解説『機能訓練指導員養成テキスト』第2章 発達と老化の理解
こんにちは@hitokutokumeiです。機能訓練についての教科書「柔道整復師と機能訓練指導員ー機能訓練指導員養成テキスト」を解説・要約していきます。今回は第二回です。
第2章 発達と老化の理解
A 人間の成長と発達の基礎的理解
成長と発達は区別しないで使われる言葉ですが、改めて定義を定めています。
成長・・・時間経過や加齢に従って主に体の量的な増加による変化
発達・・・心身の形態や機能の変化
ハヴィガーストの発達課題
発達課題とはハヴィガーストが提唱した概念です。社会的に必要とされる習得するべき課題のことです。発達の程度で課題が変化していきますが、老年期のみを抜粋します。
老年期・・・肉体的な力、健康の衰退への適応、同年代の人との明るい親密な関係を結ぶこと、社会的・市民的義務の引き受け、肉体的に満足な生活を送るための準備、死の到来への準備と受容
エリクソンの発達段階説
エリクソンの発達段階説は心理・社会的側面から発達課題とそれを達成できなかった時の危機を設定しています。こちらも老年期のみ抜粋します。
老年期の発達課題・・・統合
課題の克服できなかった場合の危機・・・絶望
概要・・・人生を振り返り、自分が価値のある存在であったか否かを考える段階、死に思いをはせ、一生の成就を受け止めようとする
ハヴィガーストとエリクソンの発達課題について、老年期の共通点は自身の死に向き合うことです。“終活”という言葉もあるくらい、多くの高齢者は死について達観した考え方を持っています。親や配偶者の死を受け入れ、健康の程度にかかわらず次第に自分の死も受け入れていきます。心の発達の最終段階と言えるでしょう。
逆に課題を克服できなかった場合(自分の人生と死を受容できなかった場合)は絶望に心を支配されていしまいます。人生の後悔や死について不安と焦燥に苛まれてしまいます。周囲の人が課題を克服できるよう導いてあげる必要があります。
B 老年期の発達と成熟
老化と加齢の違いを定義しています。
老化・・・成長がピークに達した後の変化
加齢・・・全生涯にわたる変化
C 老化に伴う心と身体の変化と日常生活
サルコペニアとフレイル
サルコペニア・・・進行性及び全身性の骨格筋量及び骨格筋力の低下を特徴とする症候群
フレイル・・・高齢になって筋力や活力が衰えた段階。健康と病気の中間
高齢による筋力の衰え「サルコペニア」と呼ばれ、さらに生活機能が全般的に低下すると「フレイル」となる。
このサルコペニアとフレイルを予防することが必要で、具体的には習慣的な運動と栄養に富んだ食事の摂取、感染予防を図ることが求められています。
D エイジング理論
老化
老化は感覚、知能、記憶、人格のそれぞれに影響するが必ずしも全体的な変化が一度に生じるわけではなく、感覚や知能、記憶には低下や衰えが見られるが、人格の基本的な部分は保たれるなど出現に時間的相違があります。
老化の心理的影響
初老期や高齢期のうつ病(老年期うつ病)は必ずしも精神的要因で生じるわけではなく脳の疾患やパーキンソン病、糖尿病や薬物などで生じることも多く、環境変化が要因となって老年期うつ病を起こします。
高齢者のうつ病患者に対応するとき大切なことは受容的な態度で接し、励まさない、体のケアや援助を行うため症状の変化や薬の副作用を観察する、自殺の予防に努めるなどです。
高齢者に生じやすい薬の副作用に抗コリン作用があります。抗うつ剤の働きによりアセチルコリンがシナプス後部の受容体と結合を阻害する作用を抗コリン作用と呼びます。便秘や口の渇きが副作用として現れ、緑内障の患者の場合は眼圧の上昇で症状を悪化させる懸念があります。また、前立腺肥大症の患者の場合は尿が出にくくなる副作用が見られます。
E 高齢者と健康
健康寿命
健康寿命は自立して生活できる期間のことです。健康寿命は平均寿命より10年前後短くなっており、健康寿命を延ばしてこの差を埋めることが目標です。
高齢者に見られる疾患の理解
高齢者は複数の疾患を合併している場合が多く症状は非定型的です。訴えが複雑であれば、いつ、どこで、何によってと整理して丁寧に聞き取る必要があります。応答が機敏でない高齢者に対しても、介護者は忍耐強く受容的に接するとともに、小さな変化を見逃さず機敏に対応することが重要です。
腹痛
高齢者の腹痛は腸閉塞(イレウス)、消化性潰瘍(胃・十二指腸)大腸腫瘍に留意する。
便通
高齢者のほとんどは便秘の問題を抱えています。便秘の定義は団体、国などで見解が異なります。テキストの医学的判断基準では「①排便が1週間に2回以下である、②排便時の1/4以上に硬便、③残便感、④難渋する排便のうちの2つ以上が見られる。」とされています。
誤嚥と窒息・誤嚥性肺炎
高齢者は食事中の誤嚥と窒息に注意しなければなりません。肉や魚は一口大に小さくしたり、野菜は柔らかく炊くなど食材・調理法を工夫すればリスクを減らすことができます。
骨粗鬆症
骨粗鬆症の方の介護では、車いすへの移乗や体位変換などの際に急激な力を加えると骨折を起こす可能性が高くなります。
骨折
高齢者に頻発する骨折は、大腿骨頚部骨折、脊椎圧迫骨折、橈骨遠位端部骨折、上腕骨頚部骨折などがあります。特に脊椎圧迫骨折は頻発します。
運動器疾患
関節リウマチは女性に多い関節の痛みや腫れ、変形、可動域制限が見られる疾患で、生活上では安静、関節に負荷をかけない、冷やさないことが重要です。
変形性関節症は関節の骨や軟骨がすり減ることで生じる有痛性の疾患です。変形性膝関節症はその代表です。適度な運動と負荷のかからない姿勢が大事です。
肩関節周囲炎は五十肩などと呼ばれるものの総称です。痛み始めた急性期は安静が第一ですが、慢性期に移行したら適度な運動が必要になります。また、肩を冷やさないことも重要です。
腰部脊柱管狭窄症は腰椎部の脊柱管が狭窄され脊髄など神経組織が圧迫される病態のことです。間欠性跛行や下肢のマヒ、排尿排便障害が見られます。混同されやすい椎間板ヘルニアは脊髄ではなく、脊髄から枝分かれする脊髄神経を圧迫する病態です。MRIで見比べれば腰部脊柱管狭窄症は脊柱管全体が圧迫され、椎間板ヘルニアでは左右どちらか片側の脊髄神経が押し潰される像が写ります。
皮膚疾患
白癬は水虫、タムシ、しらくも等のことで、白癬菌感染によって起こります。
カンジダ症は白いカスが乳房下や脇の下、おむつの当たる部位に現れる病気です。
どちらも皮膚の清潔と抗真菌薬により治療します。
生活習慣病
高齢者には生活習慣病が多くみられる。
脳血管障害では脳梗塞とクモ膜下出血の割合が高く寝たきりになりやすい。片麻痺、失語症などの後遺症が残ることもあります。
高血圧症は高齢者の1/3が罹患していると言われており、収縮期高血圧症がほとんどです。適度な運動、食事制限など降圧剤内服を用います。
がん(悪性新生物)については高齢者は様々ながんが見られ、胃がん、肝臓がん、肺がん等が代表です。
糖尿病は高齢者では2型がほとんどであり、高血圧症と同じく生活改善と適度な運動、薬物療法を用います。
脂質異常症はかつて高脂血症と呼ばれた病気で、動脈硬化を招き、心筋梗塞や、脳梗塞を起こしやすくします。
その他
白内障はほとんどの高齢者に見られる水晶体の混濁です。加齢が原因で、かすんだり二重に見えたりします。
緑内障は自覚症状がほとんどなく視神経が障害され視野が狭くなる病気です。
老人性難聴は耳が遠くなることで、初期は高音域が障害され、次第に全周波数領域で低下します。
失禁、特に切迫性尿失禁が高齢者では多く見られ、尿意が起こると我慢できなくなります。
パーキンソン病は振戦、固縮、無動、姿勢反射障害が4大徴候。
前期高齢者(65~74歳)に1か月で2㎏以上の体重減少があれば悪性腫瘍、うつ病、慢性疾患の悪化を疑いましょう。
不眠の原因は様々ですが高齢者ではしばしば見られうつ病、神経症、生活障害の徴候が背景にあるようです。
末梢神経障害は加齢による痺れや手足の機能障害で非常に頻度が高いです。
薬物療法のポイント
座薬は体温で溶けるように作られているので冷蔵庫に保管する。
錠剤やカプセル剤は刺激性や味、においなどを調整しているので原則として原型を壊さないで服用させます。
点眼薬は共同で使用すると点眼薬を介して感染症を引き起こす可能性があるので複数人には使用してはいけません。
概説
- 老年期では迫りくる自身の死と向き合う必要があるとハヴィガーストとエリクソンは説いている。
- サルコペニアは高齢者の筋量・筋力低下。フレイルは健康と病気の中間段階。高齢になるにつれサルコペニアからフレイルへと移っていく。
- 高齢者は様々な疾患を患っている。症状が非定型的なため、知見を深め利用者をよく観察する必要がある。
解説『機能訓練指導員養成テキスト』第1章 柔道整復師と介護保険
こんにちは@hitokutokumeiです。今回から南江堂が出版している機能訓練についての教科書「柔道整復師と機能訓練指導員ー機能訓練指導員養成テキスト」を解説・要約していきます。
タイトルに“柔道整復師”とありますが機能訓練指導員をされている理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、看護師のすべての方々におすすめできる一冊です。ぜひ購入して目を通してみてください。
出版経緯
そもそもこのテキストは2016年3月に柔道整復師を養成する専門学校・大学に向けて発売されました。柔道整復師は介護保険のなかで機能訓練指導員として位置付けられているため、その仕事内容とそれに伴う知識を学ぶために発刊されました。
