どうも!介護福祉士のなおべい(@naobei)です!
今回は、介護事業所のビジネス面よりの話をしていきます。
ただ介護経営者やリーダーの方だけではなく、介護職員の方にも業界の把握をする一つの参考にしてもらえたら幸いです。
僕自身は東京のデイサービスで施設長をやっていた経験があり、
当時の事業所では、
・予定稼働率ほぼ毎月100%
・実績稼働率を年間平均で95%以上
・全営業日で定員オーバーなし、人員基準クリア
と、コンプライアンスも遵守した上でこれらの数字を出していきました。
稼働率80%を超えていれば成功と言われる在宅のデイサービスの中では、全国的にみてもかなり高い数字なんじゃないかなと思います。
また赤字で低迷している事業所、高稼動を維持している事業所も数々見てきました。
そこで得た経験を踏まえて、わかった部分を共有したいと思います。
今回のテーマは、
介護経営で低迷する事業所がやりがちな「これくらい稼動率あればいいや」というスタンスは危険!
な理由とその対処法について解説していきます。
そもそも稼動率って?
稼働率はどうやって求めるか?
については、
デイサービスなどの介護事業所であるならば、
1ヶ月の述べ利用者数の合計 ➗ 1ヶ月の営業日数 ➗ 一日の利用定員数 ✖️ 100
=1ヶ月の稼働率(%)
で出ます。
介護サービスの多くが介護保険を使ったサービスになっていますが、その多くが法定基準として定員ありきのサービスとなっています。
その為、法律上認められる定員にどれだけ近づける事が出来たかを確認する指標として、
稼働率が多くの事業所で経営状況をみる一つのキーポイントになっています。
利用人数や売上との関係性は、
・述べ利用人数が増えれば、稼働率は上がる
・述べ利用人数が減れば、稼働率は下がる
そして、稼働率が上がれば売上が上がるし、稼働率が下がれば売上も下がる
ということにもなります。
これくらいの稼動率でいいや!になってしまう理由
介護事業所の経営はサービス形態や地域区分や運営コストなどによって、大きく変わるんですが、
おおよそ稼働率60%〜75%の間くらいが黒字化できる採算分岐ラインの事が多いようです。
ガチでビジネス面を考えると、実際は稼働率よりも純利益(=売上 ー 運営コスト)の方が大切ではあるんですが、実は稼働率はサービスの質や職員への影響も大きい数字にもなっているんです。
そこでありがちなのは、黒字である採算分岐ラインをある程度超えたら、
「もうこれくらいでいいや!」
と上げる努力を怠ってしまうことです。
他のビジネスをされている方からすると考えられないかもしれませんが、
この背景にはいくつか理由があるんです。
利用者が増えると大変だから
単純に利用者が増えたら、負担が大きくなります。
「仕事なんだから当たり前だろ!」
という声も聞こえてきそうですが、
介護の仕事は、ただケアの提供をするだけじゃないんです。
利用者が増えるということは、
・担当者会議
・契約
・ケアに関するサービス提供
・各種計画書、モニタリングなど帳票書類整備、署名捺印依頼
・介護保険、医療保険に関する請求管理
・各関係者との報告、連絡
など
が増えるということになります。
これらの対応するのにパッと終わらせられればいいんですが、結構時間と手間がかかります。だいたいが一度で終わりでなく、定期的な作業として追加されていきます。
厄介なことに介護サービスは、ちゃんとやっているか?という部分で行政のチェックが入ってきます。実地指導や監査など。
基準をクリアしていないと行政指導の対象になってしまう恐れもあるんです。
そのため人員不足気味の事業所の場合、
「これ以上仕事量を増やしたくなーい」
というところが本音として出てきてしまうのも無理はないです。
人員不足でサービス提供が追いつかない
赤字ではサービスの継続は出来ないので、黒字になるまではどの事業所も頑張りますが、
人員の確保が出来ていないとサービスの提供が追いつかない状態にもなってしまいます。
たとえば、
・食事、入浴、排泄など基本的介助ですらキツイ
・レクリエーションやその他の活動提供をする時間がとれない
・職員の指導や教育をする時間がとれない
・残業や休日出勤ばかりで身体がしんどい
とこんな状態になってしまいます。
利用者が増えていく過程で、職員人数の確保も段階的に調整できるのが理想ですが、
そう上手くは中々いきません。
人が来ないなら、
「利用者人数をそこまで増やさず、職員人数が増えるまで黒字が維持できるラインで対応しようとする]
のは、ある意味正しい選択肢なのは一理あります。
間違ってはいないです。
なぜなら、
高齢者や障害のある方が利用の対象となるので、単純にマンパワーで対応できる限界以上で受け入れするのは危ないからです。
命や怪我に関係する事故のリスクにも関わっていきます。
