ドミナリア:トルステン・フォン・ウルサス

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トルステン・フォン・ウルサス(Torsten Von Ursus)カードセット「レジェンド」収録の伝説のクリーチャー・カードである。

2022年のカードセット「団結のドミナリア」において、「語り継がれる伝説」という特別枠でベナリアの建国者、トルステン(Torsten, Founder of Benalia)という新バージョンが登場した。初出以来実に28年振りの再カード化である。

追記(2022年8月23日):新バージョンのカード情報を追加した。またこの機会にトルステンに関連するカード2種類についても新たな節を設けて記した。
追記(2023年7月16日):再編集。アイキャッチ画像の変更、ベナリアの建国者、トルステン(Torsten, Founder of Benalia)の記述の情報追加、「さいごに」の節を新設など。

トルステン・フォン・ウルサスの解説

“How can you accuse me of evil? Though these deeds be unsavory, no one will argue: good shall follow from them.”
「どうして私を悪だと責められようか?こうした行いは道徳的に芳しくないものだが、善とは行いの結果によるものだ、それに異を唱える者はいまい。」
引用:トルステン・フォン・ウルサス(Torsten Von Ursus)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

トルステン・フォン・ウルサス(Torsten Von Ursus)

データベースGathererより引用

トルステン・フォン・ウルサス(Torsten Von Ursus)はドミナリア次元の屈指の大国ベナリア(Benalia)の開祖である。人間男性。AR36-37世紀頃の人物1

ドメインズ地方エローナ大陸北東のレンナ(Wrenna)出身で、レンナの都市ジェンゲス(Jenges)の伝説的騎士団に所属する偉大な戦士であった。騎士団を離れた後、ハールーン・ミノタウルスの下で哲学を収め、エローナ大陸を西へと横断したベンフォサ(Benfosa)の地に新国家ベナリアを築き上げた。(トルステンの生涯については次の項で詳述する。)

トルステンはベナリアの建国と発展において時折、残忍な戦術を駆使した。そうすることで、国家全体がトルステンの意志の強さと、彼の天性のリーダーとしての野蛮なカリスマに従うようになった。この野蛮なカリスマ指導者という性格付けは、カードのフレイバー・テキストを反映させたものだろう。



トルステン・フォン・ウルサスとベナリアの建国

トルステンの軌跡
出身国レンナのジェンゲスからハールーン山脈を経てベンフォサまで
現代ドミナリア地図より抜粋引用

トルステン・フォン・ウルサスの生涯とベナリアが建国されるまでの歴史の流れを解説する。

ジェンゲス騎士トルステンは、ある悪辣なる魔導師2がレンナの王座に就いた際に騎士団を離れ、レンナの南西へと旅立った。ハールーン山脈(Hurloon Mountains)の麓でしばらく過ごしていたが、ある時、捕縛されたハールーン・ミノタウルスから彼らについて学ぶ機会を得た。トルステンは、ミノタウルスが(当時考えられていたような)ただの野蛮な獣ではなくそれ以上の存在だと信じ、ミノタウルスの住まう恐ろしい山脈へと踏み入り、彼らの下で幾年か3ミノタウルス哲学を研究した。

その後、トルステンはハールーンを離れてさらに旅を続け、荒廃した都市ベンフォサ(Benfosa)に辿り着いた。トルステンは、ここベンフォサこそが修得した英知と社会哲学を活かせる土地であると悟り、人生を賭した仕事として理想国家の建設に打ち込むことを決意する。トルステンはベンフォサを「熱望(aspiration)」を意味する「ベナリア」に改名した。

ベンフォサはかつて栄華を誇り滅亡したシオールタン帝国(Sheoltun Empire)の首都であった。トルステンは手始めに偉大な馬文明4から土地の支配権を奪って、シオールタン帝国廃墟の住人を奮い立たせ新国家ベナリアの建設へと導いた。ベナリアの規模と力は瞬く間に拡大し、かつてのシオールタン帝国に匹敵するものとなった。

トルステン・フォン・ウルサスは大望をほとんど成し遂げ、72歳で人生の幕を閉じた。トルステンは伝説の「失われし布告(Lost Edict)」を遺し、7人の副官とそれぞれの一族にベナリアを託した。

以上がトルステン・フォン・ウルサスの生涯であり、AR4562年現在まで連綿と続く大国ベナリアの建国史である。

ベナリアの建国者、トルステン

ベナリアの建国者、トルステン(Torsten, Founder of Benalia)

