あらすじ 一幕

 

※個人的解釈と所感を含みます

イ・ジンギさんのファンなのでスンホ(過去)はイ・ジンギさんが演じた表現で書いています
スンホ(現在)、ヘイル、ヘソン、ジング、ヒョンミン、ウジュは役者さんによって台詞(アドリブ)や行動など少しずつ変わる部分がありますが、このあらすじでは私が見た中で一番印象の深かった記憶を交えて書いています

ヒョンミンはいつも祖父に敬語ですが仲が良い雰囲気を出したくて敬語は省いて訳しています

 

※2020年6月からの公演の変化点を<あらすじ 二幕②>の最後に追記しました

一番大きな変化点はウジュが持っていた役割(映画の主人公に憧れて遺骨発掘鑑識団に志望した)がヒョンミン(戦場を映画の世界のように思っている)に移行された点です

右矢印こちらへ

 


《一幕》


<僕が鬼になったら>

現代のスンホは今日も友の遺骨を探しに山を歩いています
スンホの携帯が鳴りました
孫のヒョンミンから大学に合格したという吉報です
祖父の電話から聞こえてくる鳥のさえずり...

ヒョンミンは気づきます
「お祖父さん!あぁ...また山に行ってるの!?」
「もちろん!」
「遺骨をどうやって捜すんだよ...」
「探さなきゃなんだ...」
「気をつけてよ!転んだらどうするんだよ!!」
「お祖父さんの心配はいらないよ」
「僕、今日遅くなるから!」
友だちにせかされて電話を切ってしまうヒョンミン

「ヒョンミン?もしもし?...」

スンホは微笑むと切れてしまった電話に向かって「おめでとう~」と伝えました

スンホは深いため息をつくと、叫びます
「お前たち~!!どこに隠れてるんだ~!?」

周りを見渡しても返事はなく...

風のざわめきと鳥のさえずりだけが聞こえます

スンホはやれやれと山に腰を下ろしました

少年時代を思い出すスンホ

僕はいつも鬼だった
じゃんけんが苦手で
かけっこがビリで
高いところが怖くて

僕はいつも鬼だった
目を閉じて100まで数えると
同じ風景画の中に
僕一人残ってた

僕が鬼になったら
町中を探し回る
山の裾まで走って行って
家に帰る道がわからなくなってしまった

楓の木陰の下だろうか
尾根にある石積みの後ろだろうか
口笛が聞こえるあそこだろうか
皆どこに隠れているんだ
日が暮れるのに

紙ひこうきを飛ばして
小さな靴をつぶして履いて笑った
本のページに絵を一枚をあたためて
皆どこに隠れているんだ
日が暮れるのに

また鬼になって
僕は誰も見つけられなかったのに
花はまた咲いて雪はまた降る
積もり重なって50年が過ぎてしまった

どこかで生きているなら
だからここにいないのなら
僕に便りを伝えておくれ
僕はここにいる
夜が更けるのに

もしも道に迷って
寝てしまったまま隠れているなら
もう出てきておくれ
家に帰らなきゃ
夜が更けるのに


今日も山に日が落ちていきます
辺りがだんだんと暗くなると
スンホの頭に戦時中の銃弾の音、爆弾の音が鳴り響きました
頭を抱えてうずくまるスンホ

銃弾の音は皮肉にも現代のゲームの音に変わります


<ヘイルとの出会い>

 

孫のヒョンミンに冗談で

「僕は友だちが多いけどお祖父さんは友だちがいないんでしょ?毎日山に行っててさ!」

と言われスンホは少し腹を立てます

「私に友だちがいるかいないかなんてお前がどうやってわかるんだ!!」

 

(舞台はスンホの少年時代へと変わります)

 

「お~い!!キム・スンホ~!!」

ジングの叫び声が響きます

スンホはベンチに座ってノートを二つ手に持ち、見比べていました


「おい!キム・スンホ!」
「ジング!」
「昨日はどうして欠席したんだ?」
「お祖母さんの具合が悪くて...」
「本当?大丈夫なのか?」
「うん さぁ!」
スンホはいつものようにジングの代わりにやってあげた宿題のノートをジングに渡します
「二問くらいは間違えてくれたよな?」
「もちろん!」
「さすが!はいっ!」

