そんな険悪な雰囲気の中、父が
車を買うのに家を担保にしなきゃ金が借りられないから、早急に家の所有者の名義を自分にしてくれ。
と言い出しました。
祖母の名前になっている家の所有者を変えるには、祖母と叔母と父と、きみえさんの署名と捺印が必要です。
わたしと叔母は絶対にダメだと言いました。
しかし祖母は、ヒロは仕事に行くんだから車がないと。
可哀想だから、みんな、名前を書いて判子を押してあげなさい。
と言うのです。
本当に盲目的に息子を信じ、甘やかす祖母に心底絶望しました。
仕事に行くのに車がいると言っても、家にお金を入れる訳でもないのに。
そもそも車を買うのにローンが組めない事自体がおかしい。
ブラックリストに載る自分が悪いでしょ。
自業自得なんだから、車を変えようなどと思うべきではないのでは?
家が父の名義になれば、父が外国人女性と再婚したらわたしたちは追い出されるに決まってる。
そう言っても祖母はヒロが可哀想だの一点張り。
そしてきみえさんは、一連のウチのゴタゴタが楽しくてしょうがない様子でした。
休みの度にうちに来ては、父とわたしたちの仲介役をしてやる、ヒロに話をしてみる、などと言って父と話をしていましたが、何も変わるわけもなく。
ただ、きみえさんは、ウチの家が欲しい様でした。
昔話か何かで読んだコウモリの様に、わたしたちの前では父の悪口を言い、父にはわたしたちの悪口を言い...
行動をみていれば分かります。
この人は、祖母とは違う理由で所有者を父にしたがっている。
結局、父に恫喝され、祖母ときみえさんにヒロを信じてあげようと毎日言われ、叔母は署名と捺印をしました。
必ず何か良くないことが起こる。
それがいつかは分からないけど
それまでは忘れたふりで、いつも通り暮らそう。
そうしてわたしは、再びいろいろなものに蓋をしました。