今年になって初めてこのテキストで勉強した学生が卒業しました。それ以前に学校を卒業した柔道整復師の皆さんはこんな教科書があるとは知らなかったと思います。私も最近初めて知り、先日購入したばかりです。
内容としては介護保険の仕組みや高齢者の心身への理解、具体的な機能訓練のプログラムが書かれています。
公式へのリンクを張っておきましたので興味がありましたら一度ご覧ください。
第1章 柔道整復師と介護保険
A 介護保険の目的と理念
ここでは介護保険法の目的について解説しています。介護保険法第1条と第4条1項を引き合い出しています。
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
介護保険法第1条
第1条では高齢者の自立した生活を支援することが制度創設の主目的であると書かれています。ここから、ただ高齢者に楽をさせるためではなく、生涯にわたって尊厳を持った個人として生きてもらうことが介護保険法の理念だと解釈できます。
また、介護は旧来ではその高齢者の家族が担うものでしたが、それを「国民の共同連帯」=「社会」が制度を設けて解決していくことも記されています。
国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。
介護保険法第4条1項
第4条1項では国民は自分自身の介護予防への取り組みは義務であると定めています。高齢者になる前から健康に気を使うこと、受けれるサービスは活用することで介護の負担を軽減しましょうという考え方です。
B 介護保険制度における柔道整復師
ケアマネージャーの基礎資格
柔道整復師は介護支援専門員(ケアマネージャー)を取得するための基礎資格です。資格取得後で業務に通算5年以上かつ900日以上従事することで受験資格が得られます。
機能訓練指導員
機能訓練指導員は機能訓練を通して高齢者の介護予防と自立支援を担う職種です。機能訓練指導員は高齢者の身体機能低下を防止または改善することと、生活機能の維持や向上を図らなければなりません。
概説
- 介護保険法第1条は高齢者の自立した生活を支援することが制度創設の主目的だと記している。
- 介護保険法第4条1項は国民の介護予防への取り組みは義務であると定めている。
- 介護保険における柔道整復師の役割は「ケアマネージャーの基礎資格」と「機能訓練指導員」の2つである。
高齢者の窃盗症?介護施設が頭を悩ます利用者の窃盗癖
こんにちは@hitokutokumeiです。高齢者による犯罪が増えています。後述の調査によれば高齢者の犯罪の中で窃盗が65%を占めているようです。今回は通所介護施設の利用者による窃盗行為について経験と対策を記事にしました。
高齢者の窃盗行為
私が介護施設で働き始めてショックだったことの一つに、利用者による窃盗行為があります。
窃盗癖のある利用者はコソコソと施設の備品や消耗品を盗むのです。いつもリハビリやレクリエーションで仲良く触れ合っているのに裏切られた気持ちで悲しくなります。この窃盗行為は露見して注意されても治りません。
なぜ窃盗行為に及ぶのか、施設側はどう対応したらよいのかまとめました。
どんな人が窃盗するのか
私が今まで見てきた窃盗癖のある利用者は4人です。その内男性は1人、女性は3人です。一見女性が多いと感じますが、私が勤めてきたデイサービスは利用者全体の女性比率が高かったので犯行に男女による差ははっきりしません。
窃盗癖利用者の共通点は身勝手で自己中心的な性格であること、年齢は80歳以上くらいです。ちなみに3人は90歳越えのヨボヨボの高齢者でした。
身勝手で自己中心的な性格というと悪口のようになってしまいますが、実際性格のためにトラブルメーカーとなっていました。気に入ったリハビリ器具を占有して他の利用者を困らせたり、気に食わないことがあれば声を荒げることもあります。
他の共通点はあまりありません。要介護度も低い人から高い人までいましたし、家族と同居の人もいれば独居、老人ホーム入居者と住居環境も様々でした。貧乏で生活保護の人もいれば比較的お金持ちの人もいました。
どんな物を盗むのか
一番盗まれるものは何といっても「ティッシュ」です。しかもこれには盗み方に共通点があります。箱ごと盗まず1枚1枚抜き取るのです。時間をかけてバッグやポケットに隠します。
これに続いてトイレットペーパー、おしり拭き、スティックシュガー、コップ、コースター、ボールペンなどがよく盗難されます。
これらの共通点はどれも施設の備品、消耗品であること、普段自由に使ってもらっている物ということ、安価な物であることなどです。
必ずしも必要な物を盗むというわけではなく、単に手につきやすいから盗むようです。以前同僚の介護士がある利用者のティッシュ窃盗を発見し問いただしたところ「こんなに沢山ティッシュはいらないけど、欲しいから持って帰る!」と支離滅裂なことを言い放っていました。
窃盗のタイプ
私は介護施設で発生する高齢者の窃盗には2つのタイプがあると推測しています。
一つは他人の物を自分の物と誤認しているタイプです。認知症(主にアルツハイマー型)による妄想で自分の物と思い込んでいます。このタイプは盗むという意識はありません。誰がいようと関係なく堂々と盗みます。当人を注意して返却するよう説得すれば「私の物だ!」逆上します。
もう一つは何らかの原因で自己抑制が効かなくなったタイプ。いわゆる窃盗症・クレプトマニアと呼ばれるのはこのタイプで、見張っていなければ常に窃盗を行います。ホントに四六時中です。ずっとティッシュをバッグにしまい込む作業を続けます。このタイプの比率が多いと思います。
このタイプのポイントは施設の備品はあくまで他人のものであるという意識はあります。注意すればその場では盗んだことを認めるケースが多いです。
どちらも認知症が関係していると考えられますがよくわかっていません。
生活に困窮“していない”窃盗
高齢者の窃盗について少し古いですがニュース記事と法務省の調査を見つけました。
増え続ける「高齢者の犯罪・窃盗・万引き」の犯罪心理:犯罪の理由と防犯対策(碓井真史) - 個人 - Yahoo!ニュース
この中で犯行動機についていくつかが触れられていました。
窃盗事犯者の犯行動機・原因について,主なもの三つまでを調査したところ,高齢窃盗事犯者において,男子では,「生活困窮」による者が74人(66.1%),次いで「対象物の所有」目的の者が41人(36.6%),「空腹」による者が21人(18.8%)であった。食べるのに困って飲食物を盗む者が多いことが分かるが,一方で,「遊興費充当」の者も17人(15.2%)いた。女子では,「対象物の所有」の者が17人(63.0%)であるのに次いで,「お金を使うのがもったいない。」などといった「節約」による者が16人(59.3%)であり,「生活困窮」による者は6人(22.2%)と男子に比べると顕著に少なかった。
第二部 特集「高齢犯罪者の実態と処遇」 - 法務省
介護施設で起きる窃盗は上記の内「対象物の所有」と考えられます。先ほど述べた自己抑制が効かなくなったタイプがこれです。
私の出会った窃盗癖利用者の中には貧乏な方もいましたが、生活困窮するほど追い詰められていませんでした。そもそも金銭的に困窮するほどならデイサービスを利用できませんし、自分で使いきれないほどのティッシュや複数個のコースターを持って帰る意味がありません。
施設側の対策
窃盗癖は治りません。施設側は盗ませない環境作りを考えなければなりません。
盗みそうな物を窃盗癖利用者の周りに置かない
盗まれやすい物は手の届かない場所へ移しましょう。利用者の入れない場所や背の高い棚の上などがいいと思います。
盗まれてもわかるように備品に施設名や番号を書いておく
あらかじめ盗まれやすい物にしるしをつけておきましょう。盗んだものを発見したときに証拠になります。もししるしをつけた物を持ち帰られても、利用者の家族から連絡が来る可能性があります。
普段使う物を窃盗癖利用者の私物に置き換える
ティッシュやコップを施設側が提供せず、私物を持参するか施設側が預かるように促しましょう。
リハビリやレクリエーションに途切れなく参加させ盗む時間を与えない
人の目があれば窃盗しづらくなります。運動や他の利用者との交流を図り、気持ちを窃盗以外に向けさせましょう。
おわりに
ある程度規模のある通所介護施設ならどこでも一人や二人窃盗癖のある利用者がいる、あるいはいたと思います。
最も怖いのは利用者同士のトラブルです。もしも施設の備品に飽き足らず他の利用者の物を盗むようになれば大きな問題となるでしょう。窃盗癖があることを知りながらも対策を怠ったと責任問題になりかねません。
私が転職する前、利用者の所有物を別の利用者が盗んだことがあったそうです。ちなみにその後かなり揉めて被害者は利用を中止し、盗んだ側の利用者は厚顔にも利用を続けています。普通逆だろと思いますし、正直胸糞悪いです。
未然にトラブルを避けるため対策を講じましょう。
リハビリ型デイサービスで働く機能訓練指導員の一日のスケジュール
こんにちは@hitokutokumeiです。今回はリハビリ型デイサービスで働く機能訓練指導員の一日の流れを紹介します。これから機能訓練指導員になる方や転職を考えている方の参考になれば幸いです。
機能訓練指導員の一日
まず普段の私の勤退と業務スケジュールを例としてお見せします。