ジングはお礼のお金(硬貨)をスンホに渡します
「へへ~」
お金をもらい喜ぶスンホはジングのカバンも持ってあげます


ジングは昨日ソウルから転校して来たヘイル兄さんを見つけました

「ヘイル兄さん~!!」

「兄さん?」

スンホに紹介します

京畿中学校(名門)に通っていたそうで、父親はソウルで医者

体が弱いため(喘息)一年留年していると言います

(その為、同学年ですが歳は一つ上です)

「こんにちは キム・スンホです」
挨拶をするスンホですがヘイルは静かにスンホを見つめ、尋ねました
「君はカバンが二つなのか?」
「あ...これはジングのです」
「あぁ...」
ヘイルに見下されたように感じたスンホは少しムキになったように言います
「ただ持ってあげるんじゃなくてお金をもらいます!」

「お金をもらって宿題もして?」
「はい!お金をもらって宿題もするし、

正々堂々とした取引きです!」
「先生に嘘をつかなければならなくても?」
痛いところをつかれたスンホは何も言えなくなってしまい、そっぽを向いて罰が悪そうな顔です

 

「あ!そうだ!読書感想文の宿題があったんだ!!」
天然なジングはそんな空気を読むことができず、読書感想文(독후감)の宿題もスンホに頼みます
宿題の本は”デミアン”でした

「僕のも書いてね!」

ジングはお金(硬貨)を出してニコニコしますが、

スンホはヘイルの顔色を伺いためらいます

スンホが答えないので硬貨をもう一枚上乗せするジング

スンホの視線を感じたヘイルは

「何?」と冷たく言います

「何でもないです...」

スンホはジングの宿題を引き受け、お金をもらいポケットにしまいました

「兄さんは本を手に入れた?」
「僕は元々持ってるんだ」
ヘイルはデミアンの本を取り出しました
「すごい!見て見てこれ英語だよ!」
無邪気なジングにスンホは突っ込みます
「ドイツ語だよ...」

「ドイツ語だね...はは... さすが京畿中学!」

「一緒に読もうか?」
ヘイルはスンホの顔を覗き込みました

スンホがこくりとうなずくとヘイルはスンホの肩をポンっと優しく叩き、

デミアンの本のページをめくります


<序文>

この世界の作家たちは神の代理者のように  
一人の人生をまるで知っているかのように  
神託を下すように小説を書き下す

 

力強く デミアンを読み上げるヘイルの姿にジングとスンホは戸惑いますが、

次第に二人とも聞き入ってしまいます

春だ 
風が吹く
 
  
審判を下すように悲劇を書き下す  

春だ 
世の中が目を覚ます
 

しかしこの本は架空の話ではない 
幻の話ではない  
これは私自身の話であり  
たった一度だけの人生を生きている  
生きている人間の歴史だ  


春だ 
風が吹く
 

この世界の人々は皆忘却してしまった  
現存する人間が何なのか忘れてしまった  
そうして
ただ一度だけ生まれて
ただ一度だけ生きる人間を虐殺する
 

風は沈黙にふける 

ページをめくるように命を捨ててしまう  

風の向きが変わる 

 

ヘイルはデミアンの本(ドイツ語)をスンホに渡し、読んでみなさいとばかりに肩を叩きます

デミアンの本をスラスラと読み上げるスンホ

 

誰かの声で聞こえてくる話は  
こうしてすれ違い突然私を揺さぶる

 

ヘイルの双子の妹ヘソンが薬瓶をヘイルに渡しにやってきます

「イ・ヘイル~!!ちゃんと薬を飲むのよ!」

「わかったよ」ヘイルは薬瓶を受け取ります

「先に行くわね!」

去っていくヘソンを目で追いながら

「あの方は誰?」とジングは聞きます

「僕の妹だ」

ジング同様、スンホも初めて見るヘソンから目を離すことができませんでした

誰かの声で聞こえてくる話は  
こうしてすれ違い突然私を揺さぶる


誰かの眼差しで伝わる話は  
こうして遠くなり永遠に私を揺さぶる

 

「ジング!読書感想文は自分で書くんだぞ!どうだ?」

ヘイルはジングの肩を叩きました

「やってみるよ!」

ジングは拳をにぎり、やる気を見せます


これは私自身の話であり  
たった一度だけの人生を生きている  
生きている人間の歴史だ 


春だ 
風が吹く

 

