みなさまコンバンワ。アッチパパです。
今日は、いつもと違い、小説です
ショート小説で、5分で読めて完結してますが、小説はいらん、という方は、どうぞスルーして下さいませ。
でもま、いつも通り、スピなお話ですよ
エブリスタ(オリジナル小説投稿サイト)で、アップしています、長編のエンターテイメントホラー
『センリツ ~女神の系譜~』
が、第一章を終えましたので、節目ということでアップしました。
かつて書いたものに加筆修正したものですが・・・。
かつてこれを書いた時は、仕事の休み時間で、1時間で書き上げました。
書きながら号泣していたので、(私役者タイプの物書きなので、登場人物になって毎回書いているのです。)休憩から帰ってきた同僚が目を真っ赤にしている姿を見て、当時の仲間はギョッとしたでしょう。
そんな、ハートフルわんこ物語です。
よければ暇つぶしに読んでいって下さいませ
それでは始まり~始まり~。
『わん!』
―――お父さん…ボクは悲しいよ……。
それは、何の変哲もない、ごく普通の日曜日だった。
春の日差しが柔らかい。庭にお母さんが植えた花たちが、色とりどりの色彩を放っている。それを目当てに、沢山の蝶々が飛んでいるけども、それを追いかけるほどボクももう子供じゃない。
ボクがここに来て、もうすぐ一年になる。もう少ししたら、ボクはお仕事のためにこの家を出なければいけない。目の見えない人たちの目になる”盲導犬”というのがボクのお仕事らしい。
この家のみんなと別れるのは少し寂しいけれど、ボクはそれに使命感の様なものを感じていて、だから、頑張る。 けれどまだ、もうしばらくは、ここでのんびりしててもいいみたい。
あっ、ボクの大好きなお母さんがやって来た。手にはボクのご飯の器を持っている。
お母さんがボクのご飯を山盛りにくれた。どうしたのかな、いつもより機嫌がいい。やさしく頭をなでて微笑んでくれた。 何か良いことあったのかな? お母さんの笑顔を見るとボクも嬉しい。
お母さんの機嫌がいい理由はすぐにわかった。いつもは着ないお出掛け用の服を着て、家の中に声をかけながら出てきたからだ。ああ、今日はあの日か…。
お母さんは年に数回、『くらしっくおんがく』のコンサートに出掛ける。それは大体夜に近くなってから始まるらしいのだけれど、その前に友達と待ち合わせてお昼ご飯を食べ、街の中を散歩してから会場に行くらしい。
おいしいお昼ご飯も散歩も羨ましいけれど、『くらしっくおんがく』って何だろう?それも、おいしいのかな?そうだったらボクも今度連れてってくれないかな?ボクお店でも静かに出来るのに―――。
お腹も一杯になったし、お散歩まで少しゴロゴロしよう。大事なボクの日課。食べ過ぎでお腹が痛くなったら台無しだからね。ゴロゴロして消化を促そう。
お散歩は、いつもはお兄ちゃんの役目。小学校に行く前に近所を一回り。
だけどお兄ちゃんとの散歩はつまらない。お兄ちゃんは勝手にズンズン行ってしまって、ボクに寄り道の時間を与えてくれない。 その点今日は日曜日だから、お父さんが当番だ。
うれしいな。お父さんはボクの行きたいところに好きなだけ行かせてくれる。だからお父さんとの散歩は大好き!
……あれ?だけどおかしいな?
いつもならそろそろリードを持ったお父さんが出てきてくれるはずなのに、今日は随分遅いな。
「―――おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ……――」
あれれ?赤ちゃんが泣いてる。叔母ちゃんどうしたのかな?
ああいけない。赤ちゃんを泣かせ続けると、今度はお婆ちゃんが怒って怒鳴るよ。
ボクは家族の中でお婆ちゃんが一番嫌い。だっていっつも怒ってるし、お父さんやお母さんをいじめる。
子供ができないお母さんをいじめて泣かして、お父さんもなじる。叔母ちゃんたちはもう二人も産んだって言って。
赤ちゃんができないのは仕方ないじゃないか。お父さんやお母さんが悪いんじゃないとボクは思う。
「おぎゃあ、おぎゃあ………」
…泣き声が止まった。叔母ちゃんがオッパイをあげてるのかな?
……いや、違うぞ。なんだろう、この胸騒ぎは……。ん……?何か臭う。
………?この臭いは……。 ……血の、臭いだ。
それもすごい沢山の…。
お家の中で何が起きてるの?何で誰の声もしないの?誰か、誰でもいいよ、いつもみたく笑ってよ。騒いでよ。お婆ちゃん、いつもみたく怒鳴ってよ。
あ……聞こえる。誰かが階段を駆け上ってる。この足音は…お兄ちゃんだ。
――ドタン!バタン!
……え?
「伯父ちゃん…やめて…殺さないで!」
え…?
「伯父ちゃん!」
伯父ちゃんって、お父さん…?
それっきり、お家の中から聞こえてくる物音は無くなった。まるで、誰も居ないよう…。
……ちがう、微かに声が聞こえるぞ…。お父さんだ…。お父さん、泣いてるの……?
「すまない…。みんなすまない…。ごめんな…」って言ってる。「俺もすぐにいくからな………。でも、その前に……」
お父さんの足音が聞こえる…。こちらに近づいてきている。
…今、ボクの目の前の硝子戸が開けられ、お父さんがボクのことを見つめてる。
ねえお父さん、みんなどうしたの?居るはずなのに、誰の声もしないんだ。誰の物音もしないんだ。
ねえお父さん、どうしてそんなに、血で、汚れてるの……?
お父さんが庭に下りて、ボクの前までやってきた。手には血の付いた包丁を持ってる。けど僕はそんなことより、お父さんの悲しそうな目が、気になった。
どうしたの?お父さん?何がそんなに悲しいの?何がお父さんを、そんなにしてしまったの……?
「…ごめんな、チビ。お前も、みんなのところに行こうな……。寂しくないように……。
……だって、人殺しの家族じゃあ、あまりに不憫だろう?」
……ちがうよお父さん。ボクは、人殺しでも、そうでなくても、みんなの家族だよ。お父さんが大好きだよ……。
お父さん……ボクは、……悲しいよ……。お父さん………。
こうしてボクは死んだ。大好きな人の手によって……。
きっと、お父さんは見えなくなちゃったんだ。きっと何も見えなくて、不安で、寂しくて、怖かったんだ。だからあんなことをした。
ボクがいるよ……。ボクがお父さんの目になる……。もう、寂しくないよ……大丈夫だよ……。
ボクの体はもう無いけど、いつもそばにいる。見えないときは、ボクがいつでも目になってあげる。 だってほら、目を上げてごらんよ。世界は、こんなに綺麗なんだよ。
お父さん、大好き。
終わり
いかがでしたでしょうか?エブリスタの方では、この後に付記させました、あとがきもあります。
よければそっちもお願いします
最後までお読みいただき、ありがとうございました