ベナリアの建国者、トルステン(Torsten, Founder of Benalia)
データベースGathererより引用

ベナリアの建国者、トルステン(Torsten, Founder of Benalia)は、カードセット「団結のドミナリア」において「語り継がれる伝説5」という特別枠で収録された新バージョンのカード化である。

このトルステンは、遺志を託した7人の副官とその7氏族を強烈に意識したデザインでまとまっている。

まずカードのマナ総量『7』で、パワー/タフネスは『7/7』である。戦場に出た時の能力がライブラリーの上から『7枚』を見て、その中から好きな数のクリーチャーカードや土地を手札に加える。そして死亡誘発で、白の1/1兵士クリーチャー・トークンを『7体』生成する。

御覧のように『7』づくしである。特に死亡誘発能力は、トルステンの死後に7人の副官が遺志を継いだ様にそっくりではないか。

更にイラストの方に目を向けると、旗には7本の剣が並んで描かれている。トルステンの左腕から吊り下がった布飾りや、イラスト左下の建物の柱にも、7本の細長い列がデザインされている。ここにも『7』である。

イラストにはもう1点、注目すべき要素がある。それがステンドグラス風のデザインだ。トルステンの掲げた長剣、そして建物の柱にそれが確認できる。カードセット「ドミナリア」期以降のベナリアにとっては、ステンドグラス風デザインはベナリアを示す象徴になって定番化している。しかし、これはそれ以前のベナリアにはほぼ見られなかった特徴だった。トルステンの新デザインに際して、イラスト内に描き込まれたことで、建国の初めからステンドグラス風デザインが在ったことに設定が刷新されたことになる。

トルステン・フォン・ウルサスのクリーチャー・タイプ

ベナリアの建国者、トルステン(Torsten, Founder of Benalia)一部拡大図

2007年に大規模なクリーチャー・タイプの見直しが行われ、その際にトルステン・フォン・ウルサスのクリーチャー・タイプは「人間・兵士」となった。

しかし、ジェンゲス騎士団の偉大なる戦士という経歴を考慮するなら「兵士」でなく「騎士」がふさわしいようにも思えた。

更に15年後、リデザイン版、ベナリアの建国者、トルステン(Torsten, Founder of Benalia)が登場した。このカードでもクリーチャー・タイプが「人間・兵士」であり、リデザインしてもやはり「騎士」ではなかった。

こうなると、もし将来に「騎士」のトルステンがカード化する可能性があるとしたら、レンナを出奔する前の若きトルステンのカードを期待するしかないだろう。さてマイナー・キャラであった彼に、3度目のカード化のチャンスが巡ってくることはあるのだろうか?



トルステン・フォン・ウルサスのストーリー

トルステン・フォン・ウルサス本人の物語は、カードセット「ミラージュ」当時(1996年)の公式サイトの記事「Encyclopedia Dominia」において、語られたものである。トルステンの生涯やベナリアの建国史はほとんどこの記事に書かれている。(リンク1リンク2

それから20余年経ち、2018年発行の「The Art of Magic: The Gathering – Dominaria」でもトルステンについて触れられているが、内容は「Encyclopedia Dominia」に準じたものである。

小説作品にトルステン本人は登場していないものの彼にまつわる内容はいくつか確認できる。次の通りだ。

クレイトン・エマリィ!

クレイトン・エマリィの作品ではよくあることだが、登場人物が感嘆や罵りの場面や単に言葉の調子を揃えるために固有名詞を口にする。小説Shattered Chainsでは、「トルステンとラグナーとジャック・ル・ヴェールと10余りの戦神(Torsten and Ragnar and Jaques le Vert and a dozen gods of war)」の名が戦いの鬨の声として叫ばれている。ラグナーとジャック・ル・ヴェールもカードセット「レジェンド」に収録されている伝説のクリーチャー・カードである。彼らの名前がAR4074年のドメインズに伝わっているという事実以外に、これらの言葉に特に意味はない。

受け継がれる名前

短編集Rath and Storm収録の短編Gerrard’s Taleには、ベナリア人の「トルステン(Torsten)」が登場する。このトルステンは、当時ベナリアの武芸の達人であったジェラード・キャパシェンが教える生徒の1人であった。この少年は開祖の偉人トルステン・フォン・ウルサスにあやかって名付けられたのだろう。歴史の重みを感じる憎い演出だ。

トルステン・フォン・ウルサスの関連カード

ベナリア史

ベナリア史(History of Benalia)

