最後のイエローストーン「EM-1」は真の評判機。

 

 

 

本日もケンズ鉄道にご乗車いただき

ありがとうございます。

 

夏場に冬の話で恐縮ですが、

冬季オリンピックも開催された

ここ長野県には数多くのスキー

場があります。

若い頃には毎週のように仲間

と車でスキーに出かけたもので

した。 スキー自体は非常に

リラックスして楽しめるものでした

が、行き帰りの雪の山道だけは

非常に気を遣いました。

 

「むかしはスパイクタイヤやったねー」

 

そうそう、タイヤに金属の鋲(スタッド)

が打ち込んであるやつね。

 

当時は現在主流のスタッドレスタ

イヤよりも、滑りやすい硬い雪道に

強いスパイクタイヤを使用してい

ましたが、それでも急な登り坂では

タイヤがどうしても滑って立ち往生

することもありました。

 

「何台も連ねていくと

どれか一台ははまるん

やよねー (^^; 」

 

逆に、助けてくれる仲間がいる

から気持ち的には一台より安心

なんだけどね (^^

 

そんな場所は、勾配が急な上

に道がカーブしていてハンドルを

切った状態のため、なかなか駆

動力が坂上に向かって伝わって

いきません。

焦ってアクセルを踏み込み過ぎる

と車輪が空転して車が後へ滑り

落ちるので非常に危険なのです。

こういう場面では実は力のある車

ほど車輪が空転しやすくやっかい

です。

たとえ4輪駆動車であっても、タ

イヤと雪道の間の摩擦力の感触

を確かめながら滑り出す直前の力

をアクセル(とクラッチ)でうまくコント

ロールするには、むしろ力を落とした

セカンドギアを使ったり、タイヤの空

気を少し抜いて摩擦力を上げるこ

とは常識です。

また、この摩擦力を上げてくれる

滑り止め用の砂が道路わきに設

置してある場合は非常に助かり

ます。

そんな雪道独特の気疲れする

テクニックも、苦い経験を積みな

がら皆慣れて行くのですが、やは

り滑りやすい山道で気が抜けず

ストレスになることには変わりあり

ません。

 

「ん? 今日は

雪道の苦労話なん?」

 

いやいや、これは大事な前置き

です ・笑・

落語で言う ”まくら” ってとこ

かな (^_^)

 

さて、先頃バックマン社が2019

年から2020年にかけての新製

品を公表しました。

Nゲージで注目は、やはりEM-1

ではないでしょうか。

 

「クラスJも忘れんといてなー(^^ 」

 

うん、両機はこれまでアナログ仕様

で発売されてきたんだけれど、今回

はサウンドを搭載して登場予定だよ。

 

「デュアルモードDCCで

アナログ運転もできるしなっ (^o^)」

 

エコナミ(SoundTraxx Eco Nami)

を積んでるらしいよ。

 

「せっかくやから

EM-1のことをもう

ちょっと教えてーな (^^ 」

 

はいはい、その言葉を待ってたよ!

 

ボルチモア&オハイオ鉄道

(B&O)の「クラスEM-1」は、

蒸気機関車の時代が終わり

かけていた1944年(20両)

と1945年(10両)にボォルド

ウィン社から納入された最後の

イエローストーン(2-8-8-4)です。

EM-1 ボルチモア&オハイオ B&O アパラチアン山脈 2-8-8-4

アパラチアン越えで急坂相手に奮闘するEM-1。 間隔の狭い枕木が巨漢を支えます。 -ケンズタウン鉄道写真ギャラリーより-

 

「最初は、ノーザンパシフィックの

Z-5やね (^^ 」

 

それが1928年のことだから

EM-1はその20年近くも

後のことだね。

 

当時、普及し始めていたディー

ゼル機関車が欲しかったB&O

鉄道でしたが、アパラチアン山系

でも使えるハイパワー機が欲し

かったことや戦時中の規制のため、

不本意ながら2-8-8-4を

購入したと言われています。

けれども、Z-5から20年近く

積み上げられてきた技術が投入

されたEM-1は、実用が始まる

とエンジニア(機関士)や鉄道関

係者に大好評となりました。

その理由は、路線内にある山岳

地帯での運転のし易さと、故障

の少なさにあったようです。

一般に、EM-1の特徴として

ボイラープレッシャーが低く抑え

られた低めのトラクション(牽引

力)設定が挙げられており、

これが山岳路線で功を奏した

ようです。 山岳路線では、勾

配もさることながら、カーブも急

峻であるため、重量級の貨物車を

多数牽引する場合、ハイパワー

機では特に発進時にドライバー

(動輪)が滑りやすく、制御(運

転)が難しい場合があります。

 