スンホがジングのカバンを持とうとするとジングはさっと取り、自分でカバンを持ちました

ヘイル兄さんに何でも自分でやるよう教わったからです

きょとんとするスンホ

そんなスンホを見てヘイルは優しく微笑みます

 

 

<ヒョンミンの自転車>

成績が悪く、大学から学事警告を受けたヒョンミン
祖父のスンホは保護者面談に呼ばれました
早く来たスンホは祝祭でかっこよく歌う孫の姿を目にして驚きます


「今日は僕のせいで山に行けなかったね~!」
したり顔のヒョンミンですが
「明け方に行って来たんだ~」と得意げなスンホ
祖父を心配して山には行かないでほしいと願うヒョンミンですが

スンホはなかなか聞く耳を持ちません

「入山禁止!」「もうお祖父さんと口を聞かない!」と腹を立ててしまうヒョンミン
スンホは孫の様子をうかがいながらつぶやきます
「あの自転車...まだあるんだ」
「!?」
スンホが孫ヒョンミンが幼い頃にプレゼントした自転車
ヒョンミンが大好きだった自転車 ヒョンミンは驚きます
ヒョンミンとスンホはヒョンミンが自転車に初めて乗った時の思い出に浸ります

世界で一番大きなプレゼント
世界で一番素敵なプレゼント
新しい自転車
僕の自転車
背が小さくてペダルに足が届かなくて
両目をぎゅっとつぶって
呪文を唱えた ヨーデルリヒ
背を伸ばしてください ヨーデルリヒ
自転車に乗れるように

その夜夢の中で僕は自転車乗って
夜空を飛んで
世界中を見物したんだ
空から見下ろした
この世界には満天の星がキラキラ
世界で一番震えたあの日
あの自転車
僕の自転車
補助輪を外すと約束したあの日

お祖父さんが後ろで支えてくれるって ヨーデルリヒ
絶対に離さないでよ ヨーデルリヒ
しっかり掴んでてね

その夜夢の中で僕は自転車乗って
夜空を飛んで
世界中を見物したんだ
空から見下ろした
屋根にはお祖父さんが僕に手を振って

 

「ヒョンミ~ン!!」

「お祖父さん!自転車を買ってくれて本当にありがとう~!!」

その夜夢の中で僕は自転車乗って
夜空を飛んだ
夜が明けるまで飛んだ
世界の果てまで飛んだんだ
本当に素敵だった最高だった
絶対に忘れられない

昨夜夢の中で僕は自転車乗って
夜空を飛んだ
ステージから空まで
空から世界の果てまで
世界中にギターの音と風の音
僕は飛び立ったんだ


(ヒョンミン(コ・ウンソンさん)は今度はオートバイを買って!とおねだりしたりします)

そこへ友だちのウジュがやって来ます

「ヒョンミ~ン!君が頼んでた本!」
ウジュはデミアン(翻訳本・英語・ドイツ語の3冊)を持って来ました
「今日の公演マジでかっこよかったよ!」
「Thank you~」
ヒョンミンは祖父にウジュを紹介します
「こちらは同じ科の同期、ウジュだよ」
「こんにちは!チェ・ウジュです!」
ウジュはお辞儀をしました
「こんにちは キム・スンホです」
スンホも丁寧に挨拶をします
「あ~...学事警告...」
ヒョンミンは思い出したようにため息をつきます
「Sad...」
悲しそうに拳を出すウジュ
「Sad...」
ヒョンミンはウジュの拳を頬で受けます

「ウジュは科でトップなんだ!」
そんな二人の様子を見ていたスンホはそれを聞いて
「Happy!」
と拳を出します
「Happy...」
ヒョンミンに促されてスンホに拳を合わせるウジュ

「次の学期を頑張れば在籍できるって!」
ヒョンミンは祖父に明るく話します
「もともと新入生の時は学事警告を受けるものなんだろう?」
ヒョンミンが前に言い訳したことを信じて話すスンホ
ウジュは釘をさします
「え!?ははは...それはちょっと...」
ヒョンミンは慌てて遮ります
「何だよ!僕は学事警告が好きなんだ!」
「ははは...変わってるね...」
「だけど次の学期に入隊するからどうせ関係ないけど!」
「え?僕も次の学期!」
「お前も!?」
「僕は特技兵に志願するんだ!」
ウジュはニヤッと微笑みます
「ええ?何の特技兵!?」
ヒョンミンが尋ねますがウジュはカメラを二人に向けシャッターを押すと

答えないまま去って行きます
「おい!!何の特技兵なんだよ!!!

