2019年8月15日木曜日

初めてのコメント頂きました!!

嬉しすぎて記事にしてしまう単純さ 草


初めてコメント頂きました!!!

 あまりもの嬉しさに記事にしてしまう単純な私。乙

 残念ながらせっかくコメント頂いているのですが、お相手の方のアカウントが解らず返信できませんでした。よって調子に乗って記事を一本書いてしまおうと思った次第です。


 こちらが頂いたコメント♪ ↓↓↓

 
お店にか商品として出るまでには
やっぱり大変な作業があるんですね。
熟成肉食べたくなりました。
 ありがとうございます<(_ _)>

 そうなんです、作業と工夫の連続です。でもどんな業界でもいろいろな工夫を経て商品化されていると思いますので、僕達の食肉業界に限った話ではないと思うのですが、やはり ”餅は餅屋” と申しますか。食品の中でも牛肉はとりわけその全てを知るには難しい食品だと思います。

 僕は今のお肉屋さんに勤める前はビストロに勤めていました。パンを焼いたりパスタの手打ち、コース料理を出している支店もあったので、デザートも店内で仕込んでいました。つまりかなりの幅のある食品を取り扱ってきた訳ですが、一番牛肉が勉強しにくかったと思います。

 これは多分焼肉屋さんでも同じことが言えると思います。牛肉は骨付きの状態で平均450kg。大きな部位に平均32個に分かれます。その全てを消費期限内に通常の飲食店で取り扱う事は至難の業。また骨を抜く脱骨という作業(業界では捌きと言います)や硬い筋や余分な脂を取り除く作業(これは筋引きと言います)が必要です。

 この売る力や商品化する技術や体制、牛肉を精肉化する技術は一朝一夕では身につける事は出来ません。また牛肉を仕入れる際に大きな骨付き肉で見極めて仕入れることは、仕入れ業務の中でも一番経験を必要とされる仕事です。この大きな骨付き肉を ”枝肉” と業界では呼んでいます。

 枝肉は卸売市場で主に仕入れます。というか枝肉を生産するには屠畜しなければいけません。家畜を屠畜する事は ”屠畜場法” という法律で厳しく管理されており、このことで消費者に安心で安全な食肉を届けることが実現できます。兵庫県内にある屠畜場は全部で7か所、その内屠畜後の枝肉を活発に卸売市場で ”競り” を行い取り扱っているのは姫路の和牛マスターという屠畜場と神戸の西部市場の2か所です。加古川は週2回、その他は競り自体を行っていない屠場です。

 (※その他の屠場で屠畜される家畜は、相対取引という取引形態でその市場に出入りしている業者さん達だけの間で流通しています。)

 競りは単純に申し上げますと、自分が欲しいと思った牛肉に一番高値を付けると手に入るシステムです。が、なんでも高値で買い上げると当然利益は出ませんし、牛肉に対する価値観はその仕入れる方の価値観に左右されます。つまり好みが出てくるわけです。また誰が見ても価値のある牛肉は当然高い値段がつきますので、如何にして自分の欲しい品質を出来る限り低価格で仕入れるかが勝負の基本です。

 ところが仕入れに来ているのは当然自分一人ではありませんので、自分が欲しいと思っている牛肉は誰かも求めています。そうすると必然的に価格は上がって行きます。これが競りのシステムです。テレビなどでよくやっている競りは漁協さんや果物・野菜の手競りですが、(手で自分の意思を表して、購買の意思を示す競りのシステム)現在ではそういった手で競ることはほとんどありません。機械装置によって意思表示します。

 あまりにも安く買おうと競らないでいると何も手に入りません。今日も手ぶらで帰ったのかと他の業者さん達に見られてしまうので、そこそこ競る、たまに無茶するぐらいじゃないと買えないのです。このやり取りが何時になってもドキドキします。僕はサラリーマンですから、会社の資金を使って競ります。当然赤字覚悟で競る場合もありますが、そうすると怒られます、社長に。