8:50 出勤
9:00〜9:45
- 業務開始。利用者のバイタルチェックを行う。
- 体調に問題がなければリハビリ器具かお風呂に誘導する。
9:45〜10:30
- 集団での体操運動を指導する。
10:30〜11:00
- 個別の機能訓練を行う。
11:00〜11:30
- リハビリ器具を使った機能訓練を行う。
11:30〜12:00
- 利用者の昼食の準備をする。
12:00〜13:00 休憩時間
13:00〜15:00
- 個別の機能訓練を行う。
15:00〜16:00
- 利用者の居宅訪問を行い個別機能訓練計画書の説明を行う。
16:00〜16:30
- 施設の掃除と片付けを行う。
16:30〜18:00
- 個別機能訓練計画書の作成、モニタリングなど書類仕事を行う。
- 業務終了。
18:10 退勤
次は時系列で業務内容を詳しく紹介していきます。
9:00〜9:45 バイタルチェック 利用者の誘導
まず最初の業務は利用者のバイタルチェックです。
バイタルチェックとは体調管理のことで、体温・血圧・脈拍の測定と本人から体調の聞き取りを行います。測定結果は専用のチェックシートに記入するのが一般的だと思います。最近はタブレットで簡単に記録を付けることができるアプリもあるようなので事業所により異なるでしょう。
バイタルチェックで異常な数値が出たり、体調不良がわかった場合は利用者の状態により適宜対応します。
高熱やインフルエンザでは帰宅させるのが一般的ですが、家族が家にいなかったり、独居の場合は事業所内のベッドでしばらく様子を見ることもあります。
デイサービスは看護師も常勤です。バイタルチェックは他の介護スタッフと共同で行いますが医療の勉強をしている機能訓練指導員と看護師が特に責任をもってチェックしています。
バイタルに問題がなければ、それぞれのリハビリ器具かお風呂に誘導します。
リハビリ器具はパワーリハビリマシン、トレッドミル(ランニングマシーン)、エアロバイク、 低周波治療器、マッサージ機等があり、介護スタッフの補助を受け行っていきます。
また、要介護認定を受けて自宅での入浴が困難な利用者は、事業所内のお風呂で介護スタッフの介助の下入浴してもらいます。
9:45〜10:30 体操運動を指導
5~9人程度の小グループで体操を行います。前に出てお手本となり、利用者に同じ動きを真似してもらいます。
体操の主目的は有酸素運動です。
有酸素運動とは軽い負荷の運動を連続で行うものを指します。有酸素運動を行うことにより心肺機能の向上と代謝の上昇がみられ、体力の維持増進を図ります。
私の職場では椅子に座りながらできる全身運動を30~40分程度行うのですが、そのとき用いるリハビリ器具がレッドコードです。詳しい説明は別記事にて紹介しています。
wellnessscience.hatenablog.com
10:30〜11:00 & 13:00〜15:00 個別の機能訓練
機能訓練指導員のメインの仕事と言える個別のリハビリの時間です。午前と午後の二つに分けているのは、どちらかのみ利用されている方に対応するためです。午前が短いのは前述の体操指導があるためです。
集団体操やリハビリ機器のみではうまく機能訓練が行えない方にマンツーマンでリハビリを行います。
私の場合は脳卒中片麻痺の利用者が多いです。リハビリ内容はスクワットからPNFまで様々です。平行棒での歩行練習や拘縮予防のストレッチを行ったり、セラバンドを使用して筋をピンポイントで鍛えるメニューもあります。
11:30〜12:00 利用者の昼食の準備
半日型ではない場合、デイサービスでは昼食を用意します。大抵は外部委託したお弁当になります。スタッフと共同で準備します。配達されたお弁当を受け取り、配膳します。
15:00〜16:00 利用者の居宅訪問 個別機能訓練計画書の説明
要介護認定された利用者宅へ3か月に1回以上居宅訪問を行う必要があります。利用者の送迎と一緒に訪問したり、近所であれば自転車で訪問します。
独居でも家族と同居どちらでもトラブルを避けるため、あらかじめ訪問のアポイントを取ります。
個別機能訓練計画書とは生活機能の維持又は向上を目指し機能訓練を実施するための計画を書面に起こしたものです。利用者個人のニーズに合わせたリハビリのプランということです。
個別機能訓練加算という加算があり、この加算を受けるためには個別機能訓練加算計画書を作成する必要があります。
作成した計画書の内容を訪問の際に利用者に説明し、同委のサインをもらいます。
16:00〜16:30 掃除と片付け
他スタッフと一緒に事業所内の掃除を行います。掃除機かけ、モップかけ、トイレ掃除、食器洗い、戸締り等です。利用者の排泄の失敗で汚れたトイレは特に注意して消毒殺菌を行います。
16:30〜18:00 個別機能訓練計画書の作成 書類仕事
個別機能訓練計画書は先ほど説明した通りです。
”計画書”とは言いますが、実際はA4一枚のコピー用紙です。だいたいどこの事業所にもA4一枚にまとまるテンプレートがあるはずです。
まず機能訓練指導員がメインとなり他のスタッフと機能訓練のプランを考えます。そこから長期目標と短期目標を決めテンプレートに入力していきます。他に書き込む内容は生年月日や既往歴等です。
個別機能訓練計画書の作成方法はこちらで詳しく解説しています。
wellnessscience.hatenablog.com
他の書類仕事、雑務もこなします。ケアマネージャーに利用者の状況を伝えるモニタリング報告書を記入したり、体力測定の結果をまとめたりします。
まとめ
これが大まかな一日の流れになります。実際は突発的なトラブルでこのスケジュール通りに進まないことも往々にしてありますが概ねこんな感じです。
介護や介助以外にも様々な業務を一日でこなしているんだと知っていただければ嬉しいです。
世界で一番殺された実験動物の話
こんにちは@hitokutokumeiです。現代医療の根幹に静かに横たわる重いテーマ「動物実験」について私の恩師の言葉を思い出しながら書いていきます。
分子生物学と動物実験
私は大学時代にある教授の研究を手伝っていました。教授は分子生物学が専門で生命の遺伝について研究している所謂ザ・研究者です。
柔道整復師を目指す学科に在籍していた私が畑違いのゴリゴリのサイエンスに幸運にもかかわることができたのはちょっとした縁があったおかげなのですが、今回は関係ないのでその話は割愛します。
分子生物学の研究には動物実験が必要不可欠です。生き物から採取した臓器の細胞、血液、尿その他もろもろから遺伝子の抽出・比較、分子量の計測、発育の異常等を調べます。
教授はマウス(ハツカネズミ)を使った遺伝の研究をメインにしており、何匹ものマウスを飼育していました。もちろん、飼育しているということは、それらのマウスを将来的に殺す必要があるということです。
マウスの場合、ヒトの腎生検のように生かしながら臓器の細胞を取り出すようなことはしません。ましてや血液など実験に必要な量を抜き取れば死にます(数ミリリットルの単位です)。
一番殺した生き物
私はそんな未知の領域だった化学の世界に案外すんなりと順応していきました。ある時教授にこんな質問をしました。
「今まで何匹のマウスを殺したんですか?」純粋な興味からでした。
「何千匹かもな」教授はさらっと答えました。
「じゃあマウスに呪われますね」私はよくこんな軽口をたたくタイプでした。
「いや、呪われるとしたらマウスじゃないな、もっと殺した生き物がいる。なんだと思う?」
「え、わかんないっす」浅はかにも素で答えてしまいました。
「大腸菌だ。数え切れないほど殺したから、俺はきっと大腸菌に呪い殺される」教授はニヤッと笑いました。
人類に貢献する寒天培地の大腸菌
大腸菌といえば食中毒。ばい菌、雑菌、汚いもの。当時の私は大腸菌とはそういうイメージでした。しかし悪役扱いされる大腸菌はその実、人類に多大な貢献をしています。
実験室のシャーレ、その寒天培地に大腸菌は数千とか何万匹でコロニーを作ります。大腸菌は様々な研究で使用されるモデル生物の代表。モデル生物とは分子生物学において実験動物のことを指します。
大腸菌にヒト型インスリンを作らせる遺伝子を導入して、インスリンを生産することに利用されている。他にも、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)や組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などの生産も、同様の方法で行われている。
大腸菌は様々な遺伝子組み換えの技術により薬剤の生成の材料にされたり、特定の遺伝子のみを増やす手段に広く利用されるのです。
教授の研究も例外ではなく、大腸菌の恩恵にあずかっていました。
菌は一つの生命だ
教授からは「オイオイ忘れてないか?菌だって生き物だぞ」と心の声が聞こえるようでした。軽い気持ちで聞いた質問が存外深い話になっていました。
生命は平等で優劣はない。ならマウスも大腸菌もヒトも等しく生命だ。理屈ではわかるけど納得できない揺さぶられる感覚。ああ、これが本質なんだと直感しました。
自分の中に「生命」の定義に対して偏見をもっていたことに気が付きました。菌は生命の中でも「無視してもいい矮小なものだ」と勝手に決めつけていたのです。
世の中の動物実験に対するバッシングの根源にあるのはこれだ!
「生命」に偏見を持ってるからだ!
盲点とはまさにこのことか!
人間のように思えるなら生命か?