「あー、なるほど、

その難しさが雪の山道と

おんなじゆーわけやね! 」

 

それそれ! d(^-^)

 

鉄道の場合、車輪もレールも金

属のため、機体の重量があっても

雪道と同じで力任せでは滑りや

すいことが考えられます。

一方、制御のし易さで評判の

EMー1です。

ボイラープレッシャーの低さが

その要因とされていますが、実は

自分はそれだけではなかったの

では? と考えています。

 

データを調べてみますと、同じ

ボォルドウィン社が1941年に

製造したDM&IRのイエロー

ストーンM3/M4では、ボイ

ラープレッシャーがEM-1と

ほぼ変わらないものの、その

牽引力はEM-1より約22

%も大きいのです。

ちなみに、ビッグボーイのボイ

ラープレッシャーは、イエロー

ストーン両機より25%も高い

のですが、牽引力では少し

だけM3/M4に及びません。

つまり、これらのデータが正しい

とするなら、より新しいEM-1

ではビッグボーイをしのぐM3/

M4級の牽引力を出せたにも

かかわらず、あえて22%低く

した、或いはなったことになり

ます。

そして、ボイラープレッシャーは

M3/M4とさほど変わらない

低さのEM-1なわけですから、

評判になるほどの運転のし易

さを生み出している秘訣はボイ

ラープレッシャーだけではなく、

何か他の新しい技術が投入

されてのことであろうと推測する

わけです。

 

「おじちゃん、

探偵さんみたいやねー 笑」

 

いやいや、昔ね、よく上の人から

「データで話をしてよ!」

って叱られたものだから、ついつい /(^^;;

 

さて、EM-1ならずともレールと

車輪の滑り止めに効果を発揮する

砂(sand:サンド)ですが、この砂

を蓄えるボイラー上のドームの形状

が、EM-1には2種類あります。

1944年の前期製造機20両で

は、前部のサンドドームが左右に

広がった大きい(ラージ)形状を

している一方、1945年製後期

型10両では小さく(スモール)なっ

ています。

EM-1 サンドドーム ラージサンドドーム スモールサンドドーム 前期 後期

EM-1の前部サンドドームの形状比較

「なんでちーちゃなったんやろ?」

 

うん、そこなんだよ。

普通は、実際に使い始めて予想

以上に砂がたくさん必要になること

がわかって大きいものに変更する

ってもんだよね (^^

その逆ということは、EM-1が

山間部でもあまりに使いやすく

て、砂のお世話になることが予

想より少なかったってことなの

かもね !(^o^)

きっとそうだよ! (^0^)/

 

「おじちゃん、おじちゃん、

データではなしをしてよ! 笑」

 

出たー! (>_<)

これについてはデータがないから

単なるおじちゃんの推理です ・笑・

 

鉄道員たちから高い評価を得た

EM-1は、鉄道ファンの人気も

獲得して有名になりましたが、

時代の波には勝てず、順次ディー

ゼル機に置き換えが行われました。

30両全てのナンバーを#650~

#679に改変後、運行路線を

変えて活躍を続けましたが、

1960年代には、残念なことに

一両も保存されること無く全て

スクラップとなりました。

蒸気機関車としては、あまりに

短い20年に満たない寿命で

あったわけですが、製造が後年で

あったからこそ勝ち取った優秀機

の評判は、こうして現在も異国に

まで伝わり続けている、そんな

最後のイエローストーン「EM-1」

なのです。

 

「なんかはなしきいて

EM-1との距離が

みじかなったきがするわ (^^ 」

 

それはよかった (^-^)

EM-1も喜ぶね。

 

今日は、バックマンがスペクト

ラムブランドで発売予定の

EM-1のお話でした。

 

それでは皆様、

また次回までさようなら (^0^)/