Mobility Update ~第2四半期決算から読み解くUberの成長~

Uberの赤字と成長

Uberの第2四半期決算

Uberが第2四半期の四半期決算を発表した。第2四半期では、総取引額は157.56億ドル、総取引額からドライバーなどの基本的な取り分を引いた収益は31.66億ドルとなっているのに対して、収益から運営コストを差し引いた利益は約52.36億ドルの純損失となっている。同四半期に計上された株式上場関連の一時費用39.41億ドルが無かったとしても大幅な赤字となった。これを受けて、発表後の時間外取引で株価が11%急落した※1。

Uberの取引規模の成長

Uberの総取引額は157.56億ドルで前年同四半期比31%の成長となっている。このうち、ライドシェア事業が約8割の121.88億ドル、フードデリバリー事業であるUber Eatsが約2割の33.86億ドルを占める。総取引額においては、ライドシェア事業は、前年同四半期比で20%の成長、Uber Eats事業は91%の成長となっている。月間のアクティブユーザー数は9900万人となり全体で30%の伸びを示しており、Uberの取引規模、ユーザー数は順調に成長をしている。

ドライバーの囲い込み及びユーザーのアクティブ化施策

Uberのビジネスモデルでは、ドライバー獲得費用高騰が収益圧迫の原因とされる。当該課題への対応としてUberはUber Proというドライバーへの特典サービスを提供している。同社は、サービスに関するレーティングの高いドライバーに対して、メンテナンスの割引やガソリン給油に対するキャッシュバックが受けられるプログラムを米国の8都市でローンチしている。米国ではドライバーの50%以上が同プログラムに参加し、メキシコでは、ドライバーの50%以上が7月から開始された同プログラムのパイロットに参加している。

また、ユーザーをアクティブにする施策として、ライドシェアとUber Eatsの利用双方に対してポイントを付与するUber Rewardが好調である。加入したユーザーは加入していないユーザーに対して2倍程度アクティブな動きを示しているという。

以上のようなドライバー及びユーザーへのプログラムは効果的に機能し、Uberの成長に貢献していると考えられる。

事業の収益性

Uberは収益性の指標として、レストランやドライバーなどへの支払額を控除した調整後収益を公開しているので、これを参考に両事業の収益性を検討する。

ライドシェア事業の収益性について
ライドシェア事業について、グローバルでは、5都市でサービスを提供するドイツの伸びが顕著で、アルゼンチンも好調で、ブエノスアイレスは世界で5番目のブッキング数を記録している。

一方で、調整後収益は23.14億ドルと前年同四半期比わずか4%の伸びにとどまっている。前年同四半期比20%の増加を見せる総取引額に対する調整後収益の割合も減少しており、本業であるライドシェア事業において収益性を維持するのが厳しくなっている可能性がある。

Uber Eats事業の収益性について

Uber Eats事業におけるレストラン及びドライバーへの支払も含めた総取引額は前年同四半期比91%増の33.86億ドルとなっている。また、レストラン及びドライバーに対する支払いを差し引いた調整後収益は3.37億ドルとなり、こちらも前年同四半期で53%増加している。

月間アクティブユーザー数は前年比で140%成長し、Uberを利用するレストランの実数は32万店舗となっているという。Uber Eatsの新規利用者の4割が、Uberを利用したことのないユーザーであるため、Uber Eatsからライドシェアへの送客により、Uber Eats事業の成長がライドシェア事業の成長にも貢献すると考えられる。

Uberの今後

Uberは収益性より成長性を重視してきた。中心となるライドシェア事業での取引規模拡大、ユーザー獲得、ドライバー確保に加え、新規領域であるフードデリバリー事業を積極的に推進してきた。シェアバイク領域においてのJUMP買収、早く移動したいユーザーに向けての移動手段であるUber Elevateの開発などの積極投資を行っている。

CFOのNelson Chaiは「成長への投資を行う一方、同時に健全な成長を追求する。この四半期では、大きな前進が見られた。」※2と語るが、本業であるライドシェア事業では収益性が向上せず、過去には中国、東南アジア、ロシア及び南アメリカの一部で撤退を強いられるなど、苦しい状況も見受けられる。本業であるライドシェア事業と強いシナジー効果があり、成長が見込めるUber Eatsの事業をテコにした巻き返し、投資を行う新規事業により今後も成長を継続できるかに注目が集まる。

参考及び数値引用元:Uber決算関連プレスリリース
※1: https://jp.techcrunch.com/2019/08/09/2019-08-08-uber-stock-plummets-following-second-quarter-earnings-report-2/
※2: https://investor.uber.com/news-events/news/press-release-details/2019/Uber-Reports-Second-Quarter-2019-Results/default.aspx