人間生きていると物事が全てうまくいかなかったりかみ合わなかったりでちぐはぐな日、という1日を経験することがある。まあ今日がまさにそういう日だったのだが、早めに見切りをつけてのんびりするのがいちばんだったりするのにそれが許されない状況で、結局いつもより遅い帰宅となった。疲れてはいるが、うまくいかなかった1日の締めくくりに、なんとなく手に取ったCDを聴く。サリエリのレクイエム。これおそらく買ったときに聴いて以来だな。オランダのペンタトーンレーベルで、音が抜群にいい。小音量でも音像がぼやけず、くっきりとしたステージが表現される。解説によるとこの曲は作曲者が自身の葬式用に作ったものだそうだが、映画”アマデウス”で、サリエリがモーツァルトにレクイエムを作曲させるストーリー(もちろん史実とは異なる)とオーバーラップする。シェーファーはこの辺りをイメージしながらああいう台本を書いたのだろうか。曲調はなんかもっさりした印象で、いかにもサリエリ。この曲が書かれたのは1804年だそうだから、モーツァルトのレクイエム初演から約9年後だが、サリエリはやっぱりサリエリなんだな。仮にもウィーンの宮廷楽長だった人だから、その才能には抜きん出たものがあったのであろうし、今までいくつか買い集めた 彼の作品のCDを聞くと、個々の旋律などは大層美しいと思える曲も多い。でも、共通してそこはかとなく漂ってくるなんとなく大仰な感じは、シェーファーの言うところの”Champion of mediocrities”っていう表現がぴったりくるんだよなあ。聞いていると、自分が卑小な”One of them”であることがより自覚させられるようで、なんだか今日の気分によくフィットする。これ聴いたらもう寝ましょう。

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