウトの一連の流れを紹介しているブログは少ないですから皆さんの参考になれば幸いです。

コンセプト、構図組みから水草の植栽、完成まで余すことなくご紹介します。

この記事の著者
轟元気

プロアクアリスト

轟元気

とどろきげんき

プロフィール

業界歴15年の中堅。現在は埼玉県坂戸市にあるアクアリウムショップ「e-scape」の店長をしています。本ブログ、Ordinary-Aquariumでは「水草水槽の知識」を中心に今までの経験を基にした実践的な知識、技術を初心者の方にも分かりやすく解説していきます。プロフィール詳細リンク、転載、引用について

完成作品

IAPLC2019応募

最終的に応募したのがこちらの作品。

これからこちらの作品を空の状態から順を追って解説していきます。

順位は312位と振るいませんでしたが、これが今の僕の実力なのでしょう。

せっかくなので制作過程を皆さんと共有したいと思います。

使用機材

水槽120cm×60cm×60cm
ろ過エーハイム2217と2215
ライトADA ソーラーRGB 2台 12時間点灯
CO2自作ミキサーにて1秒/3滴
底床川砂、川石
肥料オリジナル肥料を2~3日毎に適量

水質

水温18℃ ⇒ 22℃
PH6.0~6.5
GH3以下
KH3以下
TDS50~100ppm

コンセプト

川底の風景&採取した流木を使う

これが今回のコンセプトです。

今回は泳がせる魚を最初から決めてます。

アラバマレインボーシャイナーを群泳させたいのです!

なのでレイアウトも魚に合うように「川の流れ」を特に意識して作ります。

そして「採集した流木のみでレイアウトする」これも今回やってみたかったこと。

海外産の流木はエキゾチックで素敵なものが多いですが、日本の川で採れる流木にフォーカスして作ってみます。

せっかく日本に生まれ住んでいるのですから、日本の川にある素材を使いたいと考えるようになりました。

IAPLCは国際的なコンテストだけに逆にその気持が強くなりましたね。

なので、今回使う流木は僕が地道に拾い集めたものだけです!

アラバマレインボーシャイナー

アラバマレインボーシャイナー

名前の通り、アメリカ原産のコイの仲間です。

雰囲気が日本産淡水魚にそっくりですね。

アブラハヤやウグイの色違いといった感じです。

温帯域の魚は「ある時期だけ激しく発色する」種類が多いのですが、こいつも同じで、発情するとメタリックピンク&ブルーになります!

こちらのISAAC SZABOさんの写真で見て以来、いつか泳がせようと思っていました。

元気
元気

ちなみに自然写真ならMaxwelさんも素晴らしいので一緒にお楽しみください。

構図組み「大筋を決める」

ここから構図を組んでいきます。

石は何を使うか悩みましたが直線的な流木と相性の良い川石にしてみました(川石は自宅にたくさんあるし)。

まずは底面式フィルターをセット
底面をセット

前回に引き続き外部フィルター(エーハイム2217)の給水側は底面フィルターのプレートに直結します。

下の白い板は発泡スチロール。石を大量に使うので念の為敷きました。

水草水槽で底面フィルターを使う方法

底上げ用の軽石をセット
軽石をセット
さらに軽石をセット

洗濯ネットに軽石を入れたもので底上げ。今回は大量に使いました(100Lくらい)

軽石で底床を底上げする方法

川石を入れる
川石を入れる

前景となる川石を入れます。

手前から、「大きい川石 ⇒ 小さな川石」としてゆくことで遠近感を演出できます。

なので、ここでは大きめの川石から入れていきます。

流木を仮置してみる

今回のメインとなる流木を仮置してみます。

高さを出したかったので、洗濯ネットin軽石を枕のようにしています。

グリグリと流木を動かすと中の軽石が動いて安定させることができますよ。

その際に洗濯ネットが破れないように注意してください!