 競りに参加するには舐められない事も大事、意地を張りすぎて赤字全開で競り落とすと社長に全開で怒られる、こういった事をしのぎつつ今日も牛肉を仕入れています。まあ僕のスタンスは出来る限り敵を作らない、というスタンスです。仕入れに来ている業者さん達はほとんどが百戦錬磨のツワモノぞろい。ライバル同士で激しく火花を散らしていますが、僕のように一般消費者向けに販売している小売店では購買力が違うので、こういった業者さん達とはやり合いすぎないように注意しています。

 当然業者さん達とはその他の取引でお世話になる場合もあるので、そこのところは良いバランスで付き合わなければいけないのです、いわゆる業界のしがらみってやつですかね~ それに仕入れに来ている業者さん達は主に社長連中や経営中枢の方々ばかり。僕のような中間管理職は少ないです。決済できる力が違うので、太刀打ち出来ない、というか太刀打ちしません!!www

 さて苦労(?)して仕入れた枝肉を今度は熟成させていきます。枝肉の状態で熟成させることは、様々なメリット・デメリットがあります。これらを自分たちの考えている状態に導きながら調整して熟成させます。枝肉を取り扱うお肉屋さんは本当に少なくなってきました。お肉屋さん自体が減少し続けている訳ですから当然ですが、骨を取り除く作業、通称捌きの出来る職人さんはもう本当にレアな人になってきています。

 枝肉熟成は求めている状態まで熟成させて捌きます。僕の勤めているお肉屋さんではだいたい2週間熟成させます。骨付きの状態で酸素残存化の大気中で熟成させると、牛肉は独特の芳香を放つようになります。熟成香と呼ばれている香りです。好気的条件(空気中という意味)により活動する微生物が活動して出来たり、筋肉中や脂肪中の成分が化学的反応(これは逆に嫌気的反応、つまり酸素無し状態も含む)により醸成される成分です。

 良い品質の枝肉を収めている冷蔵庫に入ると、美味しそうな食欲をそそる香りがします。よそのお肉屋さんに行く時、枝庫という枝肉を吊り下げている冷蔵庫に入ると、そのお店がどういった品質の牛肉を取り扱い、販売しているのかがひと嗅ぎでわかるという(一目やないんかーい)職業病みたいなものですねー、もちろん陳列されている牛肉でも解りますが、鼻の方がなんだかプロっぽく感じるので、鼻押しで行きます。w

 熟成と一口に申しましても、様々な業界内での定義があり僕が見学したお肉屋さんで最短3日で熟成肉として販売しているお肉屋さんを見た事があります。法律で熟成について定義していないので、3日から最長で3か月までのお肉を熟成肉として取り扱っているお肉屋さんがあります。そろそろ法律化の声が聞こえてきている業界内ですが、まだ有識者内での検討に留まっている模様です。

 この熟成を法律で定義しよう、という動きはどちらかと言うと事故防止の観点からの動きです。事故とは熟成肉の扱いを間違えて、食中毒事件を起こるのを防ぐ国の動き、という事です。前回の記事でも紹介しましたが、熟成肉の取り扱いがあまりにも未熟な飲食店さんが多い(僕の主観的意見ですが、国もどうやら同じ意見のようです)ので、いっそのこと法律で定義してしまおう、という事のようです。

 この定義がどうやら上限・下限の定義の様で、熟成肉と表示するには何日以上・何日までに販売、となりそうな雰囲気。でも僕達小売店では厳しく取り締まれそうですが、星の数ほどある牛肉を取り扱う飲食店に果たしてこの法律を浸透させて、実行力のある物にできるかという一抹の不安はあります。小売店で厳しく取り締まれる、と言ったのはトレーサビリティ法のおかげであります。