僕自身もその辺りで失敗してしまったことがありました。
しかし、人手が足りないといっても、赤字経営は絶対ダメです。
どうすればいいかは下記で説明します。
頑張ってもどうせ給与が上がらない
介護事業所の経営は安定化させるまでが結構難しいので、
どうしてもコストは控えめにしたい部分が経営的には出てきます。
その最たる例が、
職員の給与面(福利厚生含む)に関わってくる
人件費です。
職員目線で考えると、
個人経営でトップが管理者をされている事業所であれば、給与の交渉はしやすいですが、
法人の規模が大きい場合は、稼動が上がり売上規模が大きくなったからといって、そこで働く職員の給与が上がるとは限りません。人事考課の時期や基本給の棒給もしっかり決まっていたりします。
ぶっちゃけこの部分は、結構な職員のモチベーションに影響を与えますよね。
給与が上がらないのに、仕事の負担だけ増えてしまうのですから。
実際残業で稼ごうとするプレイヤーも多いのが実情としてあります。
ただ給与面に関しては、実力や実績を示せるものを持っているならば、
人事担当者と
どんどん交渉をすべきだと思います。
介護や福祉で働いている人はこうしたビジネス的な交渉を苦手とする方が若干多い印象がありますが、介護業界でもスキル格差は確かに存在しています。
自分が法人の売上や稼動率向上にどれだけ貢献しているかはアピールした方がいいです。
そこで価値が認められれば給与を出す意味も出てきます。
なぜ、利用者を増やすことを止めちゃダメなのか?
ここまで述べたように、
「稼動は黒字できれば、もうこれ以上利用者は増やさなくていいや!」
と考えてしまう理由は、
確かに!
と一応納得できる部分もあるんですが、
・現実はかなりのリスクがある
・メリットの取りこぼしが生まれる
ことも理解しないといけません。
僕自身はそこに気づいてから、「黒字化できればそれでいい」考えは捨てました。
知ってほしいポイントについてさらに解説していきます。
介護のビジネスモデルを考えよう
介護サービスの売上の確保が難しい理由として、
そのビジネスモデルが要因としてあります。
というのも売上となる報酬の大部分が、
国の社会保障の財源から賄われている実情があります。
介護保険や医療保険は、
負担割合ごとに被保険者である利用者の各個人から割合金額の支払いがありますが、その金額を省いたその他の利用料に関しては国から事業所に報酬の支払いがあります。
このお金の流れで成立しているのが、介護のビジネスモデルになっています。
介護は元々は奉仕やボランティア的な意味合いが強かった時代があったわけですが、
これを国が社会保障のシステムとして導入し、お金の流れが出来るようビジネス化して継続運営できるようにしたのが介護や医療などの福祉分野でもあります。
こうしたビジネスモデルである背景があるので、
・財源の支出には一定の制限が必要
・1事業所への1極集中や異常なオーバーワークにならない体制の整備が必要
・サービスの質の確保が重要
などの理由から、条例や法律などに様々な基準があります。
要は保険報酬を得る以上、
国が管理するお金やルールに従う必要がある
ということです。
こと利益確保の面では、
利用人数に『定員という制限ルール』があり、一日で得られる売上に限界があります。
さらに最高収益で得られる売上も、一度出せばしばらく余裕を持てるほどでもないので、継続的な利用をしてもらわないと、黒字安定化は難しいです。
飲食店経営などは土日祝日や年末年始などで繁忙期ができる事で赤字の日があっても、年度の売上全体で黒字化させる方法をとることができますが、
介護経営の場合は、繁忙期はありません。
利用が一種の固定収益になるのはメリットですが、突然パッと利用することは出来ないので、即時の収益確保は厳しいです。
ただこうした制限ルールもしっかり意味があって、
利益重視で過剰に利用者を受け入れして、施設で対応出来なくなったり、事故や虐待のリスクが頻発して起きてしまうことがないように、
意図して決められています。
稼動が落ちた時に赤字で低迷するリスク
介護サービスを利用される方はどの方も、
障害や病気を持っていたり、高齢者だったりします。
なので、
体調の悪化やあるいは死亡によって、利用が中止になる事も当然あります。
あるいは、サービスが合わず本人の希望で別のサービスへ移る場合などもあります。
そうなってくると、
利用者が減ってしまうので、必然的に稼動と売り上げも落ちます。
特に待機者を出せていない状態のサービスだと、利用が中止になった瞬間に売上減少が確定します。
利用者のサービス利用が決まるまでも、時間と手間もかかるので、すぐ売上の確保はできません。
利用までの流れは、
①ケアマネージャーから利用者へのサービス紹介
↓
②事業所への見学や説明を受ける
↓
