今回の旅の最後がヒサンなことになった一因は新型コロナウイルス騒動だった。

あれさえなければ食中毒を隠して我慢する必要などなく、機上で食中毒をうったえたり、着陸後に医師の手当てを受けたりすることもあっただろう。

ようやく大事にいたることなく旅を終えたわけだが、さっそく次の困りごとがあった。

3月初めから3週間ほど日本へ行く予定だったのを泣く泣くキャンセルしたのだ。

実家に工事が必要になり、その立ち合いと前後の準備をする予定にしていたのだが、バンコク経由で飛んでいく私がどこかでウイルスをもらい、実家で半分寝たきりの母親(93歳)に移しでもしたものなら、重大な結果になることは明らかで、そのリスクだけは冒すわけにいかなかった。

今後2~3週間で新型コロナウイルス騒動が急速に下火になってくれればいいが、先のことは誰にもわからない。

仕方がないので工務店に連絡して工事の延期をお願いし、航空券その他をキャンセルした。


仮に母親への感染リスクがなかったとしても、3月の日本行きはヤバイ展開になる可能性があった。

たとえば私の滞在中に日本で感染が急拡大したらどうなるか。

ダッカに帰ってきた私は「汚染地域から来た外国人」という理由で入国を拒否されるかもしれない。

経由地のバンコクまで引き返しても、同じく入国を拒否されたら、日本へ戻るしかない。ところがその時すでにタイから日本へのフライトは軒並みキャンセルされており...

さまよえるオランダ人でありますね。


この御時世、ただダッカにいるだけでもどえらいことになるかもしれない。

現時点でバングラデシュでは保菌者・発症者が確認されていないが、本番はまだこれからという可能性はある。

今月はじめ、武漢から引き揚げてきた三百数十名のバングラデシュ人が、経過観察のためダッカの空港近くに収容された。

china_wuhan_bangladeshi_returnees
   工業都市武漢には出稼ぎ労働者が多い

だが彼らにはろくな食事が与えられず、体調を崩しても手当されず、トイレは溢れるにまかせてという悲惨な状態にあるという。

「現時点では保菌者・発症者が確認されていない」とはいえ、それはチェックできていないだけのことかもしれない。

ずさんな防疫体制をウイルスがすり抜けたら、何がおきるのか。

バングラデシュでは手洗いが習慣化しておらず、貧しくてマスクなど手に入らない人があふれており、ひとたびウイルスが拡大を始めればブレーキがほとんど利かなくなる可能性を否定できない。


アフリカのコンゴ民主共和国では、国家による危機管理が機能しなかったせいで、多くの国民が命を落とした。

致死率25~90%といわれるエボラ出血熱が流行しはじめたとき、コンゴ政府は初期症状のある国民に検診を受けるよう呼びかけたが、それは空振りに終わった。

病院に行けば殺されると信じた人びとは家にこもって治療を受けず、事態を悪化させたのだ。

ebola in congo

なお2019年、エボラ出血熱によるコンゴの死者は2000人。もっと恐ろしいことに、同時に流行したはしかによる死者は5000人。危機管理のできない国ではこういう悲劇が繰り返されている。


バングラデシュはどうか。あるアメリカの安全保障の専門家は、危機管理能力においてコンゴと大差ないだろうと悲観的に見ている。

温暖な気候が新型コロナウイルスをやっつけてくれるよう祈ると同時に、もしもの時への備えはしておきたい。

アメリカ政府は武漢でのウイルス拡大が認められた初期に、武漢の領事館駐在員を引き揚げさせ、直後に中国全土に散らばる外交官のほとんどと家族を引き揚げさせた。

ずいぶん大胆な決断だと思ったが、結果的には大正解だった。時機を逸すればアメリカへの民間航空機が運行を停止し、中国から出るに出られなくなっていたにちがいないからだ。

バングラデシュで爆発的な感染が起きれば、私たちにも退避命令が来る可能性がある。

そうなったとき慌てなくて済むよう、少なくとも2~3ヶ月の「旅」の準備はしておきたい。空にしたばかりのスーツケースに、いろいろ詰め込むとしよう。

あえて悲観的なことばかり書いたのは、先進国の発想で行動しておってはアカンと自分に言い聞かせるため。

またとない勉強をさせてもらっているといえばいえるわけで。


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