税抜 19,800 円で 520g・コンバーチブルの Windows PC,「NANOTE UMPC-01-SR」がドン・キホーテから発売

これはすごい!

NANOTE UMPC-01-SR
NANOTE UMPC-01-SR,公式サイトより引用

これまでも尖ったローエンド PC を発売してきたドン・キホーテ PB「情熱価格」から,とんでもないものが発売されてしまいました。それが「NANOTE」です。読みは「ナノート」とのことです。GPD Win・GPD Pocket を皮切りに中国で盛り上がってきている UMPC タイプのマシンであり,ヒンジを360度展開してタブレット形態にすることにも対応したコンバーチブルタイプです。

性能が低い代わりに税抜 19,800 円というすさまじい価格を引っさげてきており,仕上がりによってはこれまでの UMPC を過去のものにするかもしれません。

スペック

公開されている主なスペックは以下のとおりです。

  • 液晶 7 型タッチパネル 1920×1200
  • CPU Atom x5-Z8350
  • RAM 4GB
  • eMMC 64GB
  • 重量 520g
  • バッテリ 7時間(条件不明)
  • Wifi b/g/n, Bluetooth 4.0, microSD(最大 256 GB), USB 3.0 A×1, type-C×1, イヤフォン出力, microHDMI, ウェブカメラ 0.3MP
  • Windows 10 Home

詳細は,上掲の公式サイトおよび PDF ファイルをご覧ください。

寸評

貧弱ではありますが,バランスがよく死角のないスペックです。この値段で Windows 10 Home プレインストールです(記載はありませんが,おそらく 64bit でしょう)。とはいえ,特に CPU は日常のウェブブラウジング程度でも限界を感じるスペックですので,自分でしっかり最適化できる,ある程度詳しい人向けです。Home のため Bitlocker 等を利用できずモバイルではセキュリティ上の懸念がありますが,まあそんなことを気にするようなマシンではないでしょう。microHDMI 出力まで持つ拡張性の高さもポイントです。USB type-C ポートがあるようですが,公式サイトの図には「充電用」との記載があり,規格に準拠していいるかは不明です。ただの給電コネクタと思っておいたほうがよいかもしれません。

CPUAtom x5-Z8350 は Cherry Trail のプロセッサで,同じくドン・キホーテの「ストイック PC 2」や「ジブン専用PC&タブレット U1」と同じ,タブレットでよく見かける CPU です。2016 Q2 の発表の古い CPU ですが,まだまだあるようです。PassMark スコアは執筆時点で総合 946・シングルスレッド 486 となっていますが,4コアでの数字で(おそらく)冷却も弱く,グラフィック性能も省電力重視で低めとなっているため,体感としてはもうちょっと下になります。ちなみに GPD Pocket 2 下位モデルや OneMix 1S の Celeron 3965Y2 コアで総合 1203・シングル 878,Chuwi MiniBook の Celeron N41004 コアで総合 2528・シングル 1025 となっています。この性能を「使える」と判断するか「使えない」と判断するかは人によって分かれるところでしょう。個人的には使えないことはありませんが,正直なところ Windows で使うにはギリギリのスペックかと思います。Atom でタブレット系のハードウェア構成のため Linux にも向かず,なかなか悩ましいところです。

CG で確認できるキーボード配列はやや強引に詰め込められたものではありますが,他機種はどうしようもなく混沌としていることを考えると,大きさの割には使いやすい部類であると言えそうです。ローマ字入力派としては Delete と ^ は逆のほうがよかったですが,それくらいです。特筆すべき点として,日本語入力で多用する F7 や長音符が自然な場所にあって Fn 組み合わせなしで押せるのはかなり高評価です。日本語入力には近時最高の機種かもしれません。もっとも打鍵感は未知数であり,油断は禁物です。CG には赤外線型ポインティングデバイスのようなものが見受けられますが,プレスリリースでは特に言及がないため詳細は不明です。実装されているなら,B の直下にあるため使いやすそうです。

冷却については,製造コストを考えるとファンレスなのではないかと思います。Atom の中でも下位のため,ファンレスでも特に問題はないはずです(Celeron N4100 の SDP が 4.8W なのに対して,Atom x5-Z8350 の SDP はたった 2W と半分に満たない数値です)。

ディスプレイはなんと 1920×1200 WUXGA でタッチパネル対応です。ただし液晶の種類には具体的な言及がなく「高彩度液晶」とあるのみなので,TN 液晶かと思われます。もっとも,PC としての利用では視野角はそれほど問題になりません(→ 発売された実機を見る限り,IPS のようです)。

バッテリ駆動時間は 7 時間とのことですが,おそらく ODM 製造元の公称値で,JEITA 2.0 等の条件には準拠していないものと思われます。したがって,実際にはこれより大幅に短いものと考えておいたほうがよさそうです。

筐体については特にプレスリリースに言及がありません。コンバーチブルタイプの既存機種はいずれも金属筐体ですが,この価格なのでプラスティック主体の筐体である可能性もあります。いずれにせよ,この値段でこの機構となるとヒンジの耐久性が心配です。このタイプのヒンジは Let’s note でも対応に苦慮しており,AX2 初期モデルではすぐにここが故障する問題があるほか,改善後の機種でもあまり頻繁にタブレット形態にして使うと変形して緩んできます。ヒンジがゆるむと閉じた際に本体側と液晶側がうまく噛み合わなくなり,液晶ベゼル割れにつながります。基本的には PC 形態で使うのが無難かと思います。ヒンジ以外の堅牢性についても,このサイズのマシンは GPD など一定のノウハウを有するベンダの製品でも液晶が割れやすいため,全くのノーブランド品を輸入したものとみられるこの製品では扱いに気をつける必要がありそうです。