ベナリア史(History of Benalia)
データベースGathererより引用

ベナリア史(History of Benalia)はカードセット「ドミナリア」収録のエンチャント・カードである。カード名通りにベナリアの歴史を象徴的に物語る英雄譚カードである。

カード名は英語で「History of Benalia」であるが、これはEncyclopedia Dominiaの同名の掌編History of Benaliaから取ったものであろう。この時に初めて、ベナリアの建国者トルステン、7人の副官と末裔の7氏族、建国から近代に至るまでのベナリアの歴史が語られたのだ。

カード・イラストを見ると、翼の意匠を凝らした兜を被った人物を中心が描かれている。これはベナリア建国者トルステンをモチーフとしたものだろう。彼の周りには、7つの剣、7つの満ち欠けする月、7つの搭のある都市が配置されている。

プロモカード版ベナリア史(一番左のカード)

プロモカード版ベナリア史(一番左のカード)
公式記事Streets of New Capenna: Magic Online Editionより引用

公式記事Streets of New Capenna: Magic Online Editionによると、2022年のカードセット「ニューカペナの街角」発売の際のMTG Onlineにおいて、新規イラストのプロモカードが登場した。

こちらのイラストでもトルステンと思われる翼の兜の男性が中心におり、頭上に7つの星、盾の装飾が7本の剣、が確認できる。

英雄の家宝

“A blade is just a tool. Its power comes from the hand that wields it.”
–Danitha
「刃はただの道具よ。それの力はそれを握る者から来るの。」
–ダニサ
引用:英雄の家宝(Hero’s Heirloom)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

英雄の家宝(Hero's Heirloom)

英雄の家宝(Hero’s Heirloom)
データベースGathererより引用

英雄の家宝(Hero’s Heirloom)カードセット「団結のドミナリア」収録のアーティファクト・カードである。

これはAR4562年現在まで伝わるベナリアの家宝たる剣のようだ。フレイバー・テキストの発言者は、キャパシェン家の新代表となったダニサ・キャパシェン(Danitha Capashen)である。

このカードのイラストで、家宝の剣を両手で支え持っているのはトルステン・フォン・ウルサスの像である。

イラストを担当したOvidio Cartagenaは、トルステン王の胸像だというアイデアのもとに、ベルニーニ(Bernini)の彫刻作品にインスパイアされて描いた、との旨を語っている(出典元)。

おまけ:ドミナリア近代のジェンゲス騎士団

最後におまけ。トルステンの出身地レンナと伝説の騎士団のその後について語って今回は終わりにする。

黒騎士(Black Knight)

黒騎士(Black Knight)
データベースGathererより引用

トルステン・フォン・ウルサスが所属したジェンゲスの伝説的騎士団は、後世のAR41世紀には「ジェンゲス黒騎士団(Black Knights of Jenges)」として知られている。ジェンゲス黒騎士団は適正な報酬を払う魔術師に仕える傭兵として活動していた。また、この時代のレンナは荒廃した国で腐敗の冷たい抱擁に屈しつつあった。

伝説の騎士団が傭兵隊に落ちぶれている。おそらくトルステンが離れた以降にこの国と騎士団は腐敗していったのであろう。

ちなみに、ドミナリア近代のジェンゲスとレンナの情報は小説Shattered Chainsと、ドメインズ地図付属カレンダーの解説で語られている。レンナとジェンゲスと騎士団の初出が小説Shattered Chainsなので、それより後に発表されたトルステンの生涯は小説の設定を後付けで拡張したものと思われる。



さいごに

ベナリアの建国者、トルステン(Torsten, Founder of Benalia)一部拡大図

本記事ではトルステン・フォン・ウルサス、すなわちドミナリア次元を代表する長い歴史を持つ大国ベナリアの建国者についてまとめた。2020年に最初に記事化してから何度も大なり小なりと手を加えて内容を更新している。

では、今回はここまで。

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  1. The Art of Magic: The Gathering – Dominariaによるとシオールタン帝国の衰退がAR3500年頃である。さらに小説Bloodlinesでは、AR3655年にはすでにトルステン没後の政治体制となっている。以上からの推定
  2. 原文は「a terrible mage」
  3. 原文は「for several years」なので3-5年程度か
  4. 原文は「the great horse Civilization」である。騎馬民族の文明だろうか?言及はこの語句だけで詳細は不明
  5. 原文は「Legends Retold」なので、本来は「新たな形で語り直された伝説」くらいの意味合い。「語り継がれる伝説」という和訳はかなり意味がずらされている。