マウスは餌を食べたり、寝たり、キューキュー可愛いく鳴いたりします。
人間もご飯を食べたり、寝たり、言葉を話します。
では大腸菌はどうでしょうか。食事の様子は想像できませんし、寝ないでしょうし、発声器官はありません。
私たちは他の生物に対して無意識に自分との共通点を見つけることで愛着が湧き、生命だと感じるのです。共通点が見られないものは無意識に生命だと考えられないのです。
多くの人の頭の中では菌なんて石ころとか無機物の方に近いカテゴリーに位置しているでしょう。大腸菌にはヒトと同じく遺伝子があるにもかかわらず。
生命の定義
動物愛護を掲げる方々は実験動物のマウスやラットやイヌのために活動していますが、大腸菌や酵母やアオカビを守れ、解放しろとは叫ばないでしょう。だって菌だし、そこらじゅうで繁殖してるし。ネズミもそこらじゅうで繁殖してますがね。
彼らにとって大腸菌たちは「守るべき生命」にはカテゴライズされていないのです。
私もそうだったように結局のところみんな自分の物差しで生命を好き勝手に定義しているんです。だから意見が対立するのは当然の摂理です。両者とも自分の物差ししか持ってないから相容れない。
おわりに
私が学生時代の研究で得た大切なことは殺生に正面から向き合うことでした。
実験の過程で命の尊さを深く学び、貴重な発見がありました。
人は食事的な意味でも環境破壊的な意味でも他の生命を脅かさなければ生きていけません。もちろん医療もモデル生物たちの命が糧となっているから今があるです。
全ての生き物に畏敬の念を抱くことこそが本当の動物愛護だと思います。
“動物”愛護と呼ぶから偏見が助長されるのかもしれませんね。生命愛護や生物愛護と言えばいいのに。
機能訓練士と機能訓練指導員の違いとは?厚生労働省の資料から調べてみた
こんにちは@hitokutokumeiです。今回は紛らわしい名前の件を記事にしました。
機能訓練士と機能訓練指導員
通所介護(デイサービス)を運営するためには常勤職員として機能訓練を行うスタッフが必須です。この機能訓練を行うスタッフのことを「機能訓練士」と言ったり「機能訓練指導員」と呼んだりします。
先日、同僚の介護士さんから「機能訓練士と機能訓練指導員は違うものなの?」と質問がありました。この2つには違いはあるのでしょうか?
結論から申し上げますと、違いはありません。なるために必要な資格や仕事内容、待遇も変わりありません。機能訓練士も機能訓練指導員も同じ職員のことを指します。なぜか2つの名称があるのです。
正式名称は機能訓練指導員
こちらのように厚生労働省の資料などから正式名称は「機能訓練指導員」であることは間違いありません。機能訓練士は誤った名称です。
厚生労働省のウェブサイトで機能訓練士と機能訓練指導員の2つをそれぞれ検索を行った結果、機能訓練指導員はヒットしますが、機能訓練士では資料は見つからず、一文字違いの「視能訓練士」が検索結果に表示されます。
私のブログ名も「機能訓練指導員の柔道整復師」とそのままです。
なぜ機能訓練士と呼ぶようになったのか
なぜ誤った名称である機能訓練士が一部に広まったのか、はっきりとした由来はわかりませんでした。想像になりますが機能訓練指導員を機能訓練士と周囲が間違えやすい状況があったからだと考えられます。
考察① 他の○○士と混同した
機能訓練指導員になるために必要な資格は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師そして一定の実務経験を有する鍼師灸師のいずれかです。
この中でも理学療法士、作業療法士、言語聴覚士はリハビリテーションにおいてメジャーな3職になります。当然、介護の現場でも機能訓練指導員としてたくさん働いています。
そこで周囲の職員が資格の名前と職種の名前を混同して「理学療法士だから機能訓練士」のように誤解したのかもしれません。
考察② 職種や資格の名称は「○○士」という先入観
介護関連の資格は介護士や介護福祉士、社会福祉士のように○○士となります。
先ほどの考察でも列記しましたが、職種や資格の名前は○○士(または○○師)となることがほとんどです。つまり名前の最後は「士」で終わるという思い込みがあったせいで機能訓練指導員を機能訓練士だと勘違いしてしまったのかもしれません。
機能訓練士と呼んで不都合はあるのか?
私の働いている施設では機能訓練士で通ってるよ!機能訓練指導員とは言わない!
という方もいらっしゃるかもしれません。普段の事業所内での会話などで機能訓練士と呼んでも、それで通じるなら不都合はないでしょう。
しかし、外部での紹介や求人募集、ケアマネージャーに提出するモニタリングなどの文章等に機能訓練士と呼んでしまったり、書いてしまうと恥をかいてしまう可能性があります。
正式名称は「機能訓練指導員」であるということは頭の片隅に覚えておくといいと思います。
柔道整復師と鍼灸師のダブルライセンスって実際どうなの?費用対効果から考えてみた
こんにちは@hitokutokumeiです。今回は国家資格を二つ持つことについて持論を記事にしました。
ダブルライセンス
若手の柔道整復師の間ではお決まりのやりとりがあります。それは「鍼灸師は取らんの?」です。これは資格で自分のキャリアに幅を持たせるかどうかの質問です。二つの資格を持つこと、とりわけ整骨院業界で柔道整復師と鍼灸師の二つの資格を持つことをダブルライセンスと言います。鍼灸師とあ摩マ指師や、PTとOTのダブルライセンスもあります。
柔道整復師の資格を持っていると整骨院を開業することができます。鍼灸師も同じく鍼灸院を開業することができます。両方の資格があれば両方合わせて鍼灸整骨院にできます。
整骨院一本でやっていくよりも、鍼灸師を取得して鍼灸整骨院を目指したほうが良いと言われることがあります。理由としては、柔道整復師で学ぶ徒手療法に合わせて鍼と灸を扱えるようになることで治療の幅が広がるからというものです。また、「整骨院は溢れているから鍼灸治療もできるようにして差別化を図る」というものもあります。
資格を取得する前の学生時代から柔道整復師と鍼灸師のダブルライセンスの話題はよく出ていました。同じ「東洋医療系」ということで相性が良いから、ということのようです。
同じ「東洋系」とひとくくりにされるけど
柔道整復術は日本での整形外科的な治療法として生まれましたし、鍼灸も中国から輸入された治療法です。同じく東洋で誕生した治療法なので東洋系と呼べるかもしれません。
しかし2つの治療法はベースとなっている理論は全く違います。現在の柔道整復術は西洋医学と完全に融合しています。例えば、肩関節脱臼を治す徒手整復法としてカリキュラムで教えられるものは西洋の整形外科医が考案した整復法と同じです。
逆に鍼灸は東洋独自のものです。経穴、いわゆるツボと呼ばれる人間の体表面の特定部位へのアプローチをメインの理論としています。
現在は経穴ではなく神経や筋肉への刺激を主とした考え方もありますが鍼と灸を扱う治療法は西洋医学にはありません。ヨーロッパにも針で体に穴をあけ血を抜く「瀉血(しゃけつ)」というものがありましたが、針を使うのはあくまで血を抜くための手段でしかありませんでした。
二つの治療法は生まれこそ東洋でしたが時代に合わせて変化し続けており、両者のメリットをいいとこどりできることもあれば方向性がかみ合わないこともあります。
二つの方向性
そもそも柔道整復術は応急処置の医療です。骨折・脱臼の整復固定と打撲・捻挫・挫傷に対する処置技術を本来の生業とします。
鍼灸は外傷に限定せず幅広い疾患に対応するとされています。むしろ慢性疾患の治療や自律神経の調整作用など柔道整復師では対応できない症状に使えます。
こうなると二つの資格がある方が
急性期:柔道整復
慢性期:鍼灸
と使い分けができるようになります。これが治療の幅が広がるというダブルライセンス肯定論の軸です。一人の患者を最初から最後まで面倒を見ることができるのはダブルライセンスのみだと言えます。治療家として患者を治したい、良くしたいと考えているなら資格は多い方に越したことはないですからね。
実際の現場では
ここまでは理想の話。実際の現場ではどうでしょうか?
現在の整骨院で骨折・脱臼を扱うことはほぼありません。捻挫等は軽症のものがほとんどです。整形外科が増え、救急医療体制の整備が進んだため本来の業務である応急処置を行うことは少なくなっています。じゃあ大多数の整骨院はどうしているかというと肩こりや腰痛を肩・腰の捻挫等として処理し、マッサージを応急処置ということにして保険請求を行っています。違法ですが患者は安いもみほぐし感覚で整骨院に何度も通うことができるため常態化しています。
鍼灸治療も一部保険請求を行えますが医師の同意が必要となります。ほとんどの医師は鍼灸治療に同意しません。同意すれば医師が「私では治せません」と言っているようなものだからです。よって鍼灸治療は全額自費となるケースがほとんどです。これは整骨院に通っている層とミスマッチを起こしています。
安いもみほぐしとして来ている患者は一回数千円する鍼灸治療を拒みます。鍼が怖いとかもっともらしいこと言いますが、単にお金をかけたくないだけです。鍼灸治療が一回数千円なら数百円のマッサージを何回できるだろう?と考えています。本気で自分の体の痛みを治したいならば鍼灸治療に挑戦してみることは悪い判断ではないはずなのにです。
私は鍼灸整骨院で勤務したことがありますが、急性期から慢性期と患者を診ていく流れで柔道整復術→鍼灸治療となった例は数えるほどしか見ていません。
施術所は増えまくっている、施術者も増えまくっている
柔道整復と鍼灸を両方できることは素晴らしいことですが、差別化が図れるわけではなくなりつつあります。養成する学校は大抵柔道整復師と鍼灸師の両方を開校しています。そして経営的な思惑により学校側も学生にダブルライセンスを勧めます。「柔道整復師コースと鍼灸師コースの両方に進学すると学費100万円免除!」と宣伝していたりします。その成果もあり、昔は希少だったダブルライセンスの人間も増えています。
柔道整復師、鍼灸師は更新の必要がない資格で定年もありません。年々合格者数がそのまま資格保持者の数に加算され、数が減ることはありません。同業者で飽和状態です。
理論がかみ合わない
柔道整復と鍼灸の治療理論がかみ合わないことが起こります。例えば柔道整復では損傷した筋肉に対して安静にするべきだと考え、鍼灸では鍼刺激を加えるべきだ考える場合などはどちらかの理論を捨てなければなりません。これはどちらが最善か施術者自身で考えなければなないのです。
鍼灸は日本独自の進化を続けてきましたがベースとなっているのは中医学です。中医学には五臓六腑の考え方があります。これは○○という経穴を鍼刺激すると××という臓器がよくなる、といったものです。しかしこの古典的な考え方で治療を施す鍼灸師は減りつつあります。現在の医療の理論とかみ合わないためトリガーポイントの理論を組み合わせたりします。やはり理論がかみ合わず、片方の理論を捨てつつあるのです。
西洋医学と東洋医学のダブルスタンダードの折ありをどうつけるかがとても難しいポイトンです。さらに今では骨盤・姿勢矯正や最新の徒手療法やらの理論が混在している混沌とした状態になっています。
費用対効果から考えよう
柔道整復師と鍼灸師を取得するためにはそれぞれ最短で3年ずつ合計6年必要です。どちらも学費が400万円前後かかりますので2倍の約800万円。多少免除されたとしても700万円近く必要になります。それで給与にどれだけ反映されるでしょうか。多めに見積もって月給5万円アップとします。雇われている場合400万円の学費の元を取り返すには
400÷5=80 80ヶ月必要、つまり6年半以上必要になります。
ちなみに私がいた鍼灸整骨院では月給3万円アップでした。この場合は
400÷3=133.333... 約133ヶ月つまり11年以上かかるのです!
