一年ぶりに『オール讀物』を購入しました。
以前は頻繁に読んでたのですが、私みたいな読者が増えたせいでしょうか、2019年より年10回の刊行となったそうです。
購読する当てもないくせに寂しくなりました。
出版社にも、誌面に力作を出す作家さんたちにとっても、厳しい時代になったのですね。
ざっと目を通して、思わず瞠目、こんなに面白く読んでもらいたいという作家の魂が雑誌に入っていたのだ、という事に改めて気づいたのです。
文学を読んだり、真似事を書く事から遠ざかっている今、「プロの作家はやはりプロだけあるのだ」と思いました。
とはいえ、今天下の『オール讀物』に書く内容にかなり気を遣わねばならない時代でもあるようです。
本屋でチラ見した文庫本で、スマホ絡みの殺人事件をテーマにしてかなり人気が出ていました。
こういうの興味惹きますが、反響に怖いものがありますからね。
個々の小説はじっくり味わうとして、以前はなかった「短歌の部屋」に目が留まりました。
読者の投稿した短歌です。
とても素敵な歌に出会いました。
「あの橋を渡らなかった友と逢う
あの橋渡ってしまった私」
この歌から、長い物語が出来そうです。
山の危険なつり橋を渡った冒険好きな私と渡らなかった友達、と逢う。
そんな話ではなさそうです。
橋とは人生にかかる橋の事でしょうか?
同じ場面に来ていた友は、同性と思えます。
橋は人生の岐路だったのかも知れません。
「渡ってしまった」という言葉に秘められた後悔、それはどんなものだったのでしょう?
渡らなかった友は今どんな立場にいるのでしょう?
ただ、「会う」のでなく「逢う」という言葉に密度の深い交友関係を感じます。
多分文学って、こんなイマジネーションの世界に遊べるところに妙味があるのですね。
初めて小説なるものに接してから、何十年も過ぎてしまいましたが、忘れていた思いが蘇ったようです。