前回まで「認知症の症状」と「てんかん発作の症状」で重複しているものについて紹介しながら、「てんかん発作」が原因で生じる精神症状も「認知症」で出現するものと一致しているものが多い、ということをお話ししました。
今回はその続きになります。
「てんかん」がある方の性格的特徴
ここまでは「てんかん発作」に直接関連する症状と「認知症」の症状について重複するものについてお話ししてきましたが、「てんかん発作」には直接関連はしないけれども「てんかん」の方に多い性格的特徴とされているものがあり、これを見ると非常に興味深い内容になっています。
それでは「てんかん」がある方の性格的特徴とされているものを挙げてみます。
・粘着性が高い
・物にこだわりやすい
・話題の流動性が乏しく、遅くなる
・まわりくどい話し方をする
・几帳面で細かなことに固執する
・融通が利かなくなる
・ささいなことで怒り出す
これらはいずれもどこかで見たことがある症状ではないでしょうか?
そうです。これらはいずれも「認知症」ではいわゆる「前頭葉症状」と言われているものであり、性格的特徴という面で捉えるならば「発達障害」の中の「自閉症スペクトラム症(ASD)」の性格そのものだと言えます。
この両者の類似性を理解するうえで、ぜひ知っていただきたいことがあります。
それは「てんかん」は「認知症」だけでなく実は「発達障害」にも合併しやすいということなのです。
「認知症」に移行しやすい「発達障害」でも「てんかん」が合併しやすい
このブログではこれまでにも「発達障害」傾向のある方は「認知症」に移行しやすい、ということを何度かお話ししてきました。(「認知症と発達障害」についての記事一覧)
「認知症」と非常に関係が深い「発達障害」においても「てんかん」が合併しやすいことは、両者の病態を理解するうえで非常に示唆に富んでいると思われます。
実は「てんかん発作」が「認知症」と「発達障害」両者において、症状や病態を生じさせたり、進行させる一因になっているとも考えられるからです。
では「発達障害」における「てんかん」合併率は一体どのくらいあるのでしょうか?
これについては様々な調査報告があるのですが、国立精神・神経医療研究センター病院の中川栄二先生による220例の患者(2~28歳)に対する調査報告によれば、自閉症スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)を合わせた発達障害での「てんかんの「合併率」は40%であり、その内訳としてはASDで56%、ADHDで43%だったとのことです。
さらに「てんかん」までには至らない「脳波異常の合併率」になると73%にまで上がり、その内訳としてはASDで75.5%、ADHDで70.5%になるそうです。
発達障害における脳波異常の合併率が約4分の3もあるというのにはとても驚きました。
以前もご紹介しましたが、2017年にイギリスの国際生物医学ジャーナル誌「Nature Medicin」に掲載された症例研究において、頭皮からは検出できない「てんかん性放電」が頭蓋内電極から非常に多く検出されること、頭蓋内電極から検出された「てんかん性放電」の95%以上が頭皮脳波測定では検出されなかったことが報告されました。(過去記事:「意識の変容」と「高齢者てんかん」の類似性(2)~「認知症」と「てんかん」~)
この報告を踏まえてさらに踏み込んで考えるならば、発達障害における脳波異常の合併率はさらに高率になり、ほとんどの症例において脳波異常が合併している、ということも十分ありうるのではないでしょうか。
そうすると「発達障害」が原因で「脳波異常」が出現しやすいのか、「脳波異常」が原因で「発達障害」が生じやすいのか、果たしてどっちなんだろう、などと思ったりもしてしまいますが、いずれにしても「発達障害」と「てんかん」を含めた「脳波異常」は密接に関連しており、それらの病態が部分的に重複していることは間違いないと言えそうです。
その証拠の1つが先に述べた「てんかん」の方と「自閉症スペクトラム症(ASD)」の方の性格的特徴が非常に似ているということなのかもしれません。
次回に続きます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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