ブルックナー 交響曲第9番 大野和士さんがピアノを弾きながら解説。ブルックナーの見た彼岸の世界 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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Youtubeを色々と見て回っているうちに一つの動画に見入ってしまいました。

東京都交響楽団の音楽監督大野和士さんが2019年9月の定期演奏会の前にその時演奏されたブルックナーの交響曲第9番について語った動画です。

ブルックナーの交響曲第9番は私の最も好きな曲の一つで、随分良く聴いているのですが、それでもこのマエストロのお話は一つ一つが新鮮でこの動画に惹き込まれました。

ピアノを弾きながら和音の進行を実際に音を出して説明してくれているのでとてもわかりやすくなるほどとうなずかされることばかりです。

マエストロは言います。この曲は8番までの交響曲と大きく変わっているのです、と。

「それは、死を前にした人生観の変化かもしれません。」

ここから、こうなり、さらにここまで行ってしまいます、と一つ一つの転調をピアノの音で聴くと説得力があります。
8番までの交響曲でも細かい転調を繰り返すのがブルックナーの一つの特徴でもありますが、9番ではさらにそこからまた大きく踏み出しているのだそうです。和声学での約束事を超えて無調音楽の世界に近づいているのだと。

「「掟を破ってしまった罪人の感覚」のような物が8番までのシンフォニーとの変化をもたらした、のかもしれません。」
ここでマエストロは、さらに「人生の中で見落とした物を見つけようとした」「危険な世界を垣間見た」と言葉を重ねます。

「第3楽章のアダージョの出だしは完全に無調の世界。それはまさにシェーンベルクの先駆けでマーラーよりもはるかに早く、誰よりも早かったのです。」

そして、曲の終わり。マエストロは静かに祈るようにピアノを弾きます。

しばらくの沈黙の後
「ブルックナーは大きな遠回りをして、奈落の底を見て、より高い次元に到達していった。そしてそれはおそらく宗教的な概念を超えた世界、人間はどこから来たのかとかそう言うような世界に彼は入っていったのではないでしょうか。そのためにすべてを見る必要があったのでは無いかと思うのです。」

充実した時間でした、こんな音楽の授業があったら学校がもっと好きでいたかも知れませんね。なんて(笑)

ここまで聴くとやはりこの曲を無性に聴きたくなってしまいました。

残念ながらマエストロ大野のブルックナーはYoutubeにはありませんでしたので、今日はギュンター・ヴァント指揮ハンブルク北ドイツ放送交響楽団の演奏を聴こうと思います。