幼い日、ヒーローショーでよく怪人にさらわれました。最前列にいたからかもしれませんが、他の2、3人と共にまとめて囚われて、ヒーローの救出を待ったものでした。間近で見るヒーローや怪人にときめいたものですが、何よりも強く印象に残っているのは怪人役のスーツアクターの優しく柔らかい手の感触でした。グローブ越しでもわかるその扱いは、アルバイトであったとしても役割を全うするという気概と、本当に子供が大好きで一生懸命に取り組んでいるという心の証。優しさの持つ強さを伝える為に、今日も派手に倒されて捌けていく、顔のない真のヒーローです。
誰にでも涙見せない人だろう 怪人の引く手は優しくて
黒いバックルもブーツも綺麗に磨かれて、本物のヒーローはいつも裏側にいます。
2019年6月15日
短歌 ミルク