もしも給料を上げるためにダブルライセンスを目指すならそれは間違いです。学校に通うよりその分働いて分院長に出世した方が独立のための勉強になるし給料も上がるはずです。
どんなセラピストを目指すのかにかかっている
私の知人に専門学校の柔道整復師コースを卒業したものの肝心の国家試験を落としてしまい、国試浪人となってしまった人がいます。そして彼は学校側の勧めに乗せられるままに鍼灸師コースにも入学してしましいました。ここまでなら割とよくある話なのですが、彼は一味違っていました。なんで鍼灸師を取ることにしたの?と聞いたところ「学校の先生に両方取った方がいいって言われたから・・・」と答えました。あまりの主体性のない理由をはっきり言うのでその場にいた全員が凍り付きました。
彼はそんな宙ぶらりんな状態で整骨院で働きつつ、柔整師、鍼灸師の勉強を続けていました。そして1年たったので今年の試験はどうだった?と聞いたら驚いたことに「そもそも今年は試験を受けてない」と答えたのです!受験しなかった理由ははぐらかされて答えてもらえませんでしたが、生半可な覚悟では中途半端な結果になると悟りました。
治療法は日々進化しています。追いきれないくらいの情報から最善の選択肢を選び取らなければなりません。柔道整復師、鍼灸師の皆さんは勉強会やセミナー、手技の反復練習、高価な最新機器の導入とその使用法の研究等々学校を卒業してからも勉強の日々だと思います。その中でも一芸に秀でてやっとやっていけるという厳しい状況で、どのようなセラピストを目指すかにかかっていると思います。
ダブルライセンスではやれることが増えます。でも業界内では柔道整復師免許と鍼灸師免許の片方だけでも試せることは無数にあります。数百万円のお金と何年にもなる時間をかける必要があることなのかは個人の自由な選択です。将来独立開業を目指すならお金と時間はとても貴重です。開業費用になったかもしれない資金で学校に通うのか、経営の勉強をできたかもしれない時間を学校で過ごすのか。
お金は取り返すのに時間がかかります。時間は取り返せません。後悔のない決断をされることを願っています。
結論はこれです。
どのようなセラピストを目指すか、その目標にダブルライセンスは必須なのかどうか。
自分の地元に鍼灸整骨院を構える!そんな目標があるならば二つの資格を取るべきです。自己実現のためです。何事にも代えられません。
私は介護分野で働く柔道整復師です。介護には制度上鍼灸は使えません。デイサービスや老人ホームに所属しながら鍼灸施術を施してもボランティアになってしまいます。これからも介護の業界にいる予定なので私の目標にダブルライセンスはありません。
5年間テレビのない生活を続けて気づいた5つのメリット
家にテレビがありません
私は一人暮らしを始めるタイミングでテレビなし生活を始めました。始めた、と言っても単に買わなかっただけのことです。この春で6年目になりましたが不便に感じていません。
不便に感じないのは元々テレビのある実家で暮らしていた時もニュース番組しか見ない人間だったのもあるのでしょう。テレビなし生活で気をつけることはネットで信頼できるニュースサイトを毎日チェックすることです。これを怠らなければ社会生活で特に問題はありません。
メリット
偏りなく多くの情報を得られる
ネットでニュースを読むようになると情報が偏っていくから危険だと指摘する人がたまにいますが、問題にならないと断言できます。
「テレビの情報が偏ってない」という根拠はありません。テレビ局により報道の姿勢が違うわけですから「偏ってない情報なんてない」わけです。
そもそもネットでニュース配信している主要メディアの大本は新聞社と放送局です。元々の情報源は新聞テレビと同じなわけです。
ニュースを素早く収集できるようになる
「私はテレビを見ません」と言うと多くの人から「最近の話題についていけないんじゃない?」と聞かれますがむしろ逆です。テレビは一つのニュースに対して数分かけて放送し、ヘッドラインニュースは進展がなくても何度も放映しますが、ニュースサイトなら数十秒で1日のニュースの概略を把握することができます。スマホで十分というやつですね。
NHK NEWS WEBや時事ドットコムあたりは良質な情報を得ることができます。芸能人のどうでもいい発言やゴシップ、占いのような必要ない情報を排除して重要な情報を素早く得ることができます。
NHKの受信料を払わなくていい
「ウチ、テレビ無いんで…」
本当にないので集金の方には帰ってもらってます。上記の通り日頃からNHKにはネットを介してお世話になっておりますが一銭も払っていません。
部屋が広くなる
テレビを置かないだけで部屋のスペースを有効活用できます。テレビを置かないことで必然的に邪魔な配線やHDDレコーダーもなくなります。私はゲームや映画の視聴はPCのディスプレイに一元化しています。
時間を有効活用できる
テレビを見ていた時間を趣味、勉強、仕事に回せるので有意義です。なんとなくテレビをつける、ということもなくなるので惰性でテレビを見ている人がテレビなし生活を始めたら余剰時間の多さに驚くと思います。
デメリット
テレビ好きの人と話が合わなくなる
唯一のデメリットです。友達が流行りのギャグを披露して周りは爆笑、自分だけポカーン…ということがまれにあります。学生なら阻害感を受けてしまうかもしれませんね。
少し古い話ですが、私はブルゾンちえみの持ちネタ「地球上に男は何人いると思ってんの?35億。」を知らず、友人が真似しているのを見て急に何言ってんだコイツって思ってました。
また、仕事で出会った人がテレビ好きだった場合、話が続きません。あの番組面白いよ〜と言われても見れませんからね。
最後に
テレビを見なくなって感じたテレビを見る人とのギャップは「テレビを見ている人の方が情報を知らない」という点です。テレビは一つの"主要なニュース"を何日も繰り返し放送します。政治家の汚職・失言を何日もかけて叩き、芸能人の犯罪が明るみに出たらその芸能人を追い回し、災害が起きれば災害関連の情報をずーっと流します。その間に起こった"主要ではないニュース"は軽く扱われます。そして"主要ではないニュース"は"重要なニュース"の事もあります。私たちに必要なのは誰かが決めた"主要なニュース"ではなく"重要なニュース"のはずです。
テレビでニュースを見ると時間あたりの情報量が圧倒的に少なくなります。その点ネットでニュースを見る方がむしろ素早く偏りなく情報を手に入れることができます。
ネットでニュースを見る際に気を付けなければいけないことは、やはり発信元メディアの信頼性です。スポーツ新聞系や週刊誌の類がソースとなっているものばかりでは偏った情報しか得られないでしょう。
手取り17万円の新卒が一人暮らしで1年間に100万円貯金した秘訣
勝手に100万円貯まってた
この4月から社会人2年目に突入しました。1年間働いていたら勝手に100万円が貯まっていたので記事にしました。
先に結論を述べてしまいますが、無駄遣いしない、節約する。
これのみです。特別な何かはありません。
節約法について
大学時代が貧乏生活だったことから節約が体に浸み込んでいまして、日頃の消費活動全般に気を使っています。当時は安いもやしと鶏むね肉をほぼ毎日食べてました(笑)
元々友達と遊びに出かけたり、旅行、車のようなお金のかかる趣味がないこともあり、質素な生活を続けていました。趣味と言ったらネットとゲームくらい。
社会人になってもその生活リズムが変わらず、これまで通り節約していたら勝手に貯金が貯まっていたというわけです。
計算してみる
大卒の初任給は約20万円で、そこから保険料や所得税が引かれて大体17万円が手取りとなります。私もご多分に漏れずほぼ同じ手取りとなりました。
100万円を12か月かけて貯めるには
1000000÷12=83333.333…となり、
一か月に8万3334円貯金すれば達成できます。
手取りから貯金額を引いてみましょう。
170000-83334=86666 つまり
8万6666円で家賃食費光熱費ネット携帯代交際費その他すべてやりくりする必要があります。
私の一か月の出費を記載します。
家賃:5万
食費:1万2000円
消耗品代:1000円
光熱費:4500円
ネット代:1500円
携帯代:8000円
交際費(友達との飲み代):5000円
雑費:3000円
トータル:8万5000円!8万6666円内に収まりました!