あ~!すごいおかしい奴でしょ!?」
「そうだな...」 (現代のスンホ(イ・ジョンヨルさん)は納得しちゃいます)


<二つの世界>

「あぁ...僕が上級ドイツ語を選択したばっかりに...」
(人が多いと講義室の酸素が薄くなるからという理由で一番人気がない科目を選択したヒョンミン...ㅋㅋ)


ヒョンミンはウジュが用意してくれたデミアンの本を手に持ちます
「教材か?」
「うん!上級ドイツ語!」
「もともと専攻はフランス語じゃなかったのか?」
「そうなんだけど...」
ウジュに言われた通りに得意げに話すヒョンミン
「翻訳本を読んで英語を読んでドイツ語を読むんだ!」
「3回も!?」
「うん!面白いよ!(あ~ウジュの奴め!)」

「デミアン...」
スンホは懐かしそうにドイツ語の本を手に取りました

 

ヒョンミンは翻訳本をペラペラとめくり、読み始めます

二つの世界
公認された世界と黙殺された世界

二つの世界
神聖な世界と悪魔の世界

もつれ合い交じることなく互いを睨みつける
もつれ合い交じることなく互いを睨みつける


(舞台の奥、薄い幕の後ろに学生時代のスンホ、ヘイル、ヘソン、ジングが現れます
過去のスンホと現代のスンホがデミアンを同時に読み上げます)


光の世界
パンを焼く匂いとコーヒーの香り
礼拝堂の鐘の音と時計の音
端正なコートと黒い靴
愛と懺悔と夜明けの祈り


「お祖父さん!デミアンを知ってるの!?」
スラスラとドイツ語のデミアンを読み上げる祖父にヒョンミンは驚きます

闇の世界
酸っぱい汗の匂いと汚物の匂い
悪口と呪いと泣き声
刑務所と畜殺場の血生臭さ
川に浮かんだ若い死体


二つの世界
開けた世界と忘れられた世界

(少年時代のスンホとジングは頭を押し付けあって遊んだりします

ヘイルがデミアンを持ち、スンホ、ジング、ヘソンと仲睦まじく寄り添う4人)


二つの世界
眩しい世界と悲しい世界

知らないふりをして顔を背けてもそっと振り向き互いを探る
知らないふりをして顔を背けてもそっと振り向き互いを探る


「凄い!!お祖父さん寺小屋出身じゃなかったの!?」
ヒョンミンは真剣に驚きます
「何だって?寺小屋だって?」
スンホは呆れます (この孫はいつの時代だと思っているのか...)
「さぁ!行こう!学事警告の保護者面談!」
「お祖父さん!寺小屋では何でも教えてくれるんだね!」
「Der Vogel kaempft sich aus dem Ei!!」
スンホは得意げにドイツ語を話します
「どんな意味!?」
「”鳥は結局卵を割って出る”だ!ははは!!」

スンホは孫の頭をたたくと大笑いします
二人の笑い声は大学内に響きました

 

 

<ジングの読書感想文>

 

(少年時代のスンホが答案用紙を持ってふらふらと登場します)

「あ~どうして僕がこんな基礎的な積分を間違えるんだよ~」
スンホはテストを一問間違えたことにへこみ、地べたにうなだれます

(10/29昼公演は帽子をぽいっと投げ捨てていました 10/30昼公演は頭をゴンゴン地面にぶつけていました)

 

そんなスンホを見つけたヘイルは自転車を止め、スンホの元へやってきます
「今日から僕の称号はおバカにするよ...おバカのキム・スンホ先生...あはは」
「一問間違えたくらいでそんなに大騒ぎするなんてみっともなくないか?」
ヘイルはうなだれたスンホを見下ろします
「兄さんは?」
「全問正解だ」
「最悪だ~」
ふてくされるスンホ

