教室内のリーダーの1人である片岡裕貴先生の本を読んでいます。すごくいい本なので改めて紹介しますが、その中で紹介されている論文に衝撃を受けて思わずCheck。

Impact of Attending Physicians' Comments on Residents' Workloads in the Emergency Department: Results from Two J(^o^)PAN Randomized Controlled Trials.

研究疑問  :上級医が「平和だといいね」と言うと研修医が忙しくなるか?
研究デザイン:RCT
セッティング:倉敷中央病院

P1  9-5時で救急患者をみる研修医(169勤務)
P2  2-10時で転院患者をみる研修医(178勤務)
I 上級医に「平和だといいね」と言われる 
C なし
O 主要:診察した患者数、忙しさ、重症感
  副次:ストレス、食事の時間が確保できたか、疲労度など

*平日勤務のみ(休祭日の勤務は除外)

「今日平和だといいですね」と言うと逆に忙しくなるという都市伝説を知らない人はいないんじゃないでしょうか。これを真面目に検証するという偉業を成し遂げたKuriyama先生すごいです。タイトルに絵文字入れたり遊び心も満載。結果はP1で診察した患者数はI群 5.5人 vs C群 5.7人、忙しさは両群 2.8/5 困難感は両群 3.1/5 などなど概ね差がつかず、躊躇せず会話を弾ませよう!という結論

【批判的吟味】★★★★
そりゃフツーに考えたら差がつかないに決まってるのですが、面白いのはP2の主要アウトカムで4.4人 vs 3.9人 (P=0.01)と有意差がついている点。やっぱり多重検定の問題(偶然有意差がつく)は無視できないですね。本文中では結果自体を無視して、0.5人なんて大した差じゃないんで問題なし!と考察でサラッと流している点が素敵です。

多分BMJクリスマス狙いだったんでしょうけど、サンプルサイズ計算がない点など、本気感がやや少なかったためPLOS ONE止まりだったんでしょうか(それでもIF2.8)。真面目に評価するのも無粋なんですが、一応RoB 2に照らしてみますと、

1.割付けの隠蔽化 Some concerns
2.割付けの盲検化 Low risk
3.アウトカムの追跡 Low risk
4.評価者の盲検化 Low risk
5.選択的な報告 Low risk

と、(診察患者数に限れば)RCTとしての質は高めでいいと思います。割付けの隠蔽化について情報があれば言うことなし。ただ、他のアウトカムである質問調査に関しては微妙。研究を行っていることを研修医に知らせないという荒業のおかげで問題はないと思いますが、研修医たちが薄々気付いていた可能性は否定できず、もしそうなら大きく結果に影響します。研究終了後に「気づいていましたか?」という質問して、付録で載せていても面白かったかもしれません。

【コメント】
僕も放射線被曝と子の性別の研究、はよ論文化しなきゃ。片岡先生の本一応紹介しておきます。改めて記事にします。