サピエンス全史」で有名なユヴァル・ノア・ハラリ氏の近著「21Lessons」人類が現在直面している21のテーマについて書かれています

21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考
ユヴァル・ノア・ハラリ
河出書房新社
2019-11-19




とても読み応えのある本です。

ハラリ氏の視点は読む人に様々な思考を促します。その19「教育」については、子育てをしている方や教育関係者はぜひ読んだ方がよさそうです。

★2050年の世界は大きく変わっている。でもどうなっているかは誰にもわからない

この本を通じて、ハラリ氏はバイオテクノロジーとAIなどのコンピューターテクノロジーの発達およびその組み合わせによる相乗効果が、近未来の世界を大きく変えていく。それにより人類が経験したことの無い様々な事に直面していくと指摘しています。

その前提を元に2050年あるいは21世紀で、活躍するためには子供達に何を教えるべきか?またどんな技能が必要とするのか?ということについてハラリ氏が述べています。

もちろん変化は起こるだろが未来のことなので正確には予測できないという前提でハラリ氏は話をすすめています。

(引用開始)
2100年は言うまでもなく、2050年の世界がどうなっているかは誰にもわからないので、このような疑問の答えを私たちは知らない。もちろん、これまでも人間は未来を正確に予測することはできなかった。だが今日、未来の予測はかつてないほど難しくなっている。
(引用終了)
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★今日子供たちが学ぶことの多くは2050年には時代遅れになる!?

生物工学やAIテクノロジーの発達による社会の大きな変化はある程度予測できる。
でも2050年の世界がどうなっているかはだれにもわからない。しかし、今日子供たちが学ぶことの多くは、2050年までに時代遅れになっている可能性が高いというのだ。

たとえば、プログラム言語C++でコンピュータープログラムを書くことや中国語を話すことを学校で一生懸命教えても、2050年頃には,AIがはるかに上手にソフトウェアを書くことができ通訳アプリで不自由なく会話ができるようになっているかもしれない。

ハラリ氏によれば、具体的なことまでは確信は持てないが、変化が起きていることだけは間違いない。というのだ。

★人生の中の学ぶ時期と労働の時期の区分が無意味化し、絶えず学習しつづけることが必要となる

ハラリ氏によれば太古から最近まで人生には2つの時期があったという。学習の時期とその後に続く労働の時期だ。

学習の時期に培った、知識や技能を元に、労働の時期で労働し、生計を立て、社会に貢献するというのが人生の大きな流れがあったという。これはつい最近(現在でも)までそうであるので、イメージしやすいと思います。

それが21世紀の半ばにもなると、加速する社会の変化と寿命の延びが重なりこれまでの学習の時期と労働の時期というモデルが自体遅れになっていくというのです。50歳に達する頃にも、絶えず学習して自己改革を繰り返していくことが必要になっているだろうというのです。

私が思いつく例はこんなところです。

・外国語を習得しても通訳アプリが同じレベルになっていれば、人生の後半は別の事を学ぶ必要が出てくる。

・コンピュータープログラミングを学んでもAIがそれより上手にできるようになれば別の事を学ぶ必要が出てくる。
・医者とか弁護士や薬剤師になったとしても、AIが発達すれば仕事の内容も変わっているだろうし、新たな学びが必要になっているでしょう。

・自動車のドライバーをしていても、自動運転が普及したら新たな仕事を習得しなくてはならない。といったところでしょう。

このような変化が今後起こるかもしれません。
しかし、どの分野で、いつ、どんな変化が起こるかは正確には予想できないわけです。人間が介在することが価値を持つといったこともあるかもしれません。

したがって、変化は当たり前だが学生の頃に何を学ぶのが有利でどんな仕事や業界が有望だとか、安泰だとか食いっぱくれがないかいったことも予想しても短期的には有効でも長期的にはあまり意味がなさそうです