③サービス担当者会議
↓
④契約
↓
⑤利用
通常このようなパターンが多いです。
関係者間でのスケジュール合わせも当然出てくるので、①〜⑤までいくにも1週間〜1ヶ月以上かかるのもザラにあります。
つまり、
売上が減少して赤字ラインの経営に落ち込んでからでは、
対応が遅い状況にもなっちゃうんです。
当たり前ですが、
利用者が来るのを待っている間にも、人件費や管理費など出費は出ていきます。
さらに集客能力のない施設である場合だと、まず営業活動からスタートしないといけないので、利用者が入ってくるのはかなり不確定要素が高い状態のなってしまいます。
こうなってくると、
採算分岐ラインの稼働率を下回ってしまった場合には、
赤字経営で低迷する可能性が出てきてしまいます。
職員のモチベーションがダウン
職員のモチベーションという視点も結構大きいです。
稼働率が低くなってくると、利用者さんが少ない状態になっているわけなので、
当然ヒマになっていきます。
「めっちゃいいじゃん!」
と働く方としては思えそうですが、実はデメリットも多いです。
たとえば、
・人件費率を考え、パートやアルバイトの出勤日数や時間は減る。
・介護業務がすぐ終わる。利用者と向き合うケアが出来る人と出来ない人がハッキリする。
・介護で向き合う回数が少ないので、身体介護の技術は身につきづらい
・ヒマなので、おしゃべりや愚痴が多くなり、職場雰囲気が悪くなる。
・「もう忙しい日常に戻りたくない」とリーダーが思ってしまう
・ヒマ疲れが発生する
このような状態になってくると、
・やる気のある職員は辞めていく
・ヒマな事が魅力だと思っているモチベが低い職員が残っていく
なんて事にもなっていきます。
オーバーワークをさせるのは良くないですが、
適度に忙しい職場である事もモチベーション維持には大切です。
そして、負のループに入っていく
「利用者さんの人数はこれくらいでいいや」
となると、
利用者さんの利用中止や退所が続いた時に、
・赤字リスク
・職員モチベ低下
により、サービスの質も低下していきます。
赤字ラインの経営状態になると、備品購入や新たなケアの為の投資をするのも厳しくなっていきますし、
職員のモチベーションが低下すると、利用者と向き合った介護よりも、職員同士でのおしゃべりが中心になってしまったり、営業活動へ行きたくない気持ちにもなってしまいます。
そうなってくると、
集客の為に必要な要素である
介護サービスとしての売りや差別化に繋がる価値
が生まれにくくなっていきます。
いよいよ負のループです。
どっかで断ち切らないとマズイです。
では、どうすれば良いか?
ここからが本題です。
問題が悪化するマズイ理由は色々ですが、実際そうならないようどうするか?
集客活動は継続していく
集客活動の継続は、
・たとえ稼働率100%であっても必要。
・また、慢性的な人手不足であっても必要。
ここを抑えておくのは大事です。
ただ、集客方法については、人員の過不足の状態や経営の収支状況に応じて、
負担の少ない方法に切り替える方法でも構いません。
重要なのは、
集客活動は継続している
という事です。
集客活動をしていくことで、
・知ってもらえる人の数を増やす
・新鮮な今の情報を届ける
・信頼関係を構築する
こうしたことを地道にやっていくことで、
サービスを使ってくれる利用者さんが増えていきます。
また、たとえ利用しなくても、利用検討したり、口コミや職員としての応募など助けてくれる人も出てくる可能性もあります。
潜在的稼働率に目を向ける
僕自身はデイサービスの運営をしていたとき、稼働率100%で終わりと考えないで、
『潜在的な稼働率』
つまり待機者の利用込みで予定の稼働率
を考えていました。
実際、待機予定者となるのは、
・新規利用者の利用希望
・既存利用者の増回希望
・短期やスポットでの利用追加
などの方が当てはまります。
もちろんケアプラン上の定期利用者や先予約のある方が優先的に利用してもらえるよう調整するのは間違いないですが、
こうした待機者のニーズにも応えていく事で、稼働率は高い数値で安定します。
僕はおよそ2ヶ月前からある程度予定は作り、利用者の利用追加や退所の調整を行なっていました。
あまりに待機者が多くなってくると、心苦しくもなってくるのですが、大半のケアマネージャーさんやワーカーさんはこうした事情も理解して下さると思いますので、しっかり説明したほうがいいです。待機の順番や空きが出た後の情報の共有も大事です。
待機者が出るようなサービスになってくると、もちろん調整力だけじゃなく、サービス内容の質も評価された上での状態にもなっていくので、
地域での良い評判も出てくると思います。
どうせなら、そこを目指しましょう。
忙しい事で得られるメリットを考える
忙しくなるほど利用者が増えてくると良いことは何か?
