曲げる。

 

 

「おじちゃんが、こんなもんを

書かはりました・・・。」

 

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曲げる。 曲げるのだ。

 

曲げたい場所に先端を向けて遠くから当

てる。

吹き出し口を小刻みに振れるようボディの

真ん中あたりを右手指で軽く持っている。

あー、これは本当に使いやすい優れモノだ。

直径は4センチほどであろうか、長さが20

数センチほどの円筒形だが、重量がさほど

ないので持ち続けても疲れることはない。

小柄なボディだからと言ってなめてかかると

あっという間に火傷するほど発熱量は大きい。

送風音は頭髪を乾かすドライヤーに似て

いるが、出力がそれより大きいことと風量が

小さく風の出口が絞られていることもあって

送風出口辺りの温度は優に150度は

越していることだろう。 収縮系チューブ

にももってこいだ。

 

左指では微妙に力を樹脂に加えつつ、

右手では送風口との距離をコントロールし

て適度に加熱し続けている。

加熱しすぎると樹脂はあっという間にゆで

麺のようになってしまうし、左指も力を入れ

すぎると折れてしまい、全体が一瞬で

お釈迦だ。

指先に感じる弾力と熱さのバランスに気持

ちが集中する。 一点を見続ける。

静まり返った部屋に送風音だけが揺らいで

いる・・・。

・・・これでよしと。

冷めたあとにもそれは元に戻らず、思い通り

樹脂にクセがついた。

 

曲がった。

この小型ヒーターは取り回しの良い頼れ

るよき相棒である。

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