野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

整った五弁の白い花で樹木ごと真っ白になる「スモモ」(20-024)

2020年03月28日 09時56分19秒 | 

整った五弁の白い花で樹木ごと真っ白になる「スモモ」。スモモの花がこれほど清楚できれいだとは思わなかった。「わが園の 李の花か 庭に散る はだれのいまだ 残りたるかも」(大伴家持)。はだれは「斑雪(はだれゆき)」の略である。たしかに散ると雪のようにみえる。俳句では夏の季語なので、花は登場しないのが寂しい。

(2020-03 東京都 神代植物公園) 

スモモ

スモモ(李、酢桃、学名:Prunus salicina)はバラ科サクラ属の落葉小高木。また、その果実のこと。

概要
スモモの果実はモモに比べて酸味が強いことが、和名の由来となっている。漢字では「李」とも書かれる。英語では"Asian plum","Japanese plum"などと呼ばれる(ただしウメも「プラム」と呼ばれることがある)。地域によっては、ハダンキョウあるいはハタンキョウ(巴旦杏)とも呼ばれるが、同じく巴旦杏と呼ばれるアーモンドとは別種である。古くから日本に伝わっており、和歌などにも詠まれる。農園で栽培される他、自生しているものもある。

19世紀にアメリカに渡ったスモモは育種家のルーサー・バーバンクの手により「ソルダム」、「サンタローザ」、「ビューティー」などの品種として改良され、再び日本に「プラム」として輸入された。それらを元に日本では「大石早生」、「月光」などに発展させていった。

特徴

スモモの花
花期は初春で白い花が咲く。花芽分化は7 - 8月頃。果実はスモモ系は6月下旬から8月中旬、プルーンの系統は9月頃収穫できる。果実は紅や黄色、果肉は淡黄色や紅色など品種によって異なる。代表的な品種としては「大石早生」、「ソルダム」、「サンタローザ」、「メスレー」、「太陽」、「ケルシー」など。比較的新しい品種では「紫峰」、「月光」、「貴陽」、「秋姫」、「いくみ」などがあり、これらの品種は従来種より糖度が高く、生食用に品種改良されている。葉が紅色のハリウッドは受粉樹に向く。スモモは自分の花粉では結実しにくい自家不和合性なのでほとんどの品種で受粉樹が必要である。日本での主産地は山梨県など。

桃とは異なる種で、同じバラ科サクラ属の梅、杏、桃の花粉を利用して人工授粉させることができる。長果枝は開花しても結実しにくいので、中短果枝および花束状短果枝を出させる剪定を冬季に行う。開花期に霜に当たると、不完全花となり結実しないため、開花時期に晩霜に遭わない地域が適する。成木なのに収量が少ないのは受粉樹が近くにない・受粉樹との相性が悪い・低温晩霜に当たったのが原因と考えられる。発芽する前に石灰硫黄合剤を散布して葉や果実が膨れ上がるふくろみ病を防ぐ。シンクイムシ・アブラムシ・カイガラムシ・イラガ等がつく。

2014年(平成22年)より、ウメ輪紋ウイルス(プラムポックスウイルス)の緊急防除の規制対象植物に指定され、指定地域からの種子、果実以外の持ち出しが禁止されている。

 

李 の例句 

しばらくは李と吾とまろびけり 岡井省二 鯨と犀
すもも甘し瞋りにとほくとほくゐて 上田五千石『天路』補遺
すもも祭十七八の巫女なりし 細見綾子
すもも食む午前の汗を流しきり 野澤節子 鳳蝶
たそがれを濃くすすももの香に立ちて(大国魂神社すもも祭三句) 細見綾子
なつかしき思ひに李青かりし 高野素十
むらむらと闇にみたるゝ李かな 正岡子規 李
一人づつまた一つづつ巴旦杏 古舘曹人 樹下石上
一休と笑ひたりけり巴旦杏 岡井省二 前後
七月や海の店にも李出て 森澄雄
丘の上に李あり愛の日の君も 金子兜太
八月の梅落ち李むらさきに 山口青邨
地いきれのはげしき日なりすもも祭 細見綾子
夏が深くて山に村村もゝすもも 高屋窓秋
夕立にふりまじりたる李かな 正岡子規 李
妻はいま小さき位牌巴旦杏 森澄雄
子を負へる子のみしなのの梨すもも 橋本多佳子
子鴉の母呼ぶ李月夜かな 内藤鳴雪
密教と李とインク壷の夜 岡井省二 鯨と犀
巴旦杏*もぐ庭にある八ケ嶽 木村蕪城 一位
巴旦杏かじり陶師の家に憩ふ 山口青邨
巴旦杏の影なす妻の若さ過ぐ 森澄雄
巴旦杏幼な古ごと皆似たり 水原秋櫻子 残鐘
巴旦杏水田平らな風送る 森澄雄
巴旦杏相鬩ぐ瞳がかなしけれ 加藤秋邨
巴旦杏祭の夏は来たりけり 阿波野青畝
巴旦杏落ちゐる道へ山下る 木村蕪城 一位
巴旦杏襁褓日和に蕾み初む 上田五千石『森林』補遺
広州に着きてすぐ買ふ巴旦杏 松崎鉄之介
店さきに幾日を経たる李哉 正岡子規 李
持ち重りするを知りつつすもも買ふ(大国魂神社すもも祭三句) 細見綾子
掌に李ひとうたがへばきりもなし 伊丹三樹彦
旅人にお愛宕さまの落李 上田五千石『琥珀』補遺
暑き日や買ひしすももの甘酸つぱ(大国魂神社すもも祭三句) 細見綾子
木のうれの紫にして李かな 右城暮石 句集外 昭和二年
李盛る見世のほこりの暑哉 万乎
李食ふ少年のいまわれが食ふ 森澄雄
溝ありて一と跳びするや桃すもも 岡井省二 鯛の鯛
熟れきつて裂け落つ李紫に 杉田久女
畑中に三輪の染屋の李かな 河東碧梧桐
病間や桃食ひながら李画く 正岡子規 桃の実
痩せ男野犬男に李のような妻 金子兜太
禿頭の悪童もいるすももの里 金子兜太
籠居のゆふべたのみし巴旦杏 岡井省二 五劫集
肉付きの種なほ吸ひて巴旦杏 鷹羽狩行
花火あげすもも祭を囃すなり 細見綾子
虫はみて一枝赤き李かな 正岡子規 李
虫喰ひすもも赤犬人をなつかしむ 細見綾子
血肉噛むかに巴旦杏甘く渋し 津田清子 礼拝
貴金属など持ちませぬ李噛む 三橋鷹女
賞与得てしばらく富みぬ巴旦杏 草間時彦 中年
赤いすもも青いすももと並べたる 細見綾子 牡丹
門川のほとばしり落ち李熟る 山口青邨
黒揚羽すもも祭を飛びまはる 細見綾子



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