牡蠣の昆布焼き

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白梅が満開

 

今年も岡山県日生(ひなせ)諸島の牡蠣生産者から最終宅急便が届いて我が家の牡蠣の季節が終わった。

 

岡山県の養殖カキの主要な生産地が日生諸島だ。

 

もう20年以上前になる。

カミさんが自動車運転免許を取るために入学した自動車学校で、日生の島から通う牡蠣生産者のおかみさんと知り合った。

それ以来の付き合いとなり、出荷が始まりお正月が来て、そして出荷が終わる時期時期に、牡蠣を送ってくれる。

 

もちろん私も親せきや知人に岡山日生の牡蠣を送った。

私は無類の牡蠣好きで、最初のころは誰かれなく、親しくなった人に「まあ食べみてよ、本場もんは絶対うまいから」と送っていたが、段々、世の中には牡蠣嫌いの人がいることを知った。

 

牡蠣好きの人は、メールや手紙、電話で弾むような喜びを伝えてくるのだが、嫌いな人は慇懃丁重な文面でお礼を書いてよこすのだ。

そういうことかと季節の果物や銘菓などを送ると一転して喜びにあふれた文面になるので気が付いた。

 

でも今では牡蠣を送るときは最初から、「あなたは牡蠣好きですか、嫌いですか」と尋ねることにしている。

これは決して無礼なことではなく相手も大変喜ぶ。

特に旦那の方は「うちのやつが食べんでな、俺は好きなんだが」と料理する奥さんに気を使っている。

 

というような経緯を説明したけれど、「牡蠣の昆布焼き」のことを忘れていた。

 

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もう5~6年前のことになるだろうか。研修出張で上京した。

研修は前日の講義と演習、翌日の午前中はグループごとの発表と講評があり、11時頃には解散となった。

 

終った後久しぶりに上野の国立西洋美術館に行った。

出張が終わった後の都内での自由行動は私の楽しみの一つだ。

出張中の私的な行動などは、厳密に言えば、本来はNGだろうが、我々の時代は当然のように役得だった。

 

しかし、先ごろから問題になっている国の泉首相補佐官と大坪審議官の逢引き出張ほどにえげつない話ではないのではないかというのは,私のエゴだろうか。

 

美術館などというけれども、私には絵画の素養など全くない。

ただ美術館に入る瞬間の緊張感や期待感など、荘重なワクワクする雰囲気が好きなのだ。

絵画というものはわからなくても、真剣に見ようとするからか、美術館を一巡した後、どっと疲れが出る。

 

西洋美術館を出てアメ横をぶらついて、上野の藪そばに入った。

もう午後1時をだいぶ回っていた。

客は私より少し年長の年寄り3人が、昼間から酒を酌み交わしていた。

 

私は昨夜の深酒で食欲がなく、ざるそばを注文して待っていた。

3人の年寄りは昔の職場の仲間のようだった。

話しっぷりから仲の良い関係が分かった。

 

私より先に「はい昆布焼き」と注文していた品が出てきた。

「これこれ」と指差しながら「これがうめんだよな」と三人組ははしゃいでいた。

昆布焼きが藪のメニューにあったことに驚いた。

 

昆布焼きなら私も大好きな、牡蠣のメニューの一つだ。

牡蠣は大根おろしでよく洗う。

カミさんの話では大根おろしで洗うと、洗い水が黒くなるのだそうだが、私自身は見たことがない。


昆布焼きには、すき焼き鍋を利用している。

すき焼き鍋に幅広の利尻昆布を敷き詰め、その上に牡蠣を並べ酒を振る。

醤油や塩などの調味料は一切入れない。

酒を吸って昆布が柔らかくなったころを見計らって、蓋をして火にかける。

牡蠣がぷくっと膨らんできたら食べごろ。

 

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自家製のゆずポン酢と大根おろし一味唐辛子などでいただく。

 

実にシンプルだ。しかしこの上なく贅沢な食べ方だ。

 


 

藪のお客さんは食べ終わった後、店員に「面倒かけるけどこの昆布をねえ、少し小さく切ってくんない」と注文した。「この人はよく昆布焼きを食べているんだ」とうれしくなった。

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実は私もこの昆布を佃煮にして、一杯呑むのが大好きなんだ。

牡蠣のうまみを吸って、実にうまい佃煮になるのだ。

 

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