一つずつポイントを説明していきます。
家賃
そのままです。5万円。
食費
食費1万2000円は少なすぎだろ!と思われるかもしれません。これは私の食生活が少し特殊だからです。
人の健康を預かる職業をしているので大きな声では言えないのですが、私は昼夕の一日二食生活です。朝ごはんを体が受け付けないんですよね。
朝は一杯40円の野菜ジュースのみ。昼はカップ麺や総菜パンで200円程度。夜も自炊して節約しています。間食はしません。外食は月1~2回くらい。
週末に一週間分の買い物をするのですが、3000円程度になりますね。
ただ、たまに実家から野菜とかお米を送ってもらえるので、すべての食事を1万2000円でまかなっているわけではないのはちょっとズルいかもしれませんね。
消耗品代
1000円。洗剤、ティッシュペーパーのような何か月かに一回新しいものを購入するものですね。
光熱費
4500円。整骨院勤務時代は激務でほとんど家におらず光熱費が上がることはなかったですね。
夏は扇風機、冬はどうしても耐えられそうになかったのでエアコンも我慢せず使ってました。1年の平均で算出してます。
ネット代
1500円。できる限り割引のあるプランを探しました。後々1万数千円のキャッシュバックをもらえたので実際はもっと少ない額です。
携帯代
8000円。唯一の悔しい点で、痛い出費です。某社の利用料高いよ~
でも契約見直すのもめんどくさくてそのままにしてます。
交際費
5000円。月に1回程度友達と飲みに行くときにかかる費用です。
雑費
3000円。散髪代とゲーム代、こまごました出費です。散髪は2か月に一回。
ゲームは就職してから1,2本しか買ってないです。毎月のものはFF14の利用料金くらいです。
おわりに
いかがでしたでしょうか?これから貯金を始める方の参考になれば幸いです。
お菓子やジュース、お酒、煙草のような嗜好品はほぼ買いませんしでしたし、服もあまり新調しませんでした。
基本的に無駄な出費はしない。これのみです。
きつい職場は辞めよう!ブラック整骨院から転職に成功しました
思い切って辞めるべき
整骨院・接骨院に勤務されている柔道整復師のみなさん、仕事が辛くて辞めようと思ったことはありませんか。ブラックな職場環境で心身ともに擦り切れていませんか。
私も入社して半年で「もう無理!」と音を上げました。体が悲鳴を上げてのリタイアでしたが、結果的に正解の選択肢を選んでいたと今なら言えます。
超ブラック職場環境
今、整骨院は全く儲かりません。世間には治療院が溢れ、少ないパイを取り合っています。現在なんらかの施術所に勤務されている方なら痛いほどわかると思います。どんなに治療や経営の勉強をしてもなかなか売り上げが良くなりません。
ない袖は振れぬというやつで、儲からないから従業員の時間も給料も犠牲にしている。そしてそれが常態化しています。
- 拘束時間が長い
- 給料が安い
- ボーナスがない
- 有給休暇がない
- 時間外労働当たり前
- 残業代が出ない
- 先輩や経営者からのパワハラ
- 長時間の無駄な勉強会
- ワガママな患者からの横暴
- 違法な保険請求
学校を卒業してすぐ働き始めてこの現実にぶち当たったとき「この業界は特殊だからこれが普通なんだ」と無理やり自分を納得させていました。しかし、今の労働環境では私含め勤務柔整師の限界がきていると思います。
柔道整復師のみなさん、転職活動始めましょう。
資格を活用するなら転職先は介護福祉施設がオススメ
結論から申し上げますと、オススメの転職先は「デイサービス」です。私もデイサービスで働いています。
デイサービスとは高齢者向けの介護福祉施設の一つで、その中でも日帰りで施設に通うタイプになります。レクリエーションや機能訓練、食事、入浴などを受けられる介護サービスです。
なぜ、柔道整復師の転職先にデイサービスがいいかというと、資格を有効に使えるからです。デイサービスを運営するためには人員の配置基準に従う必要があります。その要件の中に「機能訓練指導員」という職種があり、これは柔道整復師などセラピスト系の国家資格を持つ人しかなれません。
具体的には看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれかを取得した人か、実務経験のある鍼灸師しかなれません。裏を返せば介護福祉士資格を持っていても、長年勤務したベテランの介護士でも機能訓練指導員になることはできません。
看護師や理学療法士は病院やクリニックに就職したがりますのでデイサービスは機能訓練指導員不足です。つまり、機能訓練指導員に転職しやすい環境にあります。
整骨院の患者の多くは高齢者だと思います。日頃の業務で高齢者と接している柔整師は介護施設に移っても間違いなくやっていけます。
私の転職話
私も初めは早朝出勤&深夜退勤のきつい整骨院で頑張って働いていました。
入社して4ヶ月ほどたったお盆の日、私は体調を崩し酷い風邪をひきます。一日だけ休み、早く働けという職場からのプレッシャーを感じ体調が万全でないまま働き続けました。それから熱は下がったものの咳は残り、毎日下痢をするようになります。その後症状は治らず、元々体が丈夫な方ではなかった私は3ヶ月後ドロップアウトします。
経営者に系列の介護部門に異動させてほしいと伝えたところ、現在の職場であるデイサービスに来ることができました。
自分からしっかりと転職活動をしない受け身の転職体験なので参考にはならないかもしれませんが、この件がなければ機能訓練指導員という仕事を知らなかったと思います。
転職でワークライフバランス超改善
転職したことでストレスもなくなったせいか体の不調もなくなり、今はイキイキと仕事ができています。
私は元々のPCの扱いと人前で運動を指導することに自信があり、それらが仕事にうまく合致したと感じています。PCを使った事務仕事が素早くこなせましたし、体操運動の指導も堂々と行うことができました。それらは同僚や管理者に評価してもらいやすいポイントでした。
朝9時から夕方6時までのマトモな就業時間、マトモな賃金、マトモな同僚に恵まれ、整骨院時代に夢に見た職場環境がそろっていて大変満足しています。まぁ、整骨院の勤務体制が異常なだけなんですがね。
時間に余裕があるため、自発的に業務について振り返って改善点を考えることが増えました。もちろん夜は趣味に没頭できる時間を確保できています。本当に仕事を変えてよかったと思います。
転職で気を付けるポイントと仕事内容
デイサービスに転職するにあたって注意するべきポイントと具体的な仕事内容は別記事にまとめていますのでぜひご覧ください。
求人の見方や事業所の選び方についてはこちら↓
wellnessscience.hatenablog.com
仕事内容についてはこちら↓
wellnessscience.hatenablog.com
それでは最後に、柔整師のみなさま本当にお体ご自愛下さい。
個別機能訓練計画書の書き方
個別機能訓練計画書とは
機能訓練指導員の重要な事務仕事が個別機能訓練計画書の作成です。個別機能訓練計画書とは生活機能の維持又は向上を目指し機能訓練を実施するための計画を書面に起こしたものです。利用者個人のニーズに合わせたリハビリのプランということです。
個別機能訓練計画書の書き方
厚生労働省が配布しているひな形を使用して記入方を見ていきます。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000080901.pdf
厚生労働省 ひな形 6ページ目
基本情報
作成日
- 初回の場合は利用開始日と同じとなります。
- 継続の場合は前回作成した個別機能訓練計画書の作成日から3か月後の日数です。
前回作成日
- 前回作成した個別機能訓練計画書の作成日です。
計画作成者
- 機能訓練指導員の氏名を書きます。
氏名・性別・生年月日・介護認定
- 利用者の情報を記入します。
- 介護認定には要支援1~2、要介護1~5のいずれかか申請中と記入する。
管理者・看護・介護・機能訓練・相談員
- それぞれのスタッフの印鑑を押印するスペースです。
本人の希望
- アセスメントで聞き取った利用者本人の考え・思いを記入する。
- 「自立した生活を送ること」や「外に出て体を動かすこと」などが多いです。
家族の希望
- 同じくアセスメントで聞き取った利用者家族の考え・思いを記入する。
- 独居など場合は空欄となる。
- 同伴されておらず家族の希望を聞き取れなかった場合は担当のケアマネージャーに連絡する場合もあります。
障害老人の日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf
厚生労働省 こちらを参考に1つ選ぶ。
- 正常 J1 J2 A1 A2 B1 B2 C1 C2 のいずれかにチェックを入れる。
- 生活に苦労していない場合は正常。
- C1とC2はいわゆる寝たきり。
認知症老人の日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/topics/2013/02/dl/tp0215-11-11d.pdf
厚生労働省 こちらを参考に1つ選ぶ。
- 正常 Ⅰ Ⅱa Ⅱb Ⅲa Ⅲb Ⅳ M のいずれかにチェックを入れる。
- 認知症ではない場合は正常。
- ローマ数字が増えるほど重度の認知症となる。
- しばしば本人や家族が認知症であることを認めていない場合があり、そのときは記入しないか、そもそもこの記入欄を削除しておく。
病名、合併症
運動時のリスク
- 血圧の高低や体力、骨粗鬆症による易骨折性、転倒リスクなどを記入する。
生活課題
- 転倒や歩行が遅いこと、段差につまずくなど利用者本人が気にしている点を記入する。
- アセスメントを取るなかで機能訓練指導員が気が付いた生活の改善点も記入する。
在宅環境