大きい川石を入れる
大きい川石を入れる

一旦、流木を取り出して、今回一番大きい川石を入れます。

入れる場所は先程の流木の手前。

大きな川石を入れたあとは、周りにさらに川石を追加しました。

流木と組み合わせる
流木と組み合わせる

先程の流木と組み合わせます。

大きな川石に流されてきた流木が引っかかっているイメージです。

流木に重りをつける

大筋のレイアウトが決まったところで流木に重りをつけます。

これはシャックルという工具です。

ホームセンターで手に入りますよ。

ホームセンターで揃うアクアリウムアイテム32選

流木にヒートンをつける
ヒートンをつける

シャックルとつなぐため、流木にヒートンをつけます。

流木がもろくなって外れてしまうと怖いので、念の為、3箇所つけました。

結束バンドでつなぐ
結束バンドでつなぐ

結束バンドでシャックルとヒートンをつなぎます。

この流木の場合は輪っかをいくつか連ねるようにしてつなぎました。

要は流木が浮かないようになればOKなので、状況に合わせてつなぎ方は工夫してくださいね。

石で隠す
石で隠す②

シャックル、結束バンドは見切れてしまうと格好悪いので、石で隠します。

盛る

流木に重りをつけたら、準備完了。

一気に背面を盛っていきます。

どこかで見たことがあるような、、?

感覚に任せて盛っていたら、この作品にそっくりになってしまった、、

この雰囲気好きなので、まぁいいか(笑)

【IAPLC2015】世界水草レイアウトコンテスト出品水槽の作り方

構図組み「流木を追加する」

ここからが、今回の構図組で一番時間の掛かったところ。

川で採集した細い流木を組み合わせていきます。

流木を追加する
流木を追加①
流木を追加②
流木を追加③

うーん、、

しっくり来ませんね。

もっと細いヤツにしてみる
細い流木①
細い流木②

もう一度採集に出かけて、もっと細いヤツをいれてみることにしました。

組み合わせを探る

なんとなくまとまってきましたね。

流木を固定する
流木を固定①
流木を固定②

ある程度、形がまとまってきたところで、流木を結束バンドで縛って固定します。

それぞれが確実に浮かぶので、最初に重りを付けた流木に固定していきます。

右奥をスッキリさせる

なんだか、右奥の盛り方が気になってきました。

そこで、思い切って右側の後ろ側をスッキリさせることにしました。

川石、川砂を取り出す
砂を取り出す

盛りを少なくすると底面に繋いだパイプが目立ってしまうので、取り外して違うタイプに変えます。

底面のパイプを交換する

色を黒に変えて、間にコネクタを入れます(HIソケット)。

コネクタを入れることで、撮影時にパイプを取り外しできるようにしました。

微調節する

右奥を大きく変えたので、流木のバランスや石組みなど細かく調整していきます。

構図完成!
構図完成

最終的にできたのがこちら!

こちらを本作品の構図とします。

アク抜き

アク抜き
アク抜き

採集流木はかなりアクが出ることがあるので、植栽前に念のため、水に晒します。

アク抜き後
アク抜き後

「3日漬ける ⇒ 換水」を2回行いました。

かなり出るかと思ったんですが、ぜんぜん出ませんでした。ラッキー!

排水して植栽に移ります。

水草の植栽

ウィローモスを「塗る」
ウィローモスを塗る

ここのところ、ウィローモスを巻く、接着するのでもなく、「塗る」ようにして活着させることが増えました.

小さな容器に水とモスを入れてハサミでみじん切り ⇒ ハケで水ごと塗っていきます。

※ミスト式で立ち上げる場合限定の活着方法です

「ミスト式」で立ち上げる方法

塗った後
ウィローモスペインティング

塗るとこんな感じになるはずです。

モスの量はレイアウトイメージに合わせて調整してくださいね。

この活着方法、勝手に「モスペインティング」と呼んでいます。

このままミスト式で管理をすると「1週間~10日程度」で活着しますよ。

今のところ、ウィローモスでしかやったことが無いのですが、活着力の強いモスなら同様にできるはずです!