 牛肉は生まれる前から消費者に届くまでその全ての追跡が可能な数少ない食品です。豚肉や鶏肉はこの法律の範疇外、魚は水揚げした港が生産地になるので、卵の時にどこでどうしていたかなんて追跡できるはずもありません。個体識別番号という10桁の番号により、どこで、だれが何をどうしたのかが生産から消費まで公開されています。

 お肉屋さんではこの個体識別番号を販売する牛肉に、消費者に分かりやすい形で表示する義務があり、これが厳しく取り締まれるよ、という根拠です。飲食店さんは推奨なので、表示義務が無く仮に熟成が法律で定義されても一番危険な販売先を取り締まり管理することが出来ないのではないか、という事です。

 まあ熟成もブームですし、卓越した技術と管理で正しい熟成肉を販売されている飲食店さんもありますので、最終的には消費者に支持されない飲食店は淘汰されていくという、資本主義の体現により進むべき道に向かうのでしょう。

 消費期限と言えば枝肉には実はありません。(!!!)これも法律で定義される、なんてことになるともしかしたら今までの熟成肉が食べれない!何てことが起きるかもしれません。枝肉を部分肉という(サーロイン、とか)ものに切り分ける時に、消味期限が添付されます。この根拠は細菌数により決められている場合が殆どです。まず一般生菌数検査という細菌の数を日数の経過と共に観察し、厚生労働省が定めている数値内に留まっている期間を算出します。

 この産出された数字に、流通時のダメージなどを考慮して安全係数というもの掛けて算出するのが牛肉の部分肉に添付されている賞味期限の根拠になります。だいたい40日が主な表示です。また部分肉に加工する工場の衛生度によって数字は多少上下するので、輸出対応の工場なんかだともっと長い賞味期限がつきます。

 こうやって部分肉になったお肉が現在の流通のほとんどです。スーパーなどで販売されている牛肉は部分肉を仕入れて、加工しているのです。この部分肉の賞味期限はその販売しているお店の冷蔵庫の性能や、加工場の衛生度によってこの日数で大丈夫かと言えば一概には言えません。

 牛肉は消費者の方が選ぶときに、日本人の方は特にですが鮮度を指標にしていると思います。刺身・生食の文化がある国ですので当然ですし、すき焼き用や焼肉用など精肉になっている牛肉は鮮度で選ぶことはほとんど間違いありません。

(※一部例外あり、というか実はお肉の熟成は様々なプロセスがあり、カットの方法やそれまでの経緯などによってその牛肉が一番食した時に美味しくなる状態は、厳密にいうと鮮度だけを頼りにしているのは間違いです、がそんな事を気にしていたら食事も喉を通らなくなるので今回は説明は割愛。)

 
 鮮度が消費者に対して良く見える期間内に販売しなければ、割引・からの半額何てことになると赤字まっしぐらですので、スーパーさんなどで販売している牛肉は鮮度抜群!熟成にはほど遠い存在。くしくも激安スーパーなどは鮮度の落ちた牛肉を安く仕入れるので、ある意味熟成している牛肉を販売していると言えるかもしれません。

 熟成


 熟成についてお返事を書こうと思ったら、前置きがこんなにも長くなってしまった( ^ω^)・・・

 それでは深淵なる熟成の世界にレッツゴー


 プロが行う正しい熟成は、


 先にゴールをある程度決めている
 

 状態だと思います。牛肉の品質を最初に見極めて「この牛肉だったら、この部位だったらこの熟成をして、この辺りの日にちが一番おいしい時。」というのをわからなければ出来ない技術です。その熟成を可能な限りコントロールして、経済的に成り立つ範囲で熟成しなければ僕達お肉屋さんはやっていけないのです。究極の熟成もたまにやってみたりしますが、多くの消費者の方に指示され、かつ会社にも利益の出せる範囲でなければ行う事は出来ません。