「スンホ~!!ヘイル兄さん~!!」
ジングが息を切らしながら慌ててやって来ました

「やぁ、ジング!今日どうして欠席したんだ?」
「親父が学校に通って何になる!早く結婚して百姓しろって大騒ぎなんだ!すぐに退学しろって!」

ヘイルは冷静に答えます

「退学するのが何が重要なんだ?」

「ヘイル兄さん~!」

スンホはヘイルの言葉を遮り、ジングの話を聞いてあげます

「一日中、跪いてお願いしたんだ!卒業だけはさせてくれって」

「それで?」

「勉強できたら許すって」

「よかったじゃないか!」

勉強ができる余裕なスンホの返事にジングは拗ねて空蹴りをします

スンホもジングに空蹴りを返します

(11/8夜公演ではあっかんべ~までしてました 11/13昼公演では何故か草をむしって投げてました...)
ヘイルはいつものように論理的に淡々と返します
「ジング!学校に通おうと通わまいと君にできることはどうせ変わらないんだ

読書感想文を自分で書くんだ わかったなジング?」

(読書感想文に執着しているヘイル...ヘイルにとっては慰めているつもりだと思います)

「イ・ヘイル~!!」

ヘイルの双子の妹、へソンがヘイルに薬瓶を投げると

薬瓶はスンホの元へと飛んできました

慌ててキャッチするスンホ

 

スンホと初めての挨拶をします

「イ・ヘソンよ!」
握手を求めるへソンですがスンホは恥ずかしくて自分から手を握れません

ジングは読書感想文の宿題を自分で取り掛かり
デミアンに出てくる”卵を割って出る鳥”の絵を描いていました

「うまく描けたわね」
ヘソンは覗き込みます
「ジングは絵がうまいんだ
僕の美術の宿題も代わりに描いてもらったこともある!」
ニコニコして話すスンホですが、ヘイルは冷たい視線を送ります

固まるスンホ...
「絵は直接自分で描けよ」
ヘイルは強く言いました

「よし!読書感想文終わりっ!」
ジングは嬉しそうに立ち上がりました
 

 

<鳥は卵を割って出る>

 

”鳥は卵から無理に出ようとする
卵は世界だ
生まれようとする者は、ひとつの世界を破壊せねばならぬ”

(「デミアン」著:ヘルマン・ヘッセより)

 

ジングの描いた絵は””卵を割って出る鳥”、殻を割って出たばかりのひよこの絵を描きました

 

小さな鳥が卵を割って出てきた

まだ目が開いてないよ

可愛い

 

幼い鳥が卵を割って出てきた

まだ飛べなくても大丈夫

安全に守らなければ

小さな翼が乾くまで

僕がそばにいるよ

(幼い鳥をジングが表現し、スンホは"そばにいるよ~♪"でジングを抱いてあげたり、頭をよしよし撫でたりします)

 

鳥は卵を割って出てくる

小さな鳥が出てきた

卵は小さな鳥の世界だ

卵は完璧だった世界だ

生まれようとする者は

一つの世界を壊さなければならない

 

(大きな木の葉のスクリーンに卵の殻を割って出る鳥の映像が映し出されます)

 

スンホも絵を描きます

「僕も描けたよ!」

スンホの絵は”まだ生まれていない卵”、これから頑張って殻を割ろうとしている卵を描きました

 

小さな鳥はまだ卵を割れない

まだ寝ているみたい

可愛い

 

幼い鳥は一匹で暗闇の中を過ごした

まだもう少し寝てても大丈夫

温かく抱いてなければ

卵を割って出るまで

 

スンホの描いた卵の絵をヘイルは手に取り、

「僕が温めてみようかな」と自分のデミアンの本に挟みます(←重要です)
 

鳥は卵の中で眠る

小さな鳥が出てきた

小さな鳥は夢を見る

卵は小さな鳥の世界だ

卵は完璧だった世界だ

生まれようとする者は

未知の世界を夢見る

 

卵を割って出てきた鳥が飛んでいく

卵を割って出てきた鳥が飛んでいく

 

4人は紙ひこうきを鳥に見立てて飛ばします

 

スンホの夢は自転車に乗ることでした

ジングは「ぷっ!」と笑いますがヘイルは優しく言います

「乗ってみるか?」

「本当!?」

スンホは目をキラキラさせてヘイルの自転車にまたがります

後ろでしっかり支えてあげるヘイル

「しっかり掴んでてね!!離さないでね!」

 