ニューラージパールグラスとショートヘアーグラス

粗目の川砂なので、ニューラージパールグラスは植えずに石に巻きつけました。

ショートヘアーグラスは石の隙間に挟む感じです。

大丈夫です。これでもちゃんと育ちますよ。

適当に並べる

広がって成長するので、ある程度感覚を空けて並べます。

ヒロハノエビモを配置

ヒロハノエビモを石の隙間に配置するします。

植えられるスペースが無いので、鉛巻きにしておくことにしました。

石の隙間に配置

鉛巻部分が見切れると格好悪いので、見えないように配置します。

このタイミングでミスト式を切り上げて水を張っています。

水上部分にも植物を配置

謎の草

川辺りに生えている雑草(名前分からず)を植えてみることにしました。

こんな感じのやつを引っこ抜いてきました。

秋に獲ったのであまり綺麗じゃないですが、夏場は爽やかな雰囲気で素敵なんですよ。

※後にハイコヌカグサという草だと知りました。

植えるというよりは流木の上に置いた感じです。

1週間くらいで芽が出てきました。

イメージ通りに育つのか楽しみです。

完成イメージ

これは夏に撮った近所の川。

こんな感じになるのを想定しています。

あっさり育った

1ヶ月も経たずにこんな感じに茂りました。

ソーラーRGB直下ということもありますが、育成は簡単ですね。

ほんとに川辺りに生えているただの雑草なんですが、川岸の雰囲気を演出するのにピッタリの植物でした。

これからどんな成長をみせるのか楽しみです。

水草育成&魚投入

順調に育つ
水草が育った

特に藻類が発生することも無く、順調に育っています。

石に巻いただけのニューラージパールグラス、石の隙間に差し込んだだけのショートヘアーグラスですが、順調な生育をしていますね。

水草は体がしっかりと「固定」されていれば、問題無く育てることができます。

グイグイ伸びる

水上部分は放っておくと、すぐにこんな感じに茂ってしまいます。

今回、トリミング回数が一番多かったのは、この草でしたね(名前分からず、、)。

下から見ると
本物の川みたい

下から見上げるとこんな感じ。

実際に川に潜っているような雰囲気になりました!

このあとは伸びたらトリミング、伸びたらトリミングの繰り返しなので、撮影まであまり代わり映えしません(笑)

魚を入れる
アラバマレインボーシャイナー

ある程度水草が茂ったら、アラバマレインボーシャイナーを投入です。

飼い込まないと色の出ないお魚なので、じっくり育てることにしました。

水槽に入れたのは2018年12月半ばごろ。こちらの画像はたしか1月頃に撮ったものですね。

早く成長させたかったので、餌は1日3回あげていました。

日中は仕事に出ているので、3食ともエーハイムオートフィーダーを使っています。

結局、締切ギリギリまで成長させて色の出るのを待っていましたよ。

トリミング
トリミング

ショートヘアーグラスがかなり繁茂してしまったので、ガッツリ取り除きました。

ソイルは使わず、川砂だけしか使っていないのですが、液肥を毎日添加していたのでかなりの成長速度水草が繁茂してしまいます。

ショートヘアーグラスを取り除く作業は、撮影までに何度も行いました。

完成カットの撮影

IAPLC2019出品作品

なんだかんだでこちらが完成カット。

毎日餌をあげる、水草が伸びたらトリミング。

基本的にはこれの繰り返しで撮影を迎えました。

水景の大筋は2018年12月半ばまでには完成していたので、そこから撮影までの5ヶ月半くらいは育成に費やしましたね。

かなり水草の量が多くなってしまったので、大きくトリミングをして撮影を迎えました。

結果は312位と振るいませんでしたが、勉強になった作品でした。

元気
元気

クッソ!次回はもっとマシな順位を獲ってやる!!

反省点

  • コントラストが無い
  • ウィローモス多すぎ
  • 魚が少なく見える

こちらの3つが今回の主な反省点。

それぞれ自分なりに良くする方法を考えてみました。

コントラストが無い

一つの塊に見える

石、流木、空間、影などそれぞれ別々のファクターの境界が曖昧で同じ「一つの塊」に見えてしまっています。

特に左背面が重たい印象になってしまったので、川の爽やかな風情が失われていますね。

  • 強く影を作る
  • ウィローモスを活着させるところにメリハリをつける
  • 思い切って空間をあける

などの思い切った施策が必要でした。

構図完成

水草植栽前の時点では、川の流れを連想させる荒々しさがもっとあったのですが、、、

水草の成長が与える水景の変化を上手くコントロールできませんでした。

ウィローモス多すぎ

ウィローモスが多すぎ

コントラストが無いとかぶりますが、石と流木に対して全体的にウィローモスを活着させた結果、石なのか流木なのか曖昧になってしまいました。

結果論ですが、今回のレイアウトなら石には活着させない方が良かったですね。

ウィローモスを塗る
ウィローモスペインティング

ウィローモスを細かく切って塗る活着スタイルの「モスペインティング」は綺麗になるまで時間のかかる方法なのですが、その分、しっかりと活着します。

もっと少ない量でよかったみたいですね。。

まだ、そこまで回数をこなしていない活着方法なので読みが甘かったようです。

魚が少なく見える

魚が少ない

そもそも、そもそもですよ!