- 生活課題に関連する在宅環境の課題を記入する。
- 手すりや段差の有無、介護用ベッド、自助具を使用などを記入する。
個別機能訓練加算Ⅰ
身体機能の向上を目指すことを中心に目標・プログラムを考える。
長期目標
- リハビリを行う上での長いスパンでの目標。3か月後達成を目指す。
- 利用者の希望と機能訓練指導員の相談のもと決定する。
- 足が不自由で閉じこもり気味であれば、手すりでつたい歩きできるようになる、など。
短期目標
- リハビリを行う上での短いスパンでの目標。1か月後達成を目指す。
- 同じく利用者の希望と機能訓練指導員の相談のもと決定する。
- 足が不自由で閉じこもり気味であれば、下肢の筋力を向上すること、など。
プログラム内容・留意点・頻度・時間・主な実施者・プログラム立案者
- 具体的なリハビリプログラムを記入する。
- プログラム内容にはパワーリハビリや体操などをどのような意図のもと実施しているか記入する。
- 留意点はそれぞれのプログラムによる転倒リスクや血圧の上昇の可能性など注意点を書き込む。
- 頻度はプログラムを何回行うか記入する。体操なら1日1回、マシントレーニングであれば10回を3セットなど。
- 時間はプログラムの実施時間を10:00~10:30のように記入する。
- 主な実施者とプログラム立案者には機能訓練指導員や介護職員の名前を記入する。
個別機能訓練計画書Ⅱ
生活機能の維持・向上を図るために目標・プログラムを考える。
長期目標
- リハビリを行う上での長いスパンでの目標。3か月後達成を目指す。
- 利用者の希望と機能訓練指導員の相談のもと決定する。
- 足が不自由で閉じこもり気味であれば、一人で外出して買い物をできるようになること、など。
短期目標
- リハビリを行う上での短いスパンでの目標。1か月後達成を目指す。
- 利用者の希望と機能訓練指導員の相談のもと決定する。
- 足が不自由で閉じこもり気味であれば、家の二階に上るため段差昇降ができること、など。
プログラム内容・留意点・頻度・時間・主な実施者・プログラム立案者
- 具体的なリハビリプログラムを記入する。
- プログラム内容には個別の機能訓練をどのような意図のもと実施しているか記入する。
- 「買い物に行けるようになるために、屋外歩行を練習する」など。
-
主な実施者は機能訓練指導員である必要がある。
-
留意点・頻度・時間・プログラム立案者は前記と同じ。
下段
特記事項
- 書ききれていない利用者の情報を記入する。
- 「認知症により徘徊に注意する」「怒りやすく暴力行為を行う可能性がある」「入院により一時的に機能訓練を中止」など。
プログラム実施後の変化(総括)
- 作成3か月後に利用者のリハビリの成果を記入する。
本人氏名・家族氏名
- ここまで作成した個別機能訓練計画書を利用者本人と家族に説明した後、同意のサインを書いてもらう欄。
介護支援専門員/事業所
- 担当ケアマネージャーの名前欄。
- コピーを送る。
事業名・住所・郵便番号・事業所NO.・電話番号・管理者・説明者
- 事業所の情報をあらかじめ記入しておく。
心当たりのない借金返済を催促する手紙が届いた話
前の住人宛の督促状
身に覚えのない借金返済を迫る手紙が届きました。宛先の住所は間違いなく私の居宅なんですが、宛名が違う。前にこの部屋に住んでいた住人のようでした。
手紙の見た目は公共料金やクレジットカードの手紙とそっくりなペリペリめくるハガキタイプ。差出人を見ると○○○○債権管理回収株式会社と書いてある。
嫌な予感がしたのでペリペリせず、会社名でググるとローンや料金の滞納をした人に取り立てをする会社だと判明。
こえーよ!
すぐ督促状に書いてあった番号に電話して手紙を止めるよう手続きをしました。電話に出たのはいたって普通の女性オペレーター。聞かれた内容は宛名の名前と印字されているバーコードの番号のみ。そしてもし可能ならば、督促状の余白に「住居なし」と書いてポストに投函して欲しいとお願いされました。
このとき私の個人情報は何一つ要求されませんでした。名前や住所も言ってません。通話時間は約2分。超短い。
フィクションの影響で返済を迫る手紙って「金返せバカヤロー!」みたいなものだと思ってたので、意外とあっさりした見た目で間違えて開封してしまいそうでした。
今回学んだのは、本物の督促状はどんなものか。債権回収会社というものがあり、どんな業務をしているかということ。この件からしばらくたちますが全く音沙汰ありませんし、借金取りが来ることもありませんでした。
ちなみにこれを放置しておくと借金が返済されないので(本人に届かないから当たり前)裁判が起こされ、その書状も私の家のポストに入れらるらしい。早めに解決できてよかった。
転職や副業で機能訓練指導員として働き始める前に気を付ける7つのポイント
はじめに
- これから機能訓練指導員に転職しようと考えている方
- 国家資格を活かし、収入アップのために副業としてデイサービスで働くつもりの方
- 新たな経験・キャリアのために介護福祉施設で働くことに興味がある方
などの方に伝えたいことを記事にしました。
自分と職場がうまくマッチしているかどうか、自分のスキルと求められている仕事がしっかり当てはまるかを事前に確認することが大事です。実際に事業所に足を運ばなくても求人から読み取れることがあります。それらの注意点をメインに解説します。
そもそも機能訓練指導員とは
特別養護老人ホーム、デイサービスの事業所数は年々増加しており、それに比例して配置義務のある機能訓練指導員も増えています。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師そして一定の実務経験を有するはり師きゅう師のいずれかの資格を持つ人が機能訓練指導員として働くことができます。主な仕事内容は利用者のリハビリと機能訓練計画書の作成。それ以外は他の介護職と同じくトイレ介助や集団で体操運動も行います。
もっと詳しく仕事内容が知りたい方はこちらをどうぞ↓
wellnessscience.hatenablog.com
1.求められている資格は何か
「機能訓練指導員」で求人を調べていても自分が取得した資格と合わないことがほとんどだと思います。これは、事業所ごとに提供しているサービスや利用者の層が違うからです。求められている仕事に合った資格保持者を募集しています。
例えば「応募資格:理学療法士」ならPT流のリハビリ知識を求められています。介護度が高かったり、高度の麻痺があったり、欠損により肢体不自由のような課題がある利用者が多い可能性があります。
逆に「柔道整復師・あん摩マッサージ師 募集!」みたいな求人なら利用者へのマッサージ施術を求めらていると想像できます。おそらく利用者の層は介護度が比較的低く、腰痛や膝の痛みのような慢性症状に困っているような方が多いでしょう。
「看護師・OT・PT・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格をお持ちの方」のようにバラバラの資格を並べている場合は注意が必要です。事業所の方向性が定まっていません。この募集の仕方で「配置義務があるからしかたなく募集してる」という意図が見えますね。
求人は応募資格を複数併記している事業所より一つに絞って募集している方がマッチするはずです。
2.老人ホームかデイサービスか
老人ホームは介護度の高い人向けの住宅です。介護度が高い人は多くの障害を抱えていて90歳近い高齢であったりします。
デイサービスは日帰りの介護施設で利用者の介護度は比較的低めです。介護度の低い人は70歳~80歳代前半の病気を持ちながらも自立した生活を送っている方が多いです。
老人ホームとデイサービスの大きな違いに夜勤があります。夜勤があるかどうかは働きやすさに天と地ほど違いがでます。機能訓練指導員も他の介護職員と同じく夜勤をする可能性あります。
どんな事業所でもリハビリするだけとはいきません。老人ホームはもちろん、お泊りデイサービスを謳う事業所も夜勤がありますので注意しましょう。ワークライフバランスを考えるなら夜勤のないデイサービスがおすすめです。
3.正規(正社員)か非正規(バイト・パート)か
副業として機能訓練指導員になる場合は必然的に非正規となります。しかも本業と被らないよう限られた日数、短い時間の就業となります。理解のある事業所を探しましょう。
リハビリやレクリエーション以外の業務も機能訓練指導員の大事な仕事ですが、副業の場合は機能訓練計画書の作成や居宅訪問まで手が回らない可能性があります。それらの仕事を任せられる自分以外の機能訓練指導員が既に在籍していている事業所でないと残業や過重労働になる危険性があります。
4.○○特化型か
それぞれの事業所はリハビリ特化型デイサービス(機能訓練特化型デイサービスとも)、認知症特化型デイサービス、生活介護型デイサービスのようにニーズに合わせて細分化しています。珍しいですがカジノのような設備をそろえたデイサービスがニュースに取り上げられたこともあります。気になる事業所には、自分が関わりたい分野とマッチしているか見学等するべきです。
5.オープニングスタッフか
求人には大抵「しっかり仕事内容を教えます!」と謳い文句が書いてあったりしますがこれを全面的に信用してはいけません。
特に新店舗のオープニングスタッフ募集ならばなおさらです。自分の教育担当や上司もめちゃくちゃ忙しい時期に新人の指導なんてなかなかできません。わからないことを質問しても「任せるから、適当にやっといて!」と返されるのがオチでしょう。
経験者であれば別ですが、オープニングスタッフの募集は特別な事情がない限り避けた方が無難です。
6.運転免許が必要か
機能訓練指導員も運転手の代わりに利用者の送迎を行います。運転免許取得を募集要件にしている求人もよく見かけます。送迎を行う場合、営業時間よりも早く利用者を迎えに行かなければなりませんので必然的に早朝出勤になります。働く場合は通勤時間も加味しましょう。
