知っていれば得する交渉学という学問『交渉学が君たちの人生を変える』(著・印南一路)

2019年9月20日金曜日

交渉学

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交渉学が君たちの人生を変える


交渉ごとがうまくなりたいと思いませんか?
そうじゃない人も、実は人生において、交渉する場面って少なくありませんよね。


駆け引きに勝つのが交渉⁉︎


ビジネスの世界だけではなく、車や住宅の購入、お小遣いのアップなど身近な生活の中でも交渉が必要なときはあります。

私は、交渉って何か人を出し抜いて得をするとか、駆け引きなどの言葉が頭に浮かび、相手の心理を巧みに読むようなイメージがありました。実際に、そのように駆け引きに勝つための交渉術もあるようです。

しかし、そのような交渉術で打ち負かすと、人間関係が壊れるような気がするし、逆に利益を出すために相手の御用聞きみたいな関係になるのは違うよなと感じて、もっとちゃんと交渉というものを学びたいなと思っていました。

そこで見つけたのが、『交渉学が君たちの人生を変える』(著・印南一路)という本です。



まず、交渉学という学問があるのかというのが驚き。自分なりに交渉って利益の奪い合いかなとか、営業成績が良い人の話から「相手にも支払う対価以上のものを示すWin-Winの関係を作ることが重要だ」と聞いて、そうか利益を創り出すことかなどと、漠然と捉えていました。

この本では、その漠然と捉えていたものが、体系的にまとめられています。分かりやすいイラストも入っていて、読者が理解しやすくなっています。

そして、実はこの本、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で超人気の講義を書籍化したものだそうです。

タイトルにあるように、交渉学というものを理論で知っておいて損はないと思います。


『交渉学が君たちの人生を変える』


交渉学にはBATNA(バトゥナ)というものがあります。本書によれば、これは「今行っている交渉がうまくいかなかった場合に備えて意識的に作った選択肢」のことだそうです。

例えば、就職活動で内定をもらいやすい会社からあらかじめ内定をもらっておき、その上で本命の会社を受けるようなこと。心理的余裕を持てるほか、面接官に既に別会社から内定をもらっていることもアピールできます。

また、住宅の購入で言えば、ふっかけてくる不動産に対して、別にあなたのところで買わなくてもいいんですよと余裕を持って対応できます。


■交渉で働く三つの力


このバトゥナを代表に、交渉では以下の3つの力が働いています。
  1. 相互依存関係
  2. 返報原則(互恵原則)
  3. コミュニケーション
まず、はじめの相互依存関係。これは自分が交渉相手に依存する分だけ不利な立場になるということ。先に紹介したバトゥナを用意することが重要というのもこうしたことからです。

二つ目の返報原則とは、「譲ったら譲られる」原則のこと。価格交渉で「いくらまでまけて」「いや、それは無理ですよ。ここまでなら」といった感じのこと。

三つ目は、最も交渉戦術らしく聞こえる、「相手がこう言ったらこう切り返そう」「どういう情報を出そう」といったもの。

■交渉には三つタイプ


交渉問題は様々な形に分類できます。
  1. 分配型交渉
  2. 利益交換型交渉
  3. 創造的問題解決
まず一つ目の分配型交渉は、一つの固定されたパイを分割する交渉のこと。私は交渉とは、このことを言うのだろうと思っていました。

二つ目の利益交換型交渉。一つのパイを分け合うのではなく、もう一つのパイを出して分け合うタイプのことです。取引価格を多少犠牲にして、アフターフォローを手厚くしてもらうとか。

三つ目は、創造的問題解決。パイ自体を大きくして自分と相手との利益を一気に実現する方法です。交渉の当事者が信頼関係を築いて十分な情報交換ができ、双方の利益が特定されていれば、お互いの利益を交換するだけが解決方法とは限りません。思ってもみなかった新しい解決策を作り出せば、問題そのものがなくなってしまうこともあり得ます。

例えば、本書ではクーラーが効かない図書館で、2人の学生が言い争っている例を挙げています。1人は窓をあけたい。もう一方は窓を開けるとノートが風でめくれるから嫌がっている。そこで、話を聞いていた図書館員が別の部屋の窓を開けて解決したという話です。


■バトゥナの用意が重要


ただ、実際の交渉問題は、先に挙げたように、きれいに三つにタイプが分かれていません。情報を素直に教えてくれる人もそういませんし、お互いの考え方も一致することは少ないです。ですので、はじめに述べた通り、交渉がうまく行かなかった場合に備えて代替手段のバトゥナを用意することが重要になるのです。

さらに、バトゥナを用意するためにも、先に紹介した就職活動の例のように、本命の相手と交渉する前にダミーともいえる交渉を別な業者と行っていくことを勧めています。例えば、車の購入などでは、ダミーとの間でどこまで値引きができるかなども分かります。一般的に「相見積もりを取りなさい」というのもこのためです。

まとめ


いかがでしたか?
本書では、上記のように交渉について体系的にまとめてあります。

このほかにも、実際の交渉戦術に関することも触れています。
中には〝きわどい交渉戦術〟というのもあり、相手がその戦術を用いてきたときに十分に対抗できるようにするために知っておいた方がいいものもあります。

本書を読めば、学問として学べると共に、実際の交渉の場でどう活用していくかも想像できると思います。ぜひ、読んでみて下さい。

『交渉学が君たちの人生を変える』(著・印南一路)



■印南一路(いんなみ・いちろ)氏のプロフィール


慶應義塾大学総合政策学部教授。専門分野は意思決定論・交渉論・組織論、医療福祉政策。主な著作に、『新ハーバード流交渉術 論理と感情をどう生かすか』『ビジネス交渉と意思決定』など多数。主な前職は、株式会社富士銀行、旧厚生省、シカゴ大学経営大学院助教授、スタンフォード大学客員研究員、株式会社キングジム社外取締役。

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時代小説好きの父と、ミステリー小説好きの母の下、幼い頃から本に囲まれて育ちました。その影響もあり、私も赤川次郎さんの「三毛猫ホームズ」シリーズから推理小説が好きに。高校生の時に、毎日のようにブックオフに寄って、中古本を買いあさり夢中で読んでました。最近では、石持浅海さん、辻村深月さんも読んでいます。職業柄、勉強のため、毛色の異なる本も手にします。ブクログもやっています→https://booklog.jp/users/47744715b09cce08

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