 一部超高級店さんなんかでは究極の熟成を行ったりされていますが、これは法外な価格になります。枝肉の熟成には様々なメリット・デメリットがあると申し上げましたが、最大のメリットは美味しさの醸成(もちろん熟成の限度はありますが)、デメリットは価格の上昇、廃棄部分の多さにあります。

 枝肉から骨を取り除くときに平均して重量は74%程度になります。骨付きで1000円で購入した牛肉は、骨を取り除くだけで約1350円に。あとは大気中に水分が蒸発して目減りするのが1週間でおおよそ1%。水分量が少なくなるほどにこの数値は下がりますが、仮に2か月間8週間枝肉で熟成させると66%に。これで1515円。枝肉の表面は酸化して更にうっすらとカビが生えてきます。食べれないので取り除きますが、これで更に60%に。1666円。この枝肉からとれた部分肉の硬い筋や余分な脂を取り除く筋引きを丁寧に行うと更に3割減。

 

・骨付き1000円kg辺り100kg☚
 原価金額=100000円
・部分肉にするだけで2083円kg辺り


おお、倍の金額がついてしまいました。これを更に余分なドリップなど省く管理する作業などを行って精肉にします。さらに熟成肉は温度変化に敏感に反応しますので、非常に高性能な冷蔵庫が必要になるなど、通常のお肉屋さんと比べて設備投資をかなり行わなければいけません。それにこれは全ての部分肉の平均単価で、高級部位も低級部位も同じ評価金額としています。サーロインやヘレの様な高級部位は価格差が3倍以上します。

 お肉、黒毛和牛がkg辺り1000円で仕入れることは不可能です。良い品質の牛肉は最低でもkg2000円以上しますので、そういった事を考えていくと、サーロインなら原価が最低でもkg辺り

((2083円×2(1000円の倍)の更に3倍+設備投資・人件費・利益など必要経費経費を20%と仮定))因みに20%だったら超がんばっているお肉屋さんです!!


15600円以上となりました。改めて計算すると高いな・・・いや、それだけかかるのは必然なのです。このお肉をステーキ屋さんで200g注文すると原価で3100円かかってくるという事になります。飲食店の原価率は30%が平均といわれているのでステーキ200g一枚1万円という風に導き出す事が出来ます。

 これが世の中で正しい熟成肉の価格となります。お家で調理すると一枚1万円もしませんが、火入れや提供の仕方など再現できない事も沢山あるので、本当の熟成肉をステーキで味わうと仮定すると、一万円で食べれたらかなり安いってことになります。熟成肉恐るべし・・・

 因みに飲食店の原価率30%は本当の平均値です。今話題のいきなり!ステーキさんなどは60%という驚異的な、業界の常識を破壊した原価率です。俺の○○、なんていうお店もそういったビジネスモデルでなりたっています。ですから常に満席でないと成り立たない商売なんですねー、いきなりステーキは今苦戦しているそうですが、自店の淘汰が進めば業績は回復するのでしょうか?

 話が脱線したので再び熟成の話に軌道修正、というか脱線しまくりながら業界の事を色々書いている方が、書いている僕自身は楽しかったりするのですが。さてこのように高額な熟成肉ばかりでは当然ながら消費して下さる方も少数になりますので、もっと親しみやすく熟成肉を提供できないか、と僕達は取り組んでいます。具体的には枝肉の熟成と、部分肉での熟成を組み合わせたいわばハイブリッドな熟成です。

 この熟成法は、両者の良い点を取り入れた経済的にもよい方法だと思っています。美味しさを追求しつつ、管理しやすくお手頃な価格で販売できる方法なので、この方法を軸として様々な工夫を行いながらお肉を取り扱っています。


 お返事を書こうと思ったら、僕のブログの中で最長の長さになってしまった・・・

 熟成やお肉の事はまだまだ、いやほんとうにまだまだまだまだ書けますが、タイピングのおぼつかない僕にはそろそろ限界です。

 コメント本当に有難うございました!!






















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