世界のユースセンターを巡る旅人

世界を旅する日本人とフランス人の話。

ヒッチハイクで5年間服役してたムスリムに乗せてもらった話【フランス】

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終春の晴れた昼下がり、私たちはヒッチハイクをしました。その様子は前の記事で書いた通りなのですが、、

mayonakanoonara.hatenablog.com

乗せてもらって、終わり。というものでもなくて、人と人との出会があってこそのヒッチハイク。私たちの出会いを紹介します。

 

 

大音量でラップが流れる車

真っ黒の車が、私たちの歩く目の前で停車。「ナンシーに行きたいの?」と聞かれ、「ハイ!」と私たちは一口返事。「おっけー!僕もナンシーに行くから乗る?」と。2回目の「ハイ!」

2時間半のウォーキングから一瞬で世界は変わり、私たちは車に乗せて貰うことができました。車の中は、大音量でラップが流れています。乗せてもらった人は私たちより少し年齢が上の若者の男性。1人で運転していました。

 

出所したばかり

車の中でなんとなく自己紹介をしながら、私たちはいたって普通の会話をしました。とても話しやすくて、私たちの話も聞いてくれる彼。そんなとき彼からのいきなりの質問、

「僕は最近まで何をしていたと思う?」

唐突すぎて私たちには全く想像もできず。ただ、20代でがたいが良い感じなので、力仕事なんてしてるのかな?なんて想像しながら、全くもって私たちは分からず、、、

そんなとき彼のほうから、「最近まで刑務所にいたんだ。」なんてことを告げられました。彼の明るさ優しさからは想像できないような発言で、私たちはびっくり。

正直ちょっとずつ頭の中を整理していきながら、「え、僕たちは大丈夫なの?」という考えが頭の中によぎったりもしてました。ただ彼と話しながら、言葉のひとつひとつを捕まえてみると、彼の優しさの根源、彼の学んだことが見えてきてそんな不安が少しずつ信頼へと変わっていきました。

「自慢じゃないよ、ただ人生の話」ということで、私たちに色々話してくれました。

 

5年間の服役

彼は19歳の時に窃盗罪で捕まり、5年間服役したそう。今は25歳。出所して職を見つけ幸せに暮らしているそうです。僕は人生で初めて、刑務所にそんなに長くいた方に会いました。

刑務所にいたときに面談に来た母親が泣く姿を見て、「こんな自分じゃダメだ、」と気づき、刑務所では模範的な受刑者だったそうです。

フランスの刑務所は一時的に少し外に出れたりや、模範的だったら刑務所の仕事の手伝い(食事の配膳、掃除)などで、給料も出るんだそうです。月に最高200ユーロ程。
彼はそこで少しづつ貯金をしていたんだそう。

「自分が罪を犯した時は、子供でなんとなくでやってしまった。周りの友達とか、周囲の環境にあまり良くない人が多かった。」と語る彼。自分の意思が弱く、流されるがままに、犯罪を犯してしまったのだそうだ。

余談。。

彼に乗せて貰っている途中で、飲み物を買いに一緒にスーパーへ行きました。その時に気づいたのですが、なんと僕たちは財布を持っていなかったのです。1ユーロも持たず、ヒッチハイクをしていた。そしてなぜか、日本の財布を持っていました。1000円くらいあるけど、使えない。。。着いたときに彼に日本のコインをあげました。

 

スーパーに行く

彼はそんな私たちに、彼はピーチティーを買ってくれました。ショッピングしながら、「何か欲しいものは?」と何回も聞かれ、「大丈夫、何もいらないですよ。」というやりとりを何回も何回も続けたのですが、、、

我慢していたら、心から楽しめないよ!

と、気づかないうちに自分のオススメのピーチティーを買ってくれました。車に戻って飲んだピーチティーは最高でした。(疲れはてていた体に染み込む〜)

車の中の音楽も「好きなの選んでいいよ!オススメの教えて!」ということで、Avicii を1時間以上大音量で流してました。本当に本当に優しすぎます。

 

宗教の話

彼はムスリムだそうだ。つまりイスラム教徒。そんな彼は、昔は宗教を信仰していなかったけれども、最近は信仰してみようかな?と思い始めたんだそう。私たちは車の中で「宗教って必要なのかな」とか「宗教の良いところ悪いところ」などたくさんの意見交換をしました。

余談2

フランスで、白人からイスラム教徒はまた少し違った視点で見られることも少なからずあって、、、
なんとなくキリスト教の人とか、ムスリムの人が来る前からフランスに住んでた人とは文化が違うと同時に、衝突も起こりがち。特におじいさんおばあさんとか、いい年齢の大人とかなんとなく軽蔑する部分もある。
「あームスリムね。犯罪したのね。それっぽいね。」って私たちが知り合いにいわれるように。
僕がフランスに最初きて感じた、「わー、いろんな人種、いろんな宗教が混ざっていてすごい。ふつうにいろんな人がいろんな風に歩いてる。寛容的!」というのは最初にみたもの。実はそんなこともないのが実情。


イスラム教の教えなのか、家族の教えなのか、人に優しくしなさいと昔から親にいわれていたのだそう。その教えをこれからは守っていくんだと心に決め、それを実践している彼。本当に本当に優しすぎました。

 

実はフランス愛がすごい

私たちが感じたのは実はムスリムに否定的な人たちよりも、彼の方が実は「フランス人愛」とか「フランス愛」がすごく大きいのではないかということです。

あるときルノーのゴーンの話をしていたとき、彼は、「ゴーンがお金持ちだとかそういうことはどうでも良くて、フランス人として早く解決してほしい」と語っていました。

逆に、イエローベストがもの語るように、フランスでは中級の給料もしくはそれ以下の人たちの金持ち嫌いは凄まじいものです。ヒッチハイクしながらも、イエローベストをしている人を多く見かけました。平日の昼間にもかかわらず、毎日デモは行われています。

そんな彼らにとってゴーンなどの金持ちは邪悪な存在です。「フランスで捕まらない金持ちを、日本は捕まえてくれてありがとう」など金持ちが捕まって万歳的なコメントが溢れています。

彼の考え方とは、根本的に違っています。

今の彼にとって金持ちとかそんなに大きな問題じゃなくて、ただ、社会がより良くあることだけを望んでいるようにも見えました。皆が優しく、出来るだけ幸せに生きるために。。。

 

彼が教えてくれたこと

何でもサービス業としてお金に変えてしまう現代社会に、ヒッチハイクを通して人間本来の暖かさを彼は教えてくれました。人に優しくすることの意義、優しさの意味とは何なのか、とても考えさせられました。

会って早々に、「日本とフランスの違うところ教えて!!!」と彼に言われたのが、私たちの中でとても印象的でした。(だいたいは「日本はこうだよね!」とただ言われることが多いので)彼は日本について知っていることが多くあるのにも関わらず、両国での生活を経験した私たちにただ質問したのです。意見を聞き入れるという心の優しさ、素敵です。

コンビニの話や車の話、人の話など色々フランスと日本の違いを挙げていくなかで、意見を交換しお互いが違いから学びを深めていきました。それぞれの社会でいい部分、悪い部分を見つめながら、とても面白いディスカッションになりました。

良い社会を作るって何だろうか?

同じ民族、同じ主張だけが同じ空間で行われていても、堂々巡りでいつまでも変わらないような。。。優しさを持って世界的に考えることの意味を彼は教えてくれました。