小僧寿し、債務超過は本当に回避できているのか?上場廃止の可能性は?

監査意見不表明を受けている小僧寿しが2020年3月18日によくわからない開示を行っています。「第6回新株予約権の発行により調達した資金の使途変更に関するお知らせ」と題する開示内容で、既に締めたはずの昨年の決算内容に関する話です。なんでも2019年9月に第三者割当であのEVOに発行した新株予約権で調達した資金は、「実は使途が発表していた内容と違ってましたんで訂正しゃーす!」というわけです。

 

本題に入る前にこれまでのいきさつと前提を整理してみましょう。

まずもって小僧寿しは今月末までに2019年12月期の有価証券報告書を提出しなくてはいけないわけですが、前期が債務超過に転落していますので、今回も債務超過だと2期連続債務超過は東証の基準に抵触するため上場廃止になってしまいます。一応2月19日に発表した決算短信ではギリギリ900万円ほどのプラスになっていたので、この数字が本当ならセーフ!という話のはずでした。ところが3月5日に開示した内容では、監査法人アリアが、「この決算書は正しいと言えない」と、いわゆる監査意見不表明を行いました。提出予定の有報には監査意見は絶対必須ですので小僧寿しはなんとかしてアリアから適正意見を頂戴しないと上場廃止になります。

 

上場廃止の可能性パターンを整理すると

1,有報未提出 

小僧寿しの本決算は12月ですから年間の有報の提出期限は3ヶ月以内です。3月末までに有価証券報告書を提出しない、出せないというパターンです。財務局に申請して延長の承認が得られれば引き伸ばしは可能です。その場合最大で2ヶ月と8日間の猶予があります。少なくとも来週末くらいまでに「2019 年12 月期有価証券報告書の提出期限延長に係る承認のお知らせ」という開示が出せれば4月末までの延命です。そこでダメなら「~の提出期限延長(再延長)に係る承認のお知らせ」が開示され、さらにそこでもダメなら「~の提出遅延及び当社株式の監理銘柄(確認中)指定の見込みに関するお知らせ」が5月初めに開示され、それでもダメなら8営業日目の5月18日あたりに「~有価証券報告書提出未了及び上場廃止の見込みに関するお知らせ」とかの開示がなされることになります。アリアが頑として監査意見表明を行わない場合はこのパターンです。

 

2,監査意見不表明

以前の記事「小僧寿し 監査法人アリアが監査意見不表明」でも言及していますが、会社法上の決算書類で今回の小僧寿しの数字をアリアは認めていません。これは2月19日に発表した決算短信も否定されているという意味です。短信は速報という意味ですから監査意見は必要ないです。とはいえ会計監査ですからアリアは内容を当然見ているので意見の対立があったことは「2019年12月期決算発表予定日の変更に関するお知らせ」で2月14日の発表を2月19日に遅らせたことでも既に明らかでした。アリアをクビにして大至急代わりの監査法人(公認会計士事務所)を探してお願いする事も可能っちゃ可能ですが、時間的には現実性は無いですし、超特急料金はとってもお金かかりますよ?900万じゃ足りないかも。そもそもアリア以上に駆け込み寺的な存在は本当にあるのか疑問です。結果、「1」の有報未提出と同じことになるパターンです。

 

3,債務超過

2期連続債務超過が確定した場合です。アリアに適正意見を貰って提出期限までに提出できても債務超過が解消できてなかった、という内容なら上場会社としては出してもアウトなので意味がないです。今回の可能性としては「短信ではセーフだったけど有報ではアウト」というパターンです。2016年にイーター電機(6891、JQS)やMAGねっと(8073、JQS)が決算を締めたあとに監査法人から物言いがついて会社資産の再評価をしたところ、結局2期連続債務超過が判明してアウトという結果になったという事例がありました。このパターンの怖いところは締めてしまった決算は時間を遡っての対処が出来ないということです。今から対策をしようにもタイムマシンで3ヶ月以上昔に戻って増資することは不可能ですから。もし出来たように見えるならそれは虚偽記載となりますが、それもアウトです。

 

話を本題に戻します。

小僧寿しはいま、アリアになんとか監査適正意見をもらおうとアリアの指摘に従って短信で発表しちゃった数字を直しているところなのでしょう。それが今回開示された理由なのだろうと推測できます。

 

で、その中身です

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つまり5億7200万円調達したけど運転資金が足りなくなっちゃったので、③複合型宅配事業店舗の新規出店費用、④店舗機能増設、インフラ整備のための設備投資資金、の一部に流用したと。流用部分の金額は1億9500万円でその分が追加で必要になりました、と。今までに使った金額は3億9700万円です、と。

んん?よくわからないです。

まだ使っていないはずの1億7500万円はどこにあるのですか?

それから③と④は貸借対照表でいうとどこに入ることになるのでしょう?

当然これは問題の2019年12月期の数字の話ですからそれによって決算の内容って変わって来ませんか?あくまで憶測ですがアリアがケチつけてるのはこの辺りじゃないでしょうか。

もしそうだと仮定すると「3」のパターン?

 

ところで上場廃止回避といえば、東証が2020年3月18日にコロナウイルスの影響を考慮して上場廃止基準を緩和すると発表しています。

 

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 東証HP https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000004mc80-att/nlsgeu000004mcaw.pdf より

 なんだかネット上ではこの話、小僧寿しにとって神風とか上場廃止は回避決定といった希望的観測になってますけど、よく読んで見ましょう。

「債務超過が2期連続でアウト→3期でアウト」や「監査意見不表明でもOK!」変更はあくまでコロナウイルスの影響に限った話です。2019年12月末で締めた決算のどこにコロナの影響が出てるんですか?コロナウイルスによって中国武漢で初めての死者が出たのは2020年1月11日ですよ?日本国内で一人目の感染者が確認されたのは1月21日ですよ?コロナウイルスのせいで流行する前の去年から債務超過で云々って、いくらなんでも無理筋でしょう?それに2020年3月期からの適用を想定って話ですから、小僧寿しの決算に適用することは想定すらされていないようです。残念~。

 

*この記事に関連する以前の投稿もご参照ください