アラバマレインボーシャイナーが見せたいレイアウトだったのに、魚が全然目立っていない、、

アラバマレインボーシャイナー

アップで見ると良い感じなんですけどねー。

今回は50匹入れましたが、100~150匹くらい入れるべきでしたね(予算がすごいことになりますが)。

1年くらいかければMAXサイズまで成長するはずなので、それから撮影するなら50匹でも良いかもしれません。

発色も本気を出したらこんなもんじゃ無いんですが、今回の育成期間ではこれが精一杯でした。

もしかしたらアラバマレインボーシャイナーもタナゴなどと同様に「冬⇒春」のような水温変化から発情して発色するのかもしれませんね。

冬場は無加温の別水槽で育成して、春になったら本水槽へ移す、そして発情したら撮影なんてパターンが良いのかも?

撮影時だけお魚を入れる手法は嫌いなので、この方法にチャレンジすることは無いでしょうが、一応今後のために頭の片隅に入れておくことにします。

日常管理

  • 換水
  • トリミング
  • フィルターの掃除
  • 点灯時間
  • CO2添加量

換水

  • 立ち上げ時:週/1回50%
  • 1か月~:2週/1回50%

ちょっと思うところがあって、最近はあんまり換水をしないで管理するようにしています。

水換/少、水換/多、両方の管理をしたら換水のメリット、デメリットが見えてきました。

水草レイアウトは水換えが一番!と言われていますが、どうやら時と場合によるようです。

今現在の私の思うところをこちらでまとめましたので興味のある方はぜひご覧ください。

トリミング

  • 2週間に1度バッサリ切る
  • 3~4日に1回微調整

このようなルーチンでやっていました。

撮影2週間前くらいからは毎日手を入れて微調整してました。

日頃からルーチンを守ってトリミングしていると、狙ったタイミングで茂みサイズをコントロールできるようになります。

元気
元気

この辺りは経験が必要なので、日頃からガンガントリミングして感覚を掴みましょう。

フィルターの掃除

制作期間中は1度も掃除しませんでした。

私はマメにフィルターを洗う方ではありません。

その方が調子が良いので(笑)。

マメに洗ってしまうといつまで経っても生物ろ過が成熟しないです。

生物ろ過の仕組み 【ろ過バクテリアの働き】生物ろ過を詳しく解説 ー白濁、臭いの無い水槽を目指してー

点灯時間

12時間点灯です。

水草を綺麗に育てるために長めに設定しています。

今回は制作期間中、点灯時間は変えませんでした。

特に赤系水草は長い時間ライトを当てた方が発色が良いのでおすすめなのですが藻類には注意しましょう。

もし長時間点灯するならコツは最初から12時間点灯することです。

12時間点灯するということを前提としてバランスを取るとあまり藻類に悩まされないと思います。

CO2添加量

自作のCO2ミキサーにて1秒/4滴入れています。

制作期間中はだいたいこれくらいを添加していました。

添加量が足りず水草が綺麗に育っていないという方は結構多いので添加量には気をつけましょう。

水温管理を工夫してみた

水温の調整だけアラバマレインボーシャイナーの発色を促すために、変えてみました。

水温 18℃ ⇒ 22℃

お魚を入れた当初は18℃で管理していました。

これは水草の成長速度を考えるとギリギリのライン。

今回使った水草達ならもっと低い水温でも枯れないのですが、成長速度がかなり遅くなってしまいます。

真冬だったので、クーラーを使わず、ヒーターを18℃設定で作動させるだけなのでお手軽でした。

しばらく18℃で管理をして、季節が春に近づくにつれ、自然の気温の上昇に合わせて変わるのに任せていましたよ。

4月くらいからは設定温度を22℃にして管理をしていました。

結論

4℃くらいの温度変化では効果なし

アラバマレインボーシャイナーをがっつり発情させるなら、もっとダイナミックな水温の変化が必要?

18℃⇒22℃程度の変化なら、無くても発色に影響無さそうなので、水草の育成にフォーカスして25℃くらいに管理したほうが良かったかも?

もしかしたら日照時間に長さも発情に影響しているかもしれません。「冬場⇒短い点灯時間」から徐々に長くしていくような管理も有効かもしれませんね。

元気
元気

いつかもう一度チャレンジしたいお魚です!