サドルをふらふらさせながら慎重にペダルをこぐスンホ

ヘソンは鉛筆を持ちスケッチをしながら、ジングと一緒に"離しちゃえ"とヘイルに合図を送ります

ヘイルはそ~っと手を離し、スンホはいつのまにか一人で乗れています

スンホは大騒ぎですが、喜び笑い合う3人

スンホの夢をヘイルが叶えてくれました

 

(スンホが持っているデミアンの本は何故か日本語です...貧しいスンホは日本語教育時代の昔のデミアンしか手に入れられなかったのかもしれません...ヘイルの持っているデミアンの本と区別をつけるためもあると思います...)

 

 

<遺骨発掘鑑識団面接>

特技兵の面接に来たヒョンミンとウジュ
ウジュが志願すると言っていた特技兵は遺骨発掘鑑識団のことでした

順番を変わってくれと一番のヒョンミンはウジュに頼み込み順番を変わりますが
結局一番に呼ばれてしまうヒョンミン...
志望動機を聞かれて
「専攻学科の資格要件に...
あ...そうではなくて!同じ科の同期が志願すると言うので...」
面接官はため息をつきます
まずいと思ったヒョンミンは必死に他のことを思いつきます
「私の両親は海外支社に3年間赴任していますが、

私はついて行かずにこの誇らしい大韓民国に残り、祖父と一緒に暮らしています!!」
「どうして?」
「英語が嫌いで...」
ついつい正直に話してしまうヒョンミン...
また思いつきました
「私の祖父は!!参戦勇士です!!」
「何と!参戦勇士?」
面接官は立ち上がります
「退職されてから戦友の遺骨を探すんだと毎日山に行かれるのですが...
正直私はどうしてそこまでなさるのかわかりません...」
またもや正直に話してしまうヒョンミン
「そうか...」
ヒョンミンの志願書はくしゃくしゃと丸められました
(ソウル公演の千秋楽はまさかの”キム・ヒョンミン合格!”とのアドリブ)
(ヒョンミンの面接中、ウジュ(ユン・ジソンさん)は緊張してずっと面接の練習を繰り返したり、口の中をぐるぐるさせたりしています)

「次!チェ・ウジュ!!」

ウジュは拳を強く握り、熱い思いを話します
「人類の歴史に!!
偉大な遺産を発掘するのが私の夢であります!
故に文化人類学を専攻しており、考古学に多く関心を持っています
私の専攻を生かしながら意味のある軍生活を送ろうと志願しました!!」

「幼い時から私の夢はただ一つでした!!」

背も低いし
目も悪いし
いつも風邪を引いて
本ばかり読んでた
誰が何と言っても

ご飯を食べず
寝もせず
漫画を描いては破り捨てて
一人でさまよった

夜は平気だったが
明け方になると不安だった
冬は平気だったが
春が来ると不安だった
こうしてたら僕は永遠に
僕の部屋から一歩も出れないんじゃないかと

ちょうどその時に聞こえてきた
リビングのTVから週末の名画
その音楽の音
土煙を突き抜けて登場した
僕の英雄
僕の愛
インディジョーンズ!!


(舞台はインディジョーンズが登場し、映画の中に入り込むウジュ)

(面接官もヒョンミンに3D眼鏡をかけられ、映画を見させられますが、
そこで丸められた志願書をヒョンミンは拾い上げ丁寧に広げてこっそり面接官の机に戻していますので注目です)


面接官は志願書のファイルをバンッ!と閉じるとウジュに告げます

「チェ・ウジュ!戦争は映画ではない!」

この時のウジュはその言葉の意味にまだ気づくことができませんでした...

 

 

<まさか...>

 

ついにジングの婚礼の日がやって来ました
ヘイル、ヘソン、スンホもお祝いの席に出席します
親の決めた縁談のため、ジングは最後まで嫌がりますが
花嫁を初めて目にした瞬間、「母上!結婚いたします!」とまんざらでもない様子です

 

そんな中、よくない噂が飛び交います


もしかして戦争が起こるのではないか?
戦争だなんてまさかそんなはずは...

