蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

食事作法の起源を読む 2

2019年09月22日 | 小説
表題を部族民通信HPに投稿した。
記事の内容は;
神話番号M406麗しのアサワコ(Warrau族)の紹介です。
通過儀礼を前にするWaiamariは実の叔母から誘い水を掛けられた(沐浴中の水掛け、女からこれが出れば誘い)。Wai..は即座に「それは近親姦だ、恥を知れ」とはねつける。しかしその夫(義理の叔父)はWai...から誘ったのだと疑いを深める。村にすみにくいうえ、儀礼通過も(叔父の嫌がらせで)期待できなくなったので、別叔父(実の?)とともにカヌーでオリノコ川を下る。とある村に停泊しアサワコとであう。

<Celle-ci les recut gracieusement et pria l’oncle de laisser son neveu l’accompagner aux champs.…Assawako dit au jeune homme de se reposer pendant qu’elle irait chercher de quoi manger>>
拙訳;アサワコは二人をおおらかに受け入れた。叔父に「野に出るので甥ごさん(Wai..)に同伴していただけません」と頼んだ。アサワコは「 ちょっとした食べる物を見つけてくるからここに休んでいて」一人森に入った。

「ちょっとした物」とはバナナ、パイナップル、サトウキビ、スイカ、ピーマンなど。両手に一杯抱えていた。ちょっとしただなんて、アサワコは謙遜したのだ。帰り道に彼女は尋ねる「あなたってきっと、素適な狩人なのよね」(=elle demanda s’il etait bon chasseur)。狩人を素適とするは日本語で違和が残るが、先住民では手練れの狩人は肉をたっぷり持ち帰る、実利をして「素適」とした。
Wai..は道を外れ森に入った。


写真:PDF(下写真で解析した3神話を語り継いでいた3の部族、Tukuna,Arawak,Warrau族の居住地図。レヴィストロースの著作から)

<Il s’eloigna sans mot dire et la rejoignit presque aussitot avec une pleine charge de viande de tatou. Elle etait fiere de lui, comme il convient a une femme, elle reprit sa place en arriere>
訳;一言も発せずワサワコを離れ、そして立ち戻った。手にはアルマジロ肉をたっぷりと抱えて。アサワコはすっかりWai..に魅せられて、その位置が慕う女性に心地よい男の後ろに身を寄せた。帰りの道はもうすぐ終わる。
<Quand ils furent presque arrives, elle promit qu’on trouveraient de quoi boire dans la hutte et s’informa s’il savait jouer d’un certain instrument de musique.<un petit peu>, repondit-il. Il joua d’une facon merveilleuse. Il passerent la nuit en tendres ebats>
拙訳:村を前にしてアサワコはWai..に小屋には飲み物があるのよ(寄ってかない)。あなた、何か楽器が弾けるのかしら。するとWai..は「ちょっとだけ」と答えた。いざ手に取ると、彼はすばらしい奏者であった。かく二人はその夜を甘いebatsに過ごした。

ebatsとは何か。=中略=activites erotiques(エロチックな様々な活動。半日は一夜、二人の楽しみ迎える終幕その前に、三人目の叔父が気を効かせ、はずれて納屋奥に身を引いた。甘い飲み物(蜂蜜酒かもしれない)に二人は酔い、もっと甘い楽器の調べにうっとり女が聞き惚れて、奏でる男がクレッシエンドで迫る。

一度は結ばれたけれど、この愛は続かなかった。Waiamari..は<Je ne puis pas abandonner mon oncle. Il a toujours ete bon pour moi>叔父を捨てる訳にはいかない、彼はいつも私をよくしてくれたとアサワコに告げる。La jeune femme fondit en larmes, lui aussi etait triste. 新妻は目に涙を溜め悲しむも、彼だって悲しかった。

写真はPDFのスクリーン像。3の神話のきっかけ、進展、結末を比べている。M1が提示した「自然の否定、文化の(一部)獲得、しかし未だ途上」の流れが共通している。

このアサワコ神話とモンマネキ神話(食事作法起源1にて解説)、それと基準神話M1(Bororo族)を比較したPDFを作成した。いずれ神話も「自然を離脱し文化を形成したい」との主題が流れています。ブログにはPDFが載せられないので写真(一部)を貼り付けました。PDFの詳細解説はHPにて。

部族民通信HPには左コラムのブックマーク、ないし「部族民通信}でググればブラウザできる。HPにもよろしくご訪問を。








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