エンタメ感想製作所

音楽や映画、ゲームなどの感想・レビューを素人なりに投稿。専門知識はないけど好きな気持ちは皆平等。

【ライブレポート】おかえり、僕らが愛した『通常営業』 UNISON SQUARE GARDEN「USG 2020 "LIVE (in the) HOUSE"」

15周年のお祭りを終えたUNISON SQUARE GARDEN。彼らにとって2020年は、ロックバンドが当たり前のライブを当たり前にやるといういつも通りに戻る1年になる筈だった。

ところが、新型コロナウイルスの流行により音楽は一様に歩みを止めることになり、ユニゾンだけでなく業界全体が当たり前を変えることとなった。
その一環として誕生した無観客によるオンラインライブは、いつものライブの代替にはならずとも、音楽の新しい楽しみ方として有意義なものだと思う。だけど、やっぱり僕らが当たり前に享受していたライブとは別物で、いつも通りではなかった。

そんなオンラインライブをユニゾンが開催した。
ライブハウスとインザハウスを掛けた、ユニゾンらしいタイトルのライブ。そこでユニゾンが見せてくれたのは、ただのロックバンドが最高の音を鳴らしてライブをする「いつも通り」の三人の姿だった。

セットリスト

1.mix juiceのいうとおり
2.オトノバ中間試験
3.桜のあと(all quarters lead to the?)
4.きみのもとへ
5.君の瞳に恋してない
6.オリオンをなぞる
7.I wanna believe、夜を行く
8.スカースデイル
9.静謐甘美秋暮抒情
10.mouth to mouse(sent you)
11.ドラムソロ
12.Phantom Joke
13.to the CIDER ROAD
14.場違いハミングバード
15.シュガーソングとビターステップ
16.箱庭ロック・ショー
17.フルカラープログラム
18.弥生町ロンリープラネット
19.春が来てぼくら

時刻は20時ジャスト。
いつものライブと同じく、イズミカワソラの『絵の具』がステージにこだまする。
メンバーの登場を待っていると、舞台裏に入場するメンバー達の姿が画面には映し出された。袖で待機する三人それぞれステージに向かっていう後ろ姿を眺めることができるのは、オンラインライブならではの演出だ。

『今日までの感情が明日を作るから』
ステージに三人が揃うと『mix juiceのいうとおり』ラスサビ後半の歌詞が歌われた。音源通りではなく、ライブに来なければ見られないものを必ず見せてくれる。ユニゾンはそんなバンドだということを、いきなり思い出させてくれた。
そしてこの歌詞で始まった意味を、僕はどうしても深読みしてしまう。どこまで田淵が狙っているのかは分からないけど、今の情勢を踏まえると励まされた気持ちになれた。本人は口が裂けてもそんなことを公言はしないだろうけど。

口にはしない田淵のメッセージを深読みしてしまうポイントは他にもあった。
ニゾンを語る上で欠かすことができない「フルカラープログラム』は、武道館で見せたマイクを通さないラスサビ前のアカペラが披露された。「完全無欠のロックンロールを」マイクを通して宣言すると、メンバーの演奏も合流して誰もいない客席が、彼らの背中越しに映し出された。
そこに誰もいなくてもロックバンドがやることは変わらないから、安心してくれというメッセージかもしれないし、そこに誰もいなくてもファンは確かにこの場に集まっているというメッセージなのかもしれない。
新曲『弥生町ロンリープラネット』では、最後の歌詞である「そして僕らの春が来る」というラストフレーズを受けて『春が来てぼくら』が演奏された。これだけでもニクい演出だけど『春が来る』というところにスポットライトが当たっているのが気になった。冬のように厳しい今もいつの日か過ぎ去って、穏やかな春がやってくるということを暗示しているのかもしれない。

こんなことを言っておいて全くそんな意図がなかったら恥ずかしいけど、こうやって色々勝手に考えるのは僕らファンの特権な気がするし、田淵も受け取った側が勝手に解釈してくれってよく言ってた気がする。だから許してくれ。

僕らは当然ユニゾンのライブを待ち望んでいたので、オンラインライブといえども久々のライブにはすごく心を踊らされたと思う。だけど僕ら以上にライブを待ち望んでいたのはユニゾンだったんだなということが、何とも楽しそうにライブをする三人を見て感じ取れた。
そして改めて、UNISON SQUARE GARDENというバンドの強度を思い知らされたのであった。観客に盛り上がりを委ねない媚びない姿勢でライブに向き合い続けていたからこそ、無観客であろうが空気感まで全く変わらないクオリティーを見せてくれた。
ライブの質が変わらなかったからこそ、オンラインならではの見せ方も冴えていたと思う。冒頭のステージ裏の姿であったり、メンバーによりフォーカスしたカメラワーク、ドラムソロでは貴雄の頭にヘッドカメラを装着して、普段は見られない角度からドラム捌きを見ることができた。他の二人もカメラに向かって演奏してみたりと、いつも通りのステージの上でいつも通りのことを特別にやっていたのが、今回のオンラインライブだった。

ラストには、アルバムの発売日の発表と、来月2度目のオンラインライブが開催予定であることも発表された。
遂に本格始動した2020年のUNISON SQUARE GARDEN。そこには今まで通り何も変わらないロックバンドの姿があった。
おかえり僕らの通常営業。そしてThank you,ROCK BAND!



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