現在でも、民間企業の就職人気ランキングの上位企業で20年後も同じように安泰という企業は限られています。その頃は人気が無かった企業が躍進している場合もあります。これまでも学生の頃に何を学んで、どんな仕事をしてどこの会社に勤めたら、安定した収入が得られるとかいったこともかなり「当てずっぽ」とか「たまたま」といった偶然的な要素が大きかったと思うのです。

これからはますますそうだということなのでしょう。
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★未知との遭遇が当たり前になる時代

ハラリ氏によれば
(引用開始)
未知との遭遇が当たり前になる時代には、自分の過去の経験ばかりか全人類の過去の経験も、手引きとしては以前ほど頼りにできない。超能力を持つ機械や、人工的に作られた体、気味が悪いほどの精度で人の情動を操作できるアルゴリズム、人間が引き起こす気候の急速な大変動、10年ごとに職業を変えていくといったかつて誰も出会ったことの無い物事や事態に、個々の人間も人類全体も対処せざるをえない場面が増えていく。

(中略)
そのような世界で生き延び、栄えるには、精神的柔軟性と情緒的バランスがたっぶり必要だ。自分が最もよく知っているものの一部を捨て去ることを繰り返さざるを得ず、未知の物にも平然と対応できなくてはならないだろう。

(引用終了)

21世紀をこれから生きていく自分の子供や子供たちに、この学校に行ってこの職業についたら一生仕事があるとか安泰だとか。

この資格を取っておけば間違えないとか。ましてや、民間企業のこの会社に入っておけばだいじょうぶなんて。

親ははたして自信を持って言えるのだろうか。私はとても自信を持って言う事はできません。

今後何十年間の間有望な仕事を予測するのはとても無理だし、予測しても当たらないので意味がなさそうです。

ハラリ氏によれば、
10年ごとに職業を変えていくといった事態に今後対処せざるを得ない場面が増えていくのではないか。というのですが、

自分の意向に関係なく、10年単位で職業を変えたり、新しい状況に対処していくのは自分自身考えてもそうだし、多くの大人にとってもかなりしんどいことだ。

多くの人は根本的には変化を好まないので、なるべくやりなれた事を続けたいことが多い。

そんな時代に、今の子供達が、「大人になっても変化は当たり前、未知の物にも平然と対応できるようになるためには」子供に何をしてあげたらよいかは正直思いつきません。

また社会としても、学びと労働の時期に分かれていた時代のモデルはあってもこれからの時代にふさわしい教育法といったものが確立されているとも言えないでしょう。
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親として子どもに伝えられそうな事

ハラリ氏によれば、15歳の子どもにできる最善の助言は、大人に頼り過ぎないこと。だそうだ。
(引用開始)
ほとんどの大人は、良かれと思って行動しているが、どうしても世の中が理解できずにいる。過去には、大人の教えに従っていれば、まず間違えなかった。大人たちは世の中のことをよく知っていたし、
世の中の変化はゆっくりしたものだったからだ。だが、二十一世紀にはそうはいかないだろう。

(引用終了)

正直、私の未来予測はあてにならないし、社会として大きな変化に対応できるような教育法が確立されているわけではありません。そのため、私が親として子どもに伝えられるのはこんなところかなと思っています。

21世紀には、変化が当たり前で一度はじめた仕事も変えくいく必要があるかもしれない。この大学を出て、この職業についたら安泰だということは無さそうなので

「大人になっても常に学び続ける必要があるのだろう」という社会の変化は正直に伝えてあげる必要があるのだろう。

それと同時に、人生100年の寿命はあたり前の時代になっていくのだから、たとえば10年ごとに新しいやりたいことをやっていけば、やりたいことがたくさんできる時代でとてもラッキーであることもいっしょに伝えてあげたいと思います

もちろん、AIや自動翻訳が未来になって一般的になっても、学生時代に勉強して知識を習得しておくこと自体の価値がなくなるわけではありません。学生の時に学んでおくことの大切さは変わらないということも私は大切だと思います。


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