 

戦争だなんてそんなわけないじゃないか
まさかそんなわけないじゃないか

こんなに日差しが心地よいのに
こんなに気分がよいのに
あんなに嬉しくて笑ってるのに
あんなに嬉しくて泣いているのに


もしや戦争が起こるのだろうか
本当に戦争が起こるのだろうか
戦争だなんてそんなわけないじゃないか

太平洋戦争が終わってから
間もないっていうのに
この地に独立を求めてから
間もないっていうのに


人間は歴史を愚かさを繰り返す
戦争の悪夢が消えないうちに
戦争の理由を作り出す



結婚式の様子をスケッチしているヘソン
スンホはついつい目で追ってしまいます

「スンホ、僕の妹が好きなのか?」
「うん...あ!?」
ヘイルの不意な質問に素直に答えてしまうスンホ

「特別なことじゃない 僕の友だちの中でヘソンが好きじゃない奴はいない
けど僕の友だちの中で先に自分の名前を教えたのは君が初めてだよ」
「え!?」
一瞬ドキドキするスンホですがすぐにヘイルに落とされます
「感動することはない それだけだ」

ヘイルはいつものようにスンホの肩をポンっと優しく叩きました

 

 

<愛とは>

 

スンホはデミアンの本を抱きしめ、
愛について考えます


愛とは僕を不安にさせる肉体の衝動でもなかったし
僕を傲慢にする精神の昇華でもなかった
愛とは僕を錯覚させる春の神秘でもなかったし
僕を凍りつかせるような夜中の恐怖でもなかった

 

ヘソンはこそこそとスンホの姿をスケッチしています

目が合いそうになってはお互いに反らす二人...


愛は両方とも同時に何でもないにわか雨だった
ある日静かな世界に何の予告もなく降り注ぐもの
愛とは僕を切なくさせるかすかな記憶でもなかったし
僕をわびしくさせる遠い日の祝福でもなかった

 

ヘイルがやってきて、スンホに告げます

「戦争が起これば僕は入隊する」

「え?」

「戦争になれば入隊するんだ」

そう言うとヘイルはスンホの肩をポンっと叩きました

それを聞いていたヘソンは動揺します

(前と声のトーンが変わり力強く歌います)
愛は両方とも同時に何でもない幼い鳥だった
冬の日に雪に覆われた山の中に一人取り残され道に迷った


告白できなかった気持ちは
正直になれなかった気持ちは
愛なのだろうか...

 

 

<入隊>


ついに入隊の日がやって来ました
スンホの祖母はスンホにお弁当を持たせます
「スンホ、病気にならないで気をつけて行ってくるんだよ」
「健康でいらっしゃらなきゃですよ!」
スンホは祖母に明るく挨拶をすると

深くお辞儀をしました

 

「イ・ヘイル~!!」

ヘソンも見送りにやって来ます

いつものように薬瓶をヘイルに渡すと兄さんをぎゅっと抱きしめました

ジング、スンホともそれぞれ握手をして見送ります

(スンホとの握手はぎこちなくヘソンもスンホを意識しているようです)

 

スンホは軍から支給された荷物を背負うと

見送る皆に笑顔で手を振りながら山を登っていきました

(祖母が最後まで手を振っているのを見つけると名札(胸)をポンポンと2回叩き、ここにいます!というような仕草をします)

 

 

<僕の少年時代>

 

僕の少年時代が暮れていく
その短い一日が消えていく
誰も答えることはできない
この夜が過ぎたら日がまた昇るのか

行って来ます
すぐに戻ります
生きて戻ります
帰って来ます 

一番勇ましく  
国をしっかり守って  
毎日手紙を書くよ
あまり心配しないでください

私の少年時代が暮れて行く  
そのきらびやかな光が消えていく  
誰も答えられない 
この夜が過ぎたら世界が変わるのか

行って来ます
すぐに戻ります
生きて戻ります
帰って来ます  

僕に会いたくなったら
写真取り出してみて  
少しの間待ってください
すぐに戻って来ます

ご飯も食べさせてくれて 
服も着させてくれて 
眠らせてくれるって  
何の心配もないって

僕が愛したバッハの平均率  
僕が愛したヘッセのデミアン  
僕が愛したドイツ語動詞の変形  
僕が愛した関数と微積分  
僕が愛した英単語transcend  
全部覚えたら一枚ずつかみしめた 
英語辞典の薄い紙の味

