2019年9月15日日曜日

食肉の品質

お肉の品質を見極める極意


客観的な美味しさの基準


 美味しいお肉下さい!

 なーんて良く言われますが、美味しさは個人で差異があり、全ての人があまねく「美味しい!」と評価するお肉はありません(多分)。個人の好みが反映された美味しさは客観的な評価では無く、それは主観的な評価です。

 お客さんに求められる「美味しいお肉下さい!」は、回りくどい言い方にはなりますが、

 お客様( *´艸`) 私が主観的に美味しいと感じるお肉をくれー

という事になります。これはそのお客様に合わせたチョイスを僕達が出来るか腕の見せ所であります。お話しを伺い、しっかりとコミュニケーションを図ることで、誰が、何を何時、どのように欲しているのかを推察し、商品を組み立てていく女将さん的な感じです。


 この評価とは別に、僕達がお肉のプロとして行う評価は客観的評価を行います。普遍的に定数的、かつ定量的に評価します。この評価を連続して行っていき情報を蓄積してデータベース化、そのデータベースを基に、多くの方が美味しいと評価するだろうお肉を推察しながらお肉の仕入に活かしています。

 それらの情報は、比較しやすい条件を取りまとめて、その会社が是とする仕入れの基準になります。例えば

 当店の牛肉は全て黒毛和牛です

とお客様に訴求している会社は、黒毛和牛を販売する事を会社の是、顧客の支持を得るために行っているという事になります。(偽装は例外)まあ黒毛和牛を訴求するだけでは要素が弱いですが、これはものの例えです。

 和牛と呼ばれる品種は4つ

黒毛和牛
②褐毛和牛
③短角和牛
④無角和牛 の4種類。

 因みに国内の和牛総生産量の内、黒毛和牛の占める割合はおおよそ98%以上。な、ななんとほとんど黒毛和牛なんですね。じゃあ褐毛和牛などは希少でプレミアム、美味しさは半端ないって感じ・・・




 には




ならないのです、黒毛和牛が一番美味しいと感じる方が多いです。ですから黒毛和牛が一番生産量が多いのです。褐毛和牛や短角和牛は主に赤身で筋肉質、牛の体型も違います。無角和牛に至っては数百頭いるかいないかの天然記念物もので、現物は僕も見た事はありませんが、更に赤身だそうです。


 赤身の部分は筋肉です。黒毛和牛はこの筋肉の間に ”さし” と呼ばれる筋間脂肪が多く入りやすい品種です。さしの入っていっる場所は毛細血管です。細かい血管を通じてサシを形成するのが黒毛和牛の特徴です。

 黒毛和牛は幾世代にも渡り血統選別が行われています。血統は遺伝情報の選別でもあります。特にサシに関しては父型の遺伝情報、つまり血統による要因が7割以上と言われており、この血統を選別することにより、美しいサシの入る黒毛和牛を産出する事が出来ます。

 父型の遺伝情報とは精子です。優れた遺伝情報を持つ精子は種雄牛(しゅゆうぎゅう)として選別されて、各県が選抜。これぞという種雄牛をアピールしています。

 ところがここ最近の赤身ブームなどで、サシ一辺倒の評価は消費者の支持を今までのように得られなくなってきています。牛肉の流通時における全国統一の評価基準は

 サシの入り具合 歩留(産肉量) 

を長年主たる基準として評価してきました。ところがこの評価だけでは本当に美味しい、大勢の方が評価するであろう牛肉を選ぶことが困難になってきています。また消費者の好みが細分化されている事も相まって、近年この評価を見直そうという動きもあります。

 美しいサシの入った牛肉は見た目が良く、沢山サシが入ると肉の色が薄くなる傾向があり、鮮やかなサシでピンク色に近い牛肉は、美味しそうに見えます。ところが見た目が美しいお肉=美味しいお肉(あくまで主観的)という方程式は成り立たないのです。

 僕は長年主観的に美味しいお肉を求めて仕入れを行ってきました。枝肉を仕入しては味見を行い、評価を付けて情報を蓄積してきました。評価は官能評価ですが見た目から食味まで20個の項目を10段階で評価を行い、その評価の高い牛肉の情報を見比べて、数値化して自社独自の基準として運用しています。

 通常のお肉屋さんですと、これを ”経験” と呼んでいると思います。経験は何物にも勝る宝ですが、その人の頭の中や体に染みついているだけでは誰もその情報にアクセスできず、活かす事は出来ません。またそのような状態を次の世代に伝えようとうと何年もかかり、生産的ではありません。

 このような情報を活かすにはデータベース化することが必要です。そしてそのデータベースは誰でもアクセス出来なければ意味がありません。ですから僕はこれらの情報をデータベース化しています。



 さて、少し話が逸れてしまいました。が、僕の品質を見極める極意は、データベース化するという事なのです。このデータベースを蓄積している時に、妙な特技を身につけました。それはお肉の断面を見ると、どのくらいの期間飼われていたか、という事を当てられるという特技です。ナンジャソリャ(';')

 飼われていた期間を業界では ”月齢” と呼んでいます。使い方としては、

「この牛は27か月齢やから色が浅いな、あまり美味しくなさそうだな。」や
「今の時代36か月齢まで飼える生産者はなかなかおらん。」

などと使います。一般の方は恐らく一生関わることの無い言葉かも知れませんが、この月齢は客観的評価に生きてくる基準となり得ます。

 では、今までのお話しを纏めて牛肉の客観的評価を行うには






血統が大事!
月齢が大事!






 という事になります。


 今度焼肉屋さんに行ったら是非



 「このお肉の血統は安福がらみかな?月齢は?」

と聞いてみて下さい。間違いなく


ウザッ・・・( ゚Д゚)
 

という反応を頂けます。もちろんこのブログで教わった事は内緒にしておいて下さい。





んんん?






最近は血統が評価されへんなんて書いてたやん!という鋭い方。食肉の味と血統の関係はまた別の記事でお伝えしたいと思います。結論から申し上げますと、関係あり なんです。























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