真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「絶倫ギャル やる気ムンムン」(昭和60/製作:獅子プロダクション/提供:にっかつ/監督:滝田洋二郎/脚本:高木功/企画:奥村幸士/撮影:志賀葉一/照明:吉角荘介/編集:酒井正次/助監督:佐藤寿保/監督助手:上野勝仁・末田健/撮影助手:片山浩・鍋島淳裕/照明助手:尾畑弘昌/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:滝川真子・橋本杏子・彰佳響子・夏樹かずみ・原みゆき・外波山文明・池島ゆたか・島田隆太・豊田一也・周知安・幡寿一・田宮良一・津田次郎・丸末虎男・螢雪次朗・堺勝朗)。出演者中、彰佳響子がポスターには秋吉響子で、島田隆太は嶋田隆太。豊田一也から丸末虎男までと、何故か堺勝朗が本篇クレジットのみ。打者の手元で動く変化球が如く、彰佳響子(a.k.a.あきよし杏子)が絶妙に不安定。提供のにっかつは、実際にはエクセス。
 トラペスト教会のポワロ司祭(螢)が「ハイ」とおどけるやうにタクトを振り、少年少女ならぬ、修道女合唱団。面子は手前から、セーコ(彰佳)・フミエ(橋本)・固有名詞不詳の夏樹かずみに、リーダー格のマコ(滝川)。ポワロが楽譜を捲ると右側の頁にヌード写真が挿んであるにも関らず、正面に回つた鼻の下を伸ばすカットだと画面向かつて矢張り右側、即ち逆方向を凝視してゐるのは、それは目線に問題はないのか。兎も角、ドジなフミエは皿を落として割つてみたりする、教会の日常にクレジット起動。脚立に上り拭き掃除するマコの、チラ見せどころでなくガン見えのパンティに垂涎するポワロが、気づいたマコに怒られてタイトル・イン。マコが両手をバッテンに大きく交差すると、ポワロに水が降つて来るアバンのオチに時代が感じられる。亡父共々、俺は頑強にドリフ派だつたんだけど。
 深夜の聖堂、フミエが講壇に潜り込んでセブンスターを吸つてゐたところ、見るから夜逃げ風情のポワロが現れる。その場に続けてマコが、単調に左右(ひだりみぎ)往復するカメラがコントかよ。ちよつと話があるとか称して、ポワロはマコに抱きつく。イエス様も年に一度クリスマスにはなさるだなどと、七夕感覚の斬新な破戒にマコもマコでコロッと納得、二人は大絶賛和姦に突入。起動せよ、浜野佐知のレイジ。さて措きアテられたフミエがワンマンショーをオッ始める、ある意味綺麗な流れまではいいものの、煙草の不始末で徳用マッチが発火。足に火が点いた弾みで対面座位が倒れたポワロが、後頭部を強打し即死、戯画的なコンボが堪らない。一同がひとまづ荘厳にポワロの葬儀を執り行つてゐると、金貸しの銭蔵(池島)が乗り込んで来る。ポワロが教会を担保に、三千万借りてゐたといふのだ。期限は三日後のクリスマス、全員孤児院出身の要は世間知らずながら、四人は一週間で世界、もとい三日で三千万を作るべくとりあへず東京に聖書を売りに行く。
 配役残り豊田一也から丸末虎男までの概ねエキストラ部が、基本引いた画が多く特定不能。そもそも、登場順に坊主×乞食×ショーパブ「スター85」のキャッチ×その他キャバ客二人×刑事と鑑識に、山西道広ぽいサンタ泥。明確に見切れる者を数へて行くと、二つ足らない頭数―キャバ客が演出部の可能性は高い―も合はないが。それと、周知安・幡寿一がそれぞれ片岡修二・佐藤寿保は周知として、津田次郎といふのは津田一郎の変名か。だとしたら、もしかすると津田次郎は鑑識かも。島田隆太はセーコに声をかける、ソープを三軒経営する女衒。堂々のトメに座りつつ、ポスターに名前が載らない意味が判らない堺勝朗は、ラーメン屋にてマコを見初める、財界の大物・ヒラシマニヘイ、三千万をおいそれと用意出来る御仁。外波山文明は、ヒラシマ殺害事件の捜査を指揮する係長。原みゆきは銭蔵金融の事務員、兼情婦。
 翌年には「コミック雑誌なんかいらない!」を発表したのち量産型裸映画から足を洗ふ、滝田洋二郎の昭和60年最終第六作。買取系ロマポ全七作の、第四作に当たる。結局ポワロの野郎が何に散財しやがつたのかも明らかにされないまゝ、四人のシスターが教会の存続を賭けて立ち上がる奮闘記。と掻い摘めばど定番の物語に思へなくもないものの、全体のトーンがどうにも一貫しない。ニッコリ笑つた滝川真子が太股まで露に修道服の裾を捲り、“修道院をピンクジャック!!”なる痛快な惹句も踊るポスターはありがちかお気楽な艶笑譚を予想させる割に、高木功の脚本は終盤不用意なサスペンスにスイング。マコ当人とイエス様以外にもう一人、の件はサマになるにせよ、サンタの靴の色に関しては如何せん細部を穿つに過ぎる。藪蛇に「砂の器」ばりの哀切を叩き込む、フミエが何処へと知れず湖畔を去るショットも、流石に木に接いだ藪から棒、きちんと木に木を接いでんぢやねえか。何より裸映画的に致命傷なのが、銭蔵に凌辱されたフミエの姿に胸を痛めた、カズミ(仮名)が色仕掛けで銭蔵金融を急襲する件。どさくさに紛れてカズミが腹に入れた、即ち消滅した借用書にその後触れないでは、夏樹かずみの濡れ場が殆ど単なるノルマごなしに堕してしまふ。五本柱が全員本格的に脱いで絡む、女の裸的にはその限りに於いては十全ともいへ、いつそ徹底してスチャラカ攻めて呉れた方がまだしもな、ちぐはぐな一作ではある。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 尼寺の情事 ... 覗きがいつぱ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。