7.食事と風呂はあるか
住宅である老人ホームはもちろん、デイサービスも利用者にお弁当やお風呂を提供します。食事と風呂を提供している事業所の場合、食事と風呂の介助や見守りが必要な介護度の高い人が利用しているでしょうし、逆にそれらを提供していない半日型デイサービスであれば身の回りのことができる自立度の高い利用者が多いと言えます。
また、事業所の規模が小さければ介護職の代わりに機能訓練指導員が利用者の風呂の世話をすることがあるかもしれません。見学や面接時にお風呂介助があるか確認しておきましょう。
おわりに
転職すること、副業を始めることは当たり前の世の中になってきました。過酷と言われがちな介護関係ですが、よく吟味すれば働きやすい環境がそろった職場を見つけられると思います。新しい仕事に挑戦してみてはいかがでしょうか。
高齢者のリハビリと運動療法に最適な「レッドコード」とは
赤いヤツ
日帰りの介護施設であるデイサービスには様々なタイプが存在します。
とりわけリハビリ型デイサービスと呼ばれる運動やトレーニングがメインのデイサービスには色々なリハビリ器具が導入されています。
見学や体験で初めてリハビリ型デイサービスに訪れた方は、見た目ヨボヨボの高齢者がマシントレーニングを行っているのを見て驚かれます。
もはや毎度のことなので「皆さんびっくりされますけど、どなたでもできるんですよ~」と安心してもらえるよう声をかけたりします。
そんな毎度のやり取りの一つに「この赤いヤツはなんですか?」という質問があります。
応用力の塊
赤いヤツこと「レッドコード」は天井から2本のロープが釣り下がっているだけのシンプルなリハビリ器具です。ロープの下端に手をひっかけることができ、体を支えてくれます。レッドコードを使った運動をスリングセラピーとかレッドコードセラピーと言います。
これが何に使えるのかと聞かれれば、何にでも使えます、と答えています。日頃の機能訓練では集団体操に利用することがほとんどですが、個別のリハビリでも効果を発揮してくれます。
集団体操
メインの使い方です。基本的には椅子に座って両手でレッドコードを握ります。
体操を行う上でレッドコードが優れているポイントは、転倒リスクの低下です。レッドコードを握っているため足以外に手で体を支えることができます。これにより腕を伸ばしたり足を曲げたりしても自然とレッドコードを支えにして普段以上に大きく動くことができます。
私の勤めているデイサービスでは5~9人程が30分間一緒に体操を行います。
有酸素トレーニングとストレッチとしてほとんどの人に適用です。
立位の補助
椅子から立ち上がった状態でもレッドコードは姿勢の維持に効果を発揮します。平行棒の代わりに爪先立ちやスクワットの支えになってくれます。
立位保持を助けるオプションを取り付けることもでき、下肢筋力を鍛えたい利用者に行います。
立位保持が可能な比較的介護度の低い利用者が適用です。
下肢のリラクゼーション
体操の時と同じく椅子に座った状態で行います。手ではなく足をひっかけて宙吊り状態で曲げ伸ばしを行いリラクゼーションを促します。
下肢を持ち上げた状態で水平面状に動かすことができ、股関節、膝、足首の可動域が広がります。
必然的にお尻で姿勢を維持しなければならないため、利用者のバランス感覚が大事になってきます。転倒防止のためにスタッフが近くにいることが望ましいです。
余談ですがレッドコードを使えば下肢に限らず目的部位を宙吊りにできるため、簡易的に徒手筋力検査(MMT)のスケール2「重力を除去すれば、運動域全体にわたって動かせる」を判定できます。
片麻痺のリハビリ
脳卒中などにより片麻痺になってしまうと麻痺側の筋肉が過度な緊張を起こします。日々のリハビリでこの緊張を取り除いていかなければなりません。
麻痺側では体操のときと同じようにレッドコードを握り、非麻痺側では長さを調整するひもを握ります。これにより自分で長さを調節しながら麻痺している手足をリハビリできます。
最後に
私が働いているデイサービスでは主に上記の使用法で機能訓練を行なっています。しかし、レッドコードには様々な使い方があり、調べるほど「こんな使い方があったのか!」と発見があります。
アスリートのトレーニングに使うこともあるようで、高齢者から健康な方まで幅広い世代の健康増進とトレーニングに役立っています。
これからご自身や家族がデイサービスを利用しようと考えているのなら、レッドコードが設置されている施設を探してみるのもいいと思います。
働きながら国試浪人をした人の決断
辞めたい介護士
年度末となり退職や人事異動のシーズンですね。
私の働いてる職場でも、同僚の介護士の退職話が浮上していたのですが社長に仕事を続けるよう説得されていました。
介護士が辞めたがった理由について話を聞くことができたのですが、これが柔道整復師業界の抱える国試浪人問題に関係していたのです。
介護士は国試浪人だった
以降はその介護士のことをAと呼びます。
Aは自分のけがを整骨院の先生に治療してもらった経験から整骨院で働くため柔道整復師を目指します。Aは柔道整復師を養成する専門学校を卒業しましたが、資格を取得できませんでした。
柔道整復師の資格は養成学校を卒業して試験を合格しなければ取得できません。Aは試験に落ちていました。
この「学校は卒業したけど試験を落とした人」のことを国家試験の浪人生であることから「国試浪人」と呼びます。柔道整復師の最近の合格率は新卒が80%程度で国試浪人は20%程度。問題は年々難しくなっています。
そして追い討ちをかけるように来年からは試験問題の出題範囲が広がって形式も変わることが決まっていました。
追い詰められたA
Aは今年の試験を落とせば、勉強してない範囲まで出題される来年の試験は絶対受からないと理解していました。
そのことで上司が前々からAにハッパをかけてもいました。
しかし、先日行われた試験にAはまたもや落ちていました。
整骨院と介護施設を経営する特殊性
Aの話を続けるには私やAが働いている会社と柔道整復師の業界について触れなければなりません。
柔道整復師の就活は特殊で、卒業のギリギリになって就職先を決めます。これは試験がある3月まで資格を取れるかわからないからです。
就活生は試験勉強が忙しいなか資格が取れるか定かではないまま就活をしたくはなく、試験の合否がわかってから就活を始めることがほとんどです。
雇う会社側も無資格の人間を受け入れたくはないので保険をかけます。試験より前に面接をしたら勉強の進み具合やストレートに試験は大丈夫そうか聞いてきます。ある企業では就職が決まったら試験対策の勉強を教えてくれるところもあるそうです。
そして、私とAの働く会社は保険として選択肢を提示します。
試験に合格したら新入社員の希望通りの職場で働いてもらい、不合格なら介護施設で働くことを勧めるというものです。
新入社員にとっては介護施設の方は無資格でも働くことができるので、試験を落として内定取り消しの心配がありません。
会社側も新入社員が試験を落としても人手不足の介護施設にある程度医療の知識がある人間を雇いれることができます。
一見WIN-WINの関係かと思いきや実際はそうではないようでした。
会社はAを無資格でも雇ってやったと足元を見て安い給料で他の職員より長く働かせていました。
これがAに退職を決意させた原因でした。
今の仕事は割に合わない
2年間働きながら試験勉強を続け、最後は心折れたAは今の会社にいる意味がないと感じたようです。試験に合格したら待遇の改善を約束されていたのですが、それも不可能とわかり、辞める決心をしました。
今回は社長に説得されてしぶしぶ残ることになりましたが、社長を突っぱねて辞める方法を私と話し合っていたので退職するのは時間の問題です。
ちょっと医療に詳しい一般人
Aのような国試浪人は全国にたくさんいます。前回の試験(H29年)で落ちた人は2631人。少ないように思えて実際は違います。
試験の合格は養成学校の評価に直結します。少しでも高い合格率で宣伝したい学校側は試験に落ちそうな学生に試験を受けさせません。卒業は認めるが試験は受けるなと通達したり、留年や別のコースに転学するよう勧めたりします。
また、一回目の試験で落ちて諦めた人もいるでしょう。推測ですが、道半ばで諦めた人も含めると1万人くらい国試浪人はいるんじゃないでしょうか。
国試浪人の就職は厳しいです。学校でどんなに専門的な勉強をしていてもそれを証明する資格を持っていないために「ちょっと医療に詳しい一般人」でしかありません。
学校が開催してくれるキャリアイベントなどは試験に受かることを前提に話を進めます。学校側は国試浪人にどういうキャリアを歩むべきか指針を示しません。そして企業側は国試浪人を安い労働力として雇う。
弱い人間には厳しい社会だとつくづく感じます。
連続退職の見えない爆弾
実はA以外にも社内には国試浪人の介護士が数名働いています。待遇はAと同じく安月給に長時間労働。これはAでなくてもいつ辞めるかわからないということです。
そしてすでにAではない国試浪人の社員1名の退社が決まっており、退社の連鎖が始まるかもしれません。
この冬にスタッフが集団で退職した老人ホームで死者が出る事件が発生しました。私の職場の近くでも核となっていたスタッフが集団で抜けた後サービスの質が極端に落ちたと噂になった介護施設がありました。
「専門卒で専門資格は持っていません」では雇う側が敬遠するのも無理はありません。しかし、それでも社員の足元を見て搾取するようでは会社の方が自滅するだけです。
きっと正当な報酬と休日をAや国試浪人の社員に与えていたならこんなことにはならなかったと思います。
もしもウチの会社で社員が一気に辞めるようなら私も辞めます。泥舟から逃げる。これに尽きます。