行って来ます
(ご飯も食べさせてくれて)  
すぐに戻ります  
(服も着させてくれて )
生きて戻ります 
(眠らせてくれるって )
あまり心配しないでください
帰って来ます  

僕の少年時代が遠のいて行く  
あの誇りの中に消えてゆく  
誰も答えられない 
この夜が過ぎたら僕たちはどこで目覚めるのか 

僕の少年時代を置いて旅立つ 
それでも僕は忘れはしないだろう

 

ヘイルの妹、ヘソンも誰にも知られずに

母親に連れ戻された学徒兵(パク・テフン)になりすまして入隊します

(この際に5学年3番と言っているので今で言う高校2年生(17歳)です

けれどヘイルの双子のヘソンも年齢はスンホたちより1つ上のはずなので実際のヘソンは6学年なのかもしれません)

 

一方、現代のヒョンミンとウジュの二人も特技兵(遺骨発掘鑑識団)に合格することができ、入隊します
 

 

<戦争>

現代の軍事訓練と過去の軍事訓練が交差します

スンホは銃を持たされますが
目はキョロキョロして落ち着かず、銃を持つ手は震え、おぼつきません
唾をごくりと飲み込み、匍匐前進、手榴弾の投げ入れ、一つ一つをこなしていきます
(舞台右側で過去の軍事訓練が行われますが、4列になっている一番左側の列、先頭がヘイル、その次がスンホの順に匍匐前進するので要チェックです)

誰かが僕に銃を向けて
誰か僕に手榴弾を投げる
あの暗闇の中に必ず誰かいる
敵を殺してこそ僕が生きられる

僕は目をつぶって銃を構えて
僕は目をつぶって手榴弾を投げる
肉が裂けて骨が砕ける
汗が流れるように血が流れる人々


戦争は英雄の冒険ではない
戦争は栄光の歌ではない

戦争は印刷された活字ではない
戦争は人間を完全に抹殺する


僕は故郷を離れて来たが道は見えず
僕が存在したという何の証拠もない
生きるべき理由は霞んでいくのに
死ななければならない理由は大きくなっていく

スンホの銃を構える姿はだんだんと様になってきます
怖くて目をつぶってしまうジングに「目を閉じてはダメだ!」と声をかけるスンホ

実際に戦闘が始まります

 

明らかに死んだ人がなぜ目を開けて僕を見つめるのか
死んだ人のお腹の皮がどんなに早く固くなるのか
空腹の虫がどれほど気が短く無慈悲であるか


額を貫通した弾丸とはどういうことか
姿が見分けられないとはどういうことか
手足がなくなってしまうとはどういうことか
頭部が落ちてしまうとはどういうことか

 

スンホは恐ろしい光景を目の前にうずくまり、震えが止まりません

 

戦争は英雄の冒険ではない
戦争は栄光の歌ではない
戦争は印刷された活字ではない
戦争は人間を完全に抹殺する


目を開けても何も見えない
耳を塞いでもすべての音が聞こえる

眠る夢の中で僕は包囲されて
夢から覚めるとそこは全て現実だった

(目を閉じて再び目を開けるとスンホの目つきが変わります)

あの暗闇の中に間違いなく誰かがいる
あの暗闇の中に間違いなく誰かがいる

 

歯を必死に喰いしばりながら銃を構え、前に進んで行くスンホ

その目つきは涙をためながらもするどく見開き、しっかりと真正面を向いています

(スンホの目つきが徐々に変わっていく演技に注目です)

 

ソビエトを後ろ盾としていた北朝鮮軍には戦車がありました

戦車の発砲で次々に仲間がやられていきます

ジングは怖さのあまり目をつぶってしまい、動けません

 

「ジング~!!目を閉じてはダメだ!しっかりするんだ!!」
巨大な戦車を前に小さな銃一つで立ち向かうスンホ

「来るな~!!!わぁああああああ!!!!」

大声でわめきながら必死に銃を撃ちます

 

ヘイルはそんな錯乱状態のスンホにしがみつき、必死に引き止めました

 

 

一幕はここで幕を閉じます

 

ダウン文字数をオーバーしたため、二幕①へと続きます

 

※二幕は長くなってしまったため、2記事あります

 

ミュージカル歌詞出処:나무위키

 

 


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