価格は半分,性能も半分

久しぶりにワクワクできる PC が出ました。実は私はこれまでにこの手のマシンを何度か購入したのですが,私のいまの生活スタイルでは 7 インチのミニノートというコンセプト自体がなかなか値段に見うほど便利とは言えず,故障も怖いためすぐに売ってしまっていたという経緯がありました(私がおすすめするのは Let’s note RZ シリーズです。キーボードやディスプレイの大きさや筐体堅牢性を考えると,これくらいが PC 小型化の限界だと思います)。

その点 NANOTE UMPC-01-SR であれば,新品でたった 21,780 円という価格です。これまで通り技適にも対応して PSE 表示付きの AC アダプタが同梱されているはずですし,自然故障には 1 年間の国内対応保証が付きます(追記:後述する通り非常に安価に延長保証を付けられるため,必ず付けておきましょう!)。この手のマシンはいずれにせよ真面目な用途には使えませんし,壊れやすくもありますから,安くて手軽なのが一番です。しかも,安いだけではなく,この手のマシンにしてはキーボードの配列も良好です。一方で,まだ不明な点が多く,発売に際してさらに詳細が明らかになることが待たれます。

ODM について

筐体デザインや仕様から,「Pretech F700mi」,「Peakago」といった既に発表されている機種と同じものだとみられるようです。もしそうであれば,ベースモデルは Peakago の ODM 元として指摘されている「Chitech CHT-Y70」という機種かもしれません。

F700mi はこちらです。解像度が「1920 x 1080」となっているのはおそらく誤記でしょう。Pretech も ODM ベンダのようですが,Chitech のものより単価が高く情報も少ないので,製造しているのは Chitech (またはその更に上流の未知のベンダ)ではないかと思います。ややこしいですね。

実機の動画はこんな感じ。

天板と底面は金属製とのことで,工作精度も高そうです。液晶もデグレードされていなければ IPS のようです。なお,NANOTE UMPC-01-SR では指紋リーダやペンのデジタイザはオミットされているはずですが,仕様通りです。

ただし,タッチ誤認識(カーソル飛び)が見られることが気になります(初期の機種でよく発生した現象で,設計・耐久性に問題があるかもしれません)。この動画が撮影された昨年10月の時点で「デバッグ中」とのことですから,既に解決していることを期待したいです。この症状が出てもタッチパネルを無効化すれば普通に使えますが……

あと,ベースモデルのキーボード配列は初代 GPD Pocket と同じようです。日本語キーボードの配列を提案した人はかなりグッジョブですね。

発売

20/05/01 3:30 追記:

ドン・キホーテは今も深夜営業しているようで,早くも手に入れている人が続々と現れています。

とりあえず,以下のような感じの模様。詳細は上掲の Twitter 検索からご確認ください。

  • Atom x5-Z8350 とはいえ発熱は結構ある
  • 一般的な仕様をひととおり抑えている(赤外線式ポインティングデバイス,IPS 液晶,64bit OS,スピーカ)
  • タッチの認識にやや問題あり?
  • 画面回転用のセンサは正常に機能しない?
  • PSE 表示等は「株式会社アール・ダブリュー・シー」

20/05/01 17:00 追記:

ええと,ドンキに寄ってみたけど安定の売り切れでした。仕方ない。

品質にはやはりばらつきがあり,初期不良も少なくないようなので,購入できた方もしっかり検品したほうがよさそうです(もっとも,交換用の在庫は確保していない模様)。

100円で登録できる電子マネー majica 払いにすることで保証が1年延長の2年,1000円の掛け金で2年延長の3年,3000円で4年延長の5年になるようです。自然故障のみですが条件は良好です。購入時はお忘れなく。

Ubuntu 20.04 が問題なく動く模様。てことは,Xubuntu や Lubuntu を入れればもはや普通に使えそう。私が普段使っているマシンの中で一番低性能なのは Debian を入れた Celeron SU2300 機なので,それと比べればハイスペックです。Windows ではカツカツの 4GB RAM や 64GB eMMC も,GNU/Linux でならけっこう余裕があります。次は安定性ですが,ドライバさえあれば大抵のトラブルは個別撃破できるのでなんとかなるでしょう。

Nanote P8

2021年4月20日,後継機種の「Nanote P8」が発売されました。

ただ,この機種はあまり欲しくなりませんでした。理由は以下のとおりです。

  • キーボードの配列が悪化している。国産品並みに考えられた配列になっていた前機種の面影はない。個人的には,ここが最大の欠点。
  • 分解写真によると,スペースの関係か,バッテリが2つに分割されている。これによりバッテリ寿命が短くなることが予想される。合計したバッテリ容量自体も前機種に比べて減っている。
  • 複数の報告によると,電源は Type-C 形状ながら PD ではなく単純な 12V 印加の模様。前機種は 5V だったため事故には繋がりにくく市販品との互換性も一応あったところ,市販品との互換性を持たないばかりか,誤って別の機器に接続させた場合に破損させるおそれがある。
  • Celeron N4200 をこの筐体サイズでファンレス駆動させているため,通常の使用でも相応の高温になると考えられる。もっとも cTDP が下限設定であれば,それほど大きな差にはならないはず(その場合性能向上もそれほど大きくはならない)。
  • 価格が 1.5 倍になり,GPD 等もう少し実績のあるベンダの旧機種が視野に入ってくる。

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