蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

野生の思考ブリコラージュ 1

2020年07月15日 | 小説
レヴィストロース著「LaPenseeSauvage野生の思考」の第一章「LaScienceduConcret具体科学」の紹介を続けます。これまでGooBlog、及び部族民通信のホームサイトで前半部の「具体と魔術」を解説しました(Blog投稿は6月22日から7月4日)。今回は「Bricolage寄せ集め」について語ります。

動詞Bricolerの意味;一義gagner sa vie en faisant toutes sortes de petites bosognes.選り好みせず些細な仕事で手間賃稼いで生活を立てる。二義arranger reparer tant bien que mal, de facon provisoireやっつけ仕事で結果が悪かろうと気にせずまとめる、直す。(辞書petit robert)。前向きの意味に用いられない。寄せ集めではなく「がらくた集め」「やっつけ仕事」が近い。「がらくた」は強すぎるので「寄せ集め」を本投稿では使う。

レヴィストロースは自身がどの意味でこの語を展開するか。数頁かけてこれを説明しているので、順に追うつもりであるが、より易しく理解するにはrobertの説明に拘泥してはならない。辞書はこの動詞を「行為、行動」と語っているが、レヴィストロースは「そうした行為を容認する、そのやり方しか方法がない」とする考え方、思考に「寄せ集め」があるとして用いている。

この思考が「野生の思考」であるし、頁が重なる中に具体科学、魔術との繋がりをも彼は指摘する。

>Une forme d’activite subsiste parmi nous qui, sur le plan technique, permet assez bien de concevoir ce que, sur le plan de speculation , peut etre une science que nous preferons appeler « premiere » plutot que primitive: c’est celle communement designee par le terme bricolage.<(30頁)

parmi nous quiのquiは直前のnousに掛からず主語のUne formeを受ける。quiのこの用い方は珍しい(普通は前にある語、le(la)の定冠詞を持つ名詞、ただしa qui、 pour quiなどでは不定冠詞をうけることも)。une science que...が続くが、queにつながる名詞は定冠詞を被せる(と習った)から、この組み合わせも同じく特殊。レヴィストロースは「とある、一種の」を強調したかった訳で、それらに文法とおりにle(la)を被せたら「今の、規範としての行動、科学」と受け止める解釈を避けてもらいたかったためと思う。これが動詞subsister(残している)の意味と重なり「かつての」モノとする効果を生み出す。

訳;私達にはとある行動の形態が今も残る。技術面においてそれは目立つし、思弁においてもある一種の「科学」を今も精神に孕んでいる。その科学を原始的と呼ぶは控え「原初」の科学としよう。その科学が「寄せあつめ」なる語に形容される「科学」なのだ。

1 寄せ集め思考は今の我々にも残る。

今も残るBricolage 作品(Facteur氏のお城)


>Dans son sens ancien, le verbe bricoler s’applique....(同)訳;元々この動詞はこのように使われていた....
これにつづいて幾例かを挙げている。ビリヤードの玉の残念な動き、馬術競技で馬がコースから外れる、狩り貧果などを挙げる。それらは>mouvement incident<予期できないが起こりうる(歓迎されない)事態が発生している。ここにも前向きではない意義が見つかる。

2 完成結果が予測できないまま進める。

>De nos jours, le bricoleur reste celui qui oeuvre de ses mains , en utilisant des moyens detournes par comparaison avec ceux de l’homme d’art<(同)

訳;今の時代にも「寄せ集め人」は歪曲した進め方手仕事に向かう人として残る。芸術家とはおおいに異なる。

手作業で寄せ集め。するとbricolageとは大衆芸、民芸なのか。

3 魔術との比較がある;
>le propre de la pensee mythique est de s’exprimer a l’aide d’un repertoire dont la composition est heteroclite et qui , bien q’etendu , reste tout de meme limite ; (同)
訳;魔術思考とは己の手持ち(の知識)を使って表現すると事にある。その知識の中身は雑多な構成となるから、その視野が広がっていようと制限された範囲に閉じこめられている。

元の意味の解説でincident(起こりうる不測事態)があると述べた。ここでは(作業、作品)の組み立て手段と技法に限定があるとしている。限定的かつ小規模な技術体制だから作業中に不測自体が起こる、何がまとまるか予測できないー否定的な作業形態と結果と読める。
そして>Elle(pensee mythique)apparait une sorte de bricolage intellectuel.魔術思考は寄せ集め思考の一形態である。

魔術とbricolageの相関を;
>on a souvent note le caractere mythopoetique du bricplage ...<寄せ集め作品の神話幻想的性格を人々は注目していたのだ。

Bricolageは人の心に今も残る、幾つかの神話幻想を実現しているe作品を挙げる。
villa du facteur Cheval (Cheval氏の個人製作)

上の拡大写真

Georges Meliesの映画 (映画初期の監督)

映画の一コマ、

Dickensの大いなる希望 (オムニバス作品)
Wemmick のお城 (実物は残っていない、スタイルは継承されている)

本稿のまとめ、
1 寄せ集め思考は今の我々にも残る。
2 完成結果が予測できないまま進める。
3 魔術との比較
続く

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