そんなんイヤだー
という声も聞こえてきそうですが、ちゃんとメリットはあるんですよ。
忙しい事業所になると得られるメリットは、
・職員が成長する。自信になる。(介護技術、ビジネススキル、人間的に・・)
・ケアの幅が広がる(人が増えることで活動の幅が広がる)
・事業が継続できる、拡大できる
・他事業への投資や職員の給与アップにつながる
・リーダーであれば、実績にもなる。自信になる。
と僕自身実際に経験したメリットでもありますが、
こんな感じの恩恵が得られます。
ヒマな事業所であっても、
忙しい事業所であっても、
正社員の常勤職員であれば、基本週40時間です。
しかし、
同じ時間過ごしているのに、得られるものが全然違います。
どうせ同じ時間を働く時間として使うなら、
・自分が成長できる
・給与アップにつながる
・メリットが多い
そんな時間にした方が良くないですか?
忙しい職場で揉まれた人は、ぶっちゃけ他の職場にいってもやれる力はつきます。
忙しいのって確かに大変なんですが、そんな悪いもんじゃないですよ。
もし負のループに入ってしまっているなら
経営的に赤字の、
「負のループに入ってしまっていてどうしよう!」
という場合についても、解説しておきます。
僕個人としては、
職員に「俺たちわたし達はやるぞー!」と働きかけて、気持ちで鼓舞してなんとかなるのは赤字ライン前後でこらえている状態までかなー
と、何となく思ってます。
慢性的に負のループに入っているときは、気持ちだけでは難しいからです。
慢性的な状態になると、
職員の頑張る方向性が別の方向にいってしまったり、介護の仕事に対して冷めた感じにもなったりしていくからです。
そこまでくると、面談をするとか、言葉でやる気にさせるより、
行動が自然と出来る仕組みを作る方を優先した方がいいと思います。
ポイントは、
「人の気持ちを変えるのではなく、人の行動を変える」
ことです。
もっと、ぶっちゃけて言うならば、
やらざるを得ない仕組み
を作るのをオススメします。
すなわち、
・環境整備
・ルール
にアプローチして職員さんに自然と動けるようになってもらいます。
出来たらこの仕組みのゴールに、職員にとってもメリットがある報酬を用意すると凄く良いです。
この辺りの解決法についての詳細記事は、下記2つから。
まとめ
・採算分岐ラインの稼働率を超えたくらいで、集客活動を止めてはいけない
・赤字低迷や職員のモチベ低下の負のループまではあっという間
・待機者が出るサービスを目標にしよう
・ヒマな仕事をするのは時間がもったいない
介護なのに経営が危なくなるってきくと、
「介護って人手不足って言われるくらいだから、需要があるんじゃないの?」
と思われたりするんじゃないでしょうか。
需要があるのは間違いないんですが、使われるサービスや事業所って地域の評判などで集中してしまうことが多かったりします。
そのため、あまり知られていない介護サービスや介護事業所は、使われなかったりします。
なぜなら高齢や障害のある方の為に利用されるものなので、
一定の信頼関係が出来ないと難しいからです。
下手な対応をする事業所に依頼したら、仲介するケアマネージャーなどのワーカーの信用にも関わってきます。
もちろん色々と問題のある事業所は淘汰されるべきだと思います。
が、
せっかく良い職員が集まってて良いケアを実施していても、集客活動に対する意識が低いがために廃止せざるをなくなる事業所も全国にはいくつもあります。
非常にもったいないです。
今回の記事は、そんな事業所がなんとか息を吹き返すヒントになればいいなと願って書きました。
参考にしていただけたら幸いです。
読んでいただきありがとうございました。
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