私の生活の中に音を立てて侵入してきた作曲家(笑)ヨハン・セバスチャン・バッハ | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

クラシック音楽を中心にした好きな音楽と読書感想、日々の雑感などを思いつくまま気まぐれに書き綴ります

 

大学生になって暫くした頃、私の生活の中に思い切り侵入してきた作曲家がいます。

ヨハン・セバスチャン・バッハ。


それまであまり興味も関心も持てなかった作曲家です。小中学でも高校でも音楽室にはいかめしい顔の肖像画が必ずありましたが、私には関係の無い音楽家だと思っていました。(たぶん高校生の時にカザルスの無伴奏チェロ組曲を聴いたと思うのですが、その良さなど一つも分かりませんでした。そう言えばシゲティの無伴奏バイオリン、なんていうのもあった。ただただ下手くそな演奏だと思っていました(汗))


私は中学生の時、友達の付き合いで合唱部に入り、高校生の時もなんとなく3年間合唱をやっていました。特に熱心な部員だったわけでも無く、慢性的な男声メンバー不足のために辞めさせて貰えなかった、と言うのが正解のような気もしますが(笑)

その流れで大学に入ってもついうっかり(笑)合唱団に入ってしまいました。

その大学の合唱団に入って数回目の練習の後、「行くぞ。」と言う先輩の声に引きずられ訳も分からずに連れて行かれたのが地元の一般の男声合唱団の練習。それは大人とともに歌う初めての機会でした。決して人数は多くないのに何だか圧倒される声量。バスの声で床が震えるのを感じたのは初めてのことでした。

またそれから数日後、先輩から半強制的に押しつけ・・・、いや勧められて購入した(笑)のが同じく地元の混声合唱団の演奏会のチケット。曲目がJ.S.バッハの「マタイ受難曲」です。私には初めての曲でした。

この混声合唱団も一般の合唱団ですがバッハの曲をメインに活動しているグループだという事。またメンバーの中には大学の合唱団の先輩達もかなりいましたし、この「マタイ受難曲」では、先輩の一人がバスのアリアを、一般の男声合唱団の方のメンバーの一人がテノールのアリアを歌うことになっていました。

アマチュア合唱団の演奏会ですから、それほどの期待もせずに気楽に聴きに行ったのです。長い曲のようだし歌詞も分からないし退屈しないかな・・・、等と考えながら。

しかしそれは杞憂でした。歌詞は訳詞の字幕がスライドで表示されていました。そして。長さを感じることも退屈する暇も無い演奏だったのです。(もちろんアマチュア合唱団の演奏ですから録音などで聴いたらあら探しも出来たでしょう。でもその時は演奏の熱気でそんなことを考えることも出来ませんでした。これが生の演奏の良さなんでしょうね。)

私は出不精で実演もあまり聴きに行かない方ですから(特にここしばらくはかなり引きこもり状態でした(笑))、偉そうなことを言っても仕方が無いのですが、この演奏会の感動は私の音楽体験の中で一二を争うくらい大きな物でした。

この合唱団が弘前ジングフェライン。指揮者は濱田徳昭先生でした。


その数日後、先輩達に連れられて私も弘前ジングフェラインに参加。練習を始めた曲は、J.S.バッハの「ロ短調ミサ」。


まあ結局大学生のうちにこの合唱団で濱田先生の指揮の下「ロ短調ミサ」「ヨハネ受難曲」「マタイ受難曲」等のバッハの大曲やヘンデルの「メサイア」などの演奏に参加することになります。

バッハは難しいですし、長い曲ですから演奏自体大変でもあります。でもそれだけに歌い終わった時の感動の大きさは格別です。
「マタイ受難曲」を始めとしたこれらの大曲はわたしにとって聴く度にあの頃の、所謂青春時代の色々な思いが混ざり合って湧き上がる曲でもあります。

ヨハン・セバスチャン・バッハが私に残していった物は小さくは無かったのです。


マタイ受難曲を人に勧めるとしたら、古い演奏ならカール・リヒター指揮ミュンヘンバッハ合唱団&管弦楽団のディスク(1958年録音)、古楽器の演奏で小編成の物でヘルマン・マックス指揮の録音。あと一つとなるとガーディナーやヘレヴェッヘも捨てがたいですが、日本人がここまで出来るのだと感動させてくれた鈴木雅明指揮バッハコレギウムジャパンの演奏をあげたいと思います。

それとあとひとつ。メンゲルベルク指揮アムステルダムコンセルトヘボウによる歴史的録音。

生意気盛りの学生時代にはこの演奏は受け入れられない物でした。と言うか受け入れてはいけない演奏と思い込んでいた気がします。大きなテンポルバートを聴く度に「全くこれだから。」などと馬鹿にしていたこともあったと思います。

でも最近になってこの録音を聴くと、・・・良いのです、これが。心を揺すられるような自然に湧き上がる感動があります。昔から多くの人に評価されていたのは伊達では無かったのですね。

今ではこれも好きな演奏の一つです。

まあ、数え上げ始めたら名演は数多くありますね。クレンペラーも凄いし古楽器演奏でも色々と・・・。
いずれにしろ多くの人にこの「マタイ受難曲」、それと「ロ短調ミサ」「ヨハネ受難曲」に触れてみて欲しいと思います。これらはすべて人